その他
北海道情報システム産業協会 IT版-JVの全国展開を模索
2008/04/21 21:10
週刊BCN 2008年04月21日vol.1232掲載
北海道内の中小ソフトウェア開発会社で組織する業界団体の北海道情報システム産業協会(HISA、中村真規会長)は、会員ベンダーで共同企業体(JV=ジョイントベンチャー)を組んで大型案件を受注するIT版-JVを推進している。会員ベンダーが受注した案件を、ノウハウを持ち寄り協力体制を敷いて開発し、収益を第三者機関の「管理委員会」が貢献度に応じて配分する方式だ。中村会長は、全国地域情報産業団体連合会(ANIA)の会長でもあり、6月開催の総会で“HISA方式”を紹介する予定。下請法などの影響で案件が減りつつある中小ソフト開発業界に光明をもたらすものとして期待される。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
6月にANIAで提案、普及へ
■第三者機関が利益を適正配分
HISAが事業化しているIT版-JVは、会員ベンダー(現在81社=2008年4月現在)が「元請け(プライム)」で道内外から獲得した大型案件プロジェクト内容を公表し、開発案件の要件に合致するノウハウを持つベンダーの参加を仰いでJVを組む方式だ。
プロジェクト終了後には、有識者などで構成する「アンパイヤの役割を果たす」(中村会長)とされる第三者機関「管理委員会」が、参加ベンダーの貢献度を判断して適正に利益を配分する。下請けに甘んじてきた中小ソフト開発会社はこれまで、大手SIerなどの元請けが全体売上高のどの程度を“取り分”としているかを知ることができなかった。しかし、この方式を採用すれば不透明さが解消され、中小ソフト開発会社でも適正な配分で利益を得ることができ、大型案件をこなすことで高度な技術も習得できる。
昨年2月に開始したこのIT版-JV方式では、すでに大型案件の受注に成功している。第1号案件は昨年9月、道央圏の森林関係団体から販売や経理などの業務管理システムを受託した。同案件では、会員企業でいずれも札幌市内にあるデジック、テクタス、コネクト、NSCの4社でJVを組んで分担して開発した。現在、第2号案件として運輸関連企業の配置管理システムも受注したほか、数件の案件交渉が進行している。
最近では、世界展開する自動車業界を中心とした製造業向けの組み込みソフト開発の需要が増す一方、この需要に応える供給元が国内に不足しており、中国やインドなど「オフショア」に案件が“輸出”されるケースが増え続けている。反面、こうした需要を賄っていた中小ソフト会社の仕事は減少の一途。さらに、03年6月に改正された「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の適用が「下請けの選別や契約条件の厳格化」となって波及し、中小ソフト開発会社の仕事が減って窮地に立たされているのが実状だ。
HISAが05年10月に同協会を立ち上げたのも、IT版-JVを始めたのも、こうした背景があると中村会長は語る。「下請けベンダーとして生き残りをかける中小ソフト開発会社は、国内に数多く存在する。この業界を再起させるには、業界事情に応じた施策を講じるべき。確かに、多重下請構造下にある3次、4次の下請けは無くすべきだが、1次、2次の下請けベンダーの必要性は高い」。中村会長は現在、ソフト開発者不足に悩む国内の大手製造業を巡回し、組み込みソフトのJV受注を働きかけている。その反応は「非常によい」そうで、さらなる大型案件の受注が期待できるようだ。
■全国標準の道を目指せ
中村会長は、IT版-JV方式を6月25日に開催される全国21団体約2000社が加盟するANIA総会で紹介する予定。「北海道で成功しつつあるので、この仕組みを全国標準にすべく挑戦したい」と、ANIAなどを通じて全国への浸透を狙う。
北海道には、ソフト開発会社や販売系SIerのほか、機器販売を主事業とするディーラー/リセラーなど道内主要IT団体が統合して北海道IT推進協会が設立されている。同協会は現在、北海道情報産業クラスター・フォーラムの事務局として活動しているが、中村会長によれば「統合したことで、中小ソフト開発会社の存在感が薄れた」と話す。また、北海道経済産業局は、道内に元請けベンダーを増やそうと、ファイナンス面を含め業務提携やM&A(企業の合併・買収)などを事業化し、中小ソフト開発会社の統合を推進しているが、この施策は中小ソフト開発会社の望むところでなく、官の思惑通りには進んでいない。
札幌市も市内ベンダーが保有する技術スキルを公開する「さっぽろ企業情報提供センター」を1年ほど前に開設し、首都圏などの道外企業から受注機会を増やす取り組みを開始した。しかし、「案件成立はまだ数件」(市内ベンダーの担当者)で、運用面での課題を残す。HISAのIT版-JV方式は、「果たして管理委員会が公正に収益を分配できるのか」という疑問の声も道内から聞かれる。この部分の透明性をより高めて運用面を確立できれば、全国への浸透も夢ではなさそうだ。
北海道内の中小ソフトウェア開発会社で組織する業界団体の北海道情報システム産業協会(HISA、中村真規会長)は、会員ベンダーで共同企業体(JV=ジョイントベンチャー)を組んで大型案件を受注するIT版-JVを推進している。会員ベンダーが受注した案件を、ノウハウを持ち寄り協力体制を敷いて開発し、収益を第三者機関の「管理委員会」が貢献度に応じて配分する方式だ。中村会長は、全国地域情報産業団体連合会(ANIA)の会長でもあり、6月開催の総会で“HISA方式”を紹介する予定。下請法などの影響で案件が減りつつある中小ソフト開発業界に光明をもたらすものとして期待される。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
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