保守サポートなどサービス事業を柱のひとつとするSIerやNIerに、ユーザー企業のコンピュータとネットワーク両システムを総合的に運用する動きが出始めている。システム運用の一本化でサービス事業のユーザー企業を増やそうという狙いだ。保守の強化でコンピュータとネットワーク両システムを構築する案件の獲得にもつなげる。コンピュータ側の“ITシステム”とネットワーク側の“IPシステム”の垣根がなくなりつつあるなか、ITとIPの融合ビジネスの先取りで事業拡大を図る。
IT/IP融合ニーズを先取り

SIerのユニアデックスは通信事業者のKDDIと提携し、サーバーや通信ネットワーク、WAN/LANなどの構築・保守をワンストップで提供する「企業向けICTソリューションサービス」を4月から本格的に開始した。
当面は、KDDIの回線を導入しているユーザー企業を対象にサービスを提案。2007年度(08年3月期)には、売り上げ40億円を見込む。萩田勝政・常務執行役員ソフトウェアサービス事業グループ長は、「売上目標は、あくまでICTソリューションサービスによるもの。このサービスが市場で主流になれば、システム案件の幅が広がり、さらに大きなビジネスになる」と見通す。
NIerのネットワンシステムズは、ネットワークをはじめ、サーバーやストレージ、IP電話などのシステム運用とセキュリティの管理などをIPネットワーク経由で行う総合システム運用サービス拠点「エキスパートオペレーションセンター(XOC)」を昨年夏に設置した。保守サービスを手がける子会社のネットワークサービスアンドテクノロジーズ(NSAT)と共同で運営している。現段階では、既存の「ネットワークオペレーションセンター(NOC)」と統合的なセキュリティサービスを提供する「セキュリティオペレーションセンター(SOC)」によるサービスにとどまっているが、「60件程度の引き合いがある」(NSATの馬場信之・経営企画室長)という。しかも、監視サービスを含めたセキュリティ関連ビジネスの06年度(07年3月期)売上高は前年度比25%増の見通しだ。今後は、07年度第1四半期までにVoIP関連の「Voiceオペレーションセンター(VOC)」と、サーバーシステム管理「サーバー/ストレージオペレーションセンター(SSOC)」を開設する予定だ。
VoIPの導入ニーズが高まりつつあるなか、IT業界とIP業界は、融合への道をたどっていくとの見方が強い。SIerやNIerにとっては、コンピュータとネットワークの両システムに対する構築や保守のノウハウを持たなければ生き残るのは難しいという指摘もある。保守を主力ビジネスとしているベンダーによる、サポートを切り口としたITとIPの融合は、時代の流れに適した策ともいえる。
ユニアデックスの萩田常務執行役員は、「ユーザー企業の導入システムはマルチベンダー化しており、複数ベンダーがシステムの保守や運用を行っている。このような状況は、システムのトラブルやバージョンアップなどユーザー企業にとって煩雑だ。そこで、保守・運用を一本化することがユーザー企業のメリットになると判断した」という。ユニアデックスにとっては、「企業内システムをまるごと受注する可能性も高い」としている。
ネットワンの丸山秋二・NWテクノロジー本部長補佐(兼)ナレッジセンター部長も「保守サービスの強化によって、主力事業であるネットワーク機器の拡販につながると確信している。さらに、サーバーシステムの管理まで領域を広げれば、NIerである当社がプライマリーベンダーとしてシステム案件を受注することにもつながる」とみる。保守でITとIPの融合ニーズを先取りすれば、マーケットの主導権を握ることができる可能性も秘めている。