IBMが力を注いでいる分野の一つにUC(ユニファイド・コミュニケーション)がある。同社では“UCC(ユニファイド・コミュニケーション・アンド・コラボレーション)”と表現。「さまざまなコンタクトとインタラクションの統合」といわれるUCに加え、「新しい価値の創造」や「利益の増大」が前提のサービス提供との意味合いが込められているようだ。

他社のUCを超えた新しい概念としてUCCを掲げているわけだが、どのような戦略で拡大しようとしているのか。その答えは、このほど開催された「Lotuspher 2008」で明らかになった。
基調講演に登壇したユニファイド・コミュニケーション関連のソフトウェア責任者であるブルース・モース・バイスプレジデントは、「UCCビジネスでは、さまざまなベンダーとパートナーシップを深める」とアピール。パートナーとしてエリクソンやシスコシステムズ、ノーテルネットワークスをあげ、さらには「NECとの提携も実現した」としている。
NECとの提携内容は、IBMのリアルタイム・コミュニケーション・コラボレーション製品「ロータス・セームタイム8.0」とNECのIPテレフォニーサーバー「ユニバージュSV7000」などを連携させるため、「ユニバージュ・ゲイトウェイモジュール・フォー・アイビーエム・ロータス・セームタイム」というソフトウェアを共同開発するというものだ。このソフトを用いてユニファイド・コミュニケーション関連の製品・サービスを提供していくことになる。ユーザー企業にとっては、「ロータス・ノーツ」のメール機能やウェブ会議画面上の電話番号からワンクリックによる電話発信、通話状態を反映したプレゼンス(所在・状況)を共有できるほか、必要なコミュニケーション機能すべてをロータス・ノーツから一元管理が可能となる。

アライアンス面に加え、製品面での新機能追加も計画。2008年度下半期をめどに、ロータス・ノーツと電話との連携を強化した「セームタイム・アドバンスド」を出荷する予定だ。ほかにも、「将来的には画面上で、あたかも会議を行っているようなバーチャル空間」といった環境も作っていくという。これは、ウェブ会議の出席者がバーチャル空間で1キャラクターとなり、会議室での話し合いやプレゼンテーションが行える機能だ。
しかし、ビジネスコミュニケーションが可能なシステムやサービスはユーザーが限定されるとの見方がある。実際、「SMB(中堅・中小企業)に対する提供は現段階で難しい」と多くのベンダーが打ち明けている。ところが、「UCC事業の売上高は、約40%がSMBへの提供。SMBはコラボレーションを求めている」と、統合コミュニケーションサービスを担当するローレンス・グレイハード・バイスプレジデントは否定する。(佐相彰彦●取材/文)