その他
動画投稿サイト トップ集団を形成
2008/05/05 14:53
週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載
動画投稿サイトビジネスが曲がり角を迎えている。国内の主要な動画投稿サイトは本格的なサービス開始から2年目に入った。世界最大の動画投稿サイトのYouTubeに続けとばかりに、一時は雨後の竹の子のように増えたが、ここへきてトップ集団が形成されつつある。独自色を強めたサービスを次々と打ち出し、厳しいユーザー獲得競争に勝ち残るためのラストスパートをかける。(安藤章司●取材/文)
勝ち残りにラストスパート ビジネス確立を決する局面に
■コンテンツ軸に提携加速
通信サービス会社のアッカ・ネットワークスは、自身で運営する動画投稿サイトzoome(ズーミー)を今年6月、分社化する。独立後はコンテンツホルダーなど動画ビジネスと相乗効果を高めやすい事業パートナーからの出資を積極的に受け入れ、ライバルに差をつける。
動画投稿サイトの収益の柱は広告やアフィリエイトだが、自ら主体的にコンテンツ制作に乗り出す動きが活発化している。zoomeは、テレビ番組制作会社のアイ・ヴィ・エステレビ制作との共同企画としてコスプレ動画企画を4月15日からスタート。ユーザーとともにコンテンツの価値を高めるCGM(コンシューマ生成メディア)的な手法で、「独自性の高いコンテンツを生み出す」(アッカ・ネットワークスの阿部聡也・映像コミュニケーション事業部メディアグループエキスパート)動きに拍車をかける。
コンテンツビジネスの経験が浅いzoomeにとって、同分野に精通した事業パートナーとのアライアンスは魅力的。分社化により資本提携も含めた迅速なアライアンス戦略を展開することで、ユーザー数の増加につなげる。
世界最大手のYouTubeも今年に入ってコンテンツホルダー大手の角川グループホールディングスとの連携を深める動きをみせる。角川グループはYouTubeを有益なWeb2.0型CGMと位置づけ、新たなクリエーターの創出や知財を育てていく場所だと位置づける。また、グローバルで1億人余りのユーザーを抱えるSNS型動画投稿サイトのMySpace(マイスペース)は、「ユーザーは世界を舞台に新たなビジネスチャンスをつかむ」(大蘿淳司社長)場所とし、コンテンツビジネスの基盤としても機能させる。
大手インターネットプロバイダ、ニフティの@niftyビデオ共有は、自社のブログサービスとの融合を進める。MySpaceやzoomeがSNS的なアプローチなのに対して、「ブログと動画の組み合わせ」(ニフティの黒田由美・コンシューマー部プロデューサー)によるユーザー獲得を狙う。
■コミュニティ特性がカギ
一方、動画投稿サイトのニコニコ動画は、匿名性の高いコミュニティを形成しているのが特徴。zoomeやMySpaceなどユーザープロフィールを重視するライバル他社と比べて特異さが際立つ。ニコニコ動画は同じく匿名性の高い巨大掲示板、2ちゃんねるの管理人ひろゆき氏が運営。2ちゃんねる的なコミュニティに居心地のよさを感じるのか、結果的にアニメやゲームなど日本のサブカルチャーが集積する特殊な動画投稿サイトに成長した。YouTubeが総合動画投稿サイトだとすれば、ニコニコ動画は特化型だ。
それでも会員数は今年3月時点で560万人に達し、ニコニコ動画を運営するニワンゴの親会社ドワンゴの携帯電話コンテンツユーザーなどを含めれば1000万人規模になる。国内のアニメ・ゲームの支持層の厚さが追い風になった。
ターゲットが絞られたユーザー層を多数抱えることを武器に、ニコニコ動画ではコンテンツビジネスへの関与を強める。今年4月2日からアニメ専門チャンネル「ニコニコアニメチャンネル」を開設。初めて公開する美少女アニメ2本を揃えた。3本目は今年夏に向けて制作を進めている。ニコニコ動画事業の売り上げは約4割が広告関連、約6割が有料会員の会費で構成されるが、将来的にはコンテンツ関連をプラスして「3つのバランスのとれた収益モデルをイメージしている」(ニワンゴの杉本誠司社長)。従来からの広告・アフィリエイトや有料会員からの利用料収入に加え、コンテンツビジネスを収益の主要な柱の1つと捉える。
■広告依存からの脱却進む
ビジネス的に見ると、動画投稿サイトの運営は厳しいものがある。ニコニコ動画は昨年末までにソフト開発やサーバー、ネットワーク機器を揃えるのに延べ20億円を投資している。ユーザー数の急増に対応したものだが、まだ採算ベースに乗っていないのが実情だ。他の動画投稿サイトも似たような状況にある。ネット媒体への広告出稿量が増加傾向にあるとはいえ、運営コストがかかるだけに、広告やアフィリエイトだけに依存するモデルでは厳しい。動画ならではのコンテンツビジネスの立ち上げが欠かせない。
例えば、電子の歌姫で有名なDTM(デスクトップミュージック)ソフト「初音ミク」は、美しい歌声とツインテールのかわいいアニメ調の絵柄がニコニコ動画のユーザーにマッチ。昨年秋頃から今年にかけてミクの歌声やユーザーが創作した動画で大いに盛り上がった。ソフトの販売本数はBCNランキングでトップシェアを獲り、関連グッズの売り上げも好調だ。ライバルのzoomeも昨年末にミクの開発元と提携した公式イベントを開催。「イベント以来、ユーザー数が急増している」(阿部エキスパート)と、ミクの認知度向上と自身のユーザー数の増加につなげた。
ネットビジネスは短期決戦が常であり、すでにラストスパートの局面に入ろうとしている。今後1-2年で勢力図が固まるという見方も根強い。早期にトップ集団から抜け出し、独走態勢に入ることが求められる。ユーザーの創造意欲をかきたてるコミュニティの形成をどう促進し、プロが制作するゲームやドラマ、アニメなどのコンテンツとうまく共生する環境をつくりだせるかが勝敗を決める。
動画投稿サイトビジネスが曲がり角を迎えている。国内の主要な動画投稿サイトは本格的なサービス開始から2年目に入った。世界最大の動画投稿サイトのYouTubeに続けとばかりに、一時は雨後の竹の子のように増えたが、ここへきてトップ集団が形成されつつある。独自色を強めたサービスを次々と打ち出し、厳しいユーザー獲得競争に勝ち残るためのラストスパートをかける。(安藤章司●取材/文)
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