その他
富士通、異例のトップ人事断行 上席常務が社長に就任
2008/04/07 21:10
週刊BCN 2008年04月07日vol.1230掲載
富士通がトップ人事を発表した。現在、経営執行役副社長である野副州亘氏が社長に就任する。同氏は発表当時、経営執行役上席常務だっただけに異例のトップ人事だ。業績不振を打破できなかったということで、現社長の黒川博昭氏が自ら退任を申し出たとのことだが、果たして富士通は、どういう方向に向かっていくのだろうか。(佐相彰彦●取材/文)
新体制の方向性は?
■“ワンマンコントロール”に弊害
3月27日、富士通は都内本社で緊急会見を開催。同日に開いた取締役会でトップ人事を内定したためだ。社長には、発表当時に経営執行役上席常務だった野副氏が就任する予定。同氏は4月1日付で、経営執行役副社長に就任している。常務をトップに抜擢するという異例の人事。会長には、代表取締役副社長の間塚道義氏が就任する。これも、一般的なラインを覆した格好といえる。なぜ、このような役員人事を決断したのか。
黒川氏は、「(すべてを私が決断する)“ワンマンコントロール”に弊害が生じた」と打ち明ける。“顧客起点の経営”をモットーに現場を回り、最善策を追求してきた。そのため、社員に意見を求めるケースは多くあったが、斬新で適切な意見でなければ聞く耳を持たない。一方、社員は黒川氏の決断に絶大な信頼を寄せていたが、黒川氏に必ず報告しなければならない仕組みで、社員が良い判断として報告しても黒川氏が駄目な決断だと指摘すれば評価が下がる。これは、意見を求められて述べたケースであっても通らない。「どうせ黒川さんの腹のなかは決まっている」という気持ちが社員に芽生える。結果的に、「私だけの意見が会社の決断になってしまった」(黒川氏)というわけだ。
黒川氏の退任とともに、現会長の秋草直之氏も代表権を持つポストから外れる。取締役相談役に就任する予定だ。「経営に問題が起こっていることを伝えたところ、(秋草氏も)同じことを考えていた」と黒川氏はいう。そこで、昨年12月頃から方向性を話し合い、野副氏をトップに据える人事を決断した。秋草氏を取締役として残したのは、あくまでも一過性で「業界団体の活動への参加など、外部とのパイプを多く持っている。それを社内に継承するため、1年間という限定で取締役を務めてもらう」(黒川氏)ことのようだ。“ワンマンコントロール”の払拭で、「新体制では自由に経営を行ってもらいたい」と、黒川氏は強調する。
■“晴天の霹靂”を経て成長へ
社長と会長ともに経営に歪みがあるとの判断で今回の人事が内定したわけだが、果たして新社長として就任する予定の野副氏は、どのような方向性をもっているのか。
株主総会後の取締役会を経て正式決定になるため、現段階では新体制での具体的な方向性は定まっていないが、「(黒川氏の)顧客起点の経営は変わらない。これに、強い会社を加えたい」(野副氏)意向。富士通が以前から提唱している「グローバルカンパニーとして成長する」ことが当面の目標だ。
ただ、これまでにない異例の人事であるため、野副氏の人物像が気になるところだ。黒川氏によれば、「地に落ちたプロダクト事業の回復など課題を成長に変える能力を持っている」としている。新会長に就任する予定の間塚氏も、「(上からの)業務命令を具体化する力をもっており、(下には)親分肌で人望が厚い」と評価している。野副氏自身も、「社長の指示を実行に移すことに専念してきた」と自己分析している。また、「今までほめられたことがなかったため、社長人事の話を聞き『なぜ私が?』というのが第一印象。まさに、“晴天の霹靂”だった」と漏らす。
自身が抜擢されたことを“晴天の霹靂”と表現する野副氏が社長就任後、どのような指揮をとるかに注目が集まる。上席常務という立場で黒子に徹していただけに、どのようなリーダーシップを発揮できるか、そこに富士通の変貌がかかっている。
富士通がトップ人事を発表した。現在、経営執行役副社長である野副州亘氏が社長に就任する。同氏は発表当時、経営執行役上席常務だっただけに異例のトップ人事だ。業績不振を打破できなかったということで、現社長の黒川博昭氏が自ら退任を申し出たとのことだが、果たして富士通は、どういう方向に向かっていくのだろうか。(佐相彰彦●取材/文)
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