マイクロソフト(樋口泰行社長)は、4月15-16日にプライベートイベント「the Microsoft Conference 2008」を開催した。法人向けの主力3製品「Windows Server 2008」「同 SQL Server 2008」「同 Visual Studio 2008」を正式公開したほか、パートナーが対応製品・ソリューションを続々発表した。なかでも、仮想化技術やセキュリティ機能を強化した「Windows Server 2008」に対するパートナー、ユーザーの関心は前版以上に高い。
マイクロソフト 新OSなど主力3製品披露
「Server 2008」の新機能注目集める
■イベントには米本社幹部出席 62社のパートナーが出展
イベントでは、米本社のジェフ・レイクス・ビジネス担当プレジデントと日本法人の樋口泰行社長が登壇した基調講演のほか、各製品のメリットを紹介する56個のセッションを用意。また、「Windows Server 2008」に対応したIHVやISV、SIerの各製品・ソリューションを展示したスペースも設置した。マイクロソフトが主力3製品を正式発表する場として、ユーザー企業やパートナーに広く知れ渡っていただけに、会場内は初日から人でごった返し、セッションに参加する多くの人たちが長蛇の列を作った。
イベントの展示スペースでは、主力3製品に対応する製品・サービスを用意したパートナー62社が出展。パートナー各社の対応が前版以上に早いことを印象づけ、マイクロソフトの新商品に対応する期待と意気込みを示していた。
主力製品のなかでも、注目を集めたのは約5年ぶりにバージョンアップした新サーバーOSの「Windows Server 2008」だ。開発ツール「Microsoft Visual Studio 2008」は、すでに2008年2月にリリース済みで、データベース(DB)の「同 SQL Server 2008」は今夏に発売予定。その一方で「Windows Server 2008」はイベント開催初日に販売開始というスケジュールから注目が高かったが、理由はそれだけではない。新サーバーに搭載した新機能が時代のトレンドを意識したユーザー企業やパートナーの興味を引く内容だったからだろう。樋口泰行社長も、「新OSの機能に対する関心と期待は大きい」と出来栄えに自信を示している。
■5年ぶりの新サーバーOS 標準搭載した仮想化技術
前版「Windows Server 2003」のリリースから約5年、4月15日に発売した「Windows Server 2008」は、マイクロソフトが94年に発売した「Windows NT 3.1」以降で6世代目にあたるサーバーOSとなる。コードネーム「Longhorn」の名称で開発を進め、新搭載する機能や技術は数年前から少しずつ明らかになっていたが、全貌をユーザー企業に公開したのは今回の「the Microsoft Conference 2008」が最初だった。そういった点からも今回のイベントは注目度が高かった。
「Windows Server 2008」は数十種類の新機能搭載・強化を図り、多くの優位性がすでに報じられているが、特筆すべきは、(1)仮想化技術「Hyper─V テクノロジー」(2)ターミナルサービス(3)ネットワークアクセス保護(NAP)(4)PC向けOS「Windows Vista」との親和性の4点にあるだろう。
「Hyper─V テクノロジー」は、OSに組み込まれたマイクロソフト独自の仮想化技術で、Windowsに初めて標準搭載された。1台のサーバー上に複数の仮想OS環境を同時に実行可能なテクノロジーで、複数の物理的に存在するサーバーを1台に統合して運用の効率を上げたり、複数のOS環境が必要なテスト環境を容易に構築できたりする。情報システムのコスト削減やサーバーの処理能力最適化、柔軟性向上に貢献する旬の技術だ。
話題になっているとはいえ、仮想化技術はまだ全システムの5%ほどにしか採用されていないという。主な理由はコスト。今回、マイクロソフトはこの技術を標準で搭載し、コスト的壁を取り払い、一気に仮想環境を広めようとしているわけだ。
ターミナルサービスも仮想化技術の一種で、サーバーで実行するアプリケーションをあたかもPCのHDD内にあるアプリケーションのように操作できる技術。「Windows Server 2008」ではその操作性を向上させている。「RemoteApp」機能で、アプリケーションの操作画面を転送可能にし、サーバーのデスクトップ全体を表示しなくてもよく、従来よりもよりシームレスな作業環境を用意した。また、「TSゲートウェイ」を配置すれば、VPN(仮想私設網)を使用しなくても、インターネット経由でターミナルサービスを利用できるようにした。
■検疫機能も搭載 Vistaと連携で処理能力向上 一方、セキュリティ機能の「ネットワークアクセス保護(NAP)」では、ウイルス対策ソフトの有無など、一定のセキュリティ条件を満たさないPCを社内ネットワークから遮断しセキュリティを確保する。同機能は、「検疫ネットワークシステム」としてすでに企業の間で認知が広まっているが、構築するには高額な投資が必要で、普及が進んでいないのが現状だった。この点に関していえば、「Windows Server 2008」では仮想化技術同様に標準搭載した。
4つ目の特色は「Windows Vista」との親和性。もともと「Windows Vista」と「Windows Server 2008」は、ともに「Longhorn」プロジェクトで開発していたOSで、「Server 2008」は「Vista」と中核プログラムを共有、「Vista」をベースにしたサーバーOSとしての機能を追加している。なかでも処理能力の向上は際立っており、「Vista」と「Server 2008」を組み合わせた場合、サーバーとPC間のファイル転送速度が大幅に向上している。マイクロソフトの独自調査によれば、「XP」を使った場合に比べて転送時間を約6分の1に短縮可能とのこと。
このほか、数十種類の新機能追加と機能強化を図った「Windows Server 2008」。各パートナーの対応も前版以上に早く、パートナーの期待値は高い。ユーザー企業を刺激する機能・技術を用意した5年ぶりの新OSが市場を活性化する可能性は十分にある。