その他
ITアーキテクト育成で新展開 国内初、PBL教材が完成
2007/03/12 14:53
週刊BCN 2007年03月12日vol.1178掲載
総務省がITコンサルティング会社、豆蔵に委託して開発を進めていた「ITアーキテクト」を育成するための「PBL(プロジェクト方式の学習)教材」のプロトタイプが、このほど完成した。国内初の試みである。豆蔵は1-2月に「ITアーキテクト」育成の取り組みで全国に先駆ける札幌市やマイクロソフトの協力を得て、市内のICT(情報通信技術)人材を対象に検証を目的とした講座を実施。ここに参加した「ITアーキテクト候補生」の感想などを参考に「完成版」を近くリリースする。今後、教育機関やITベンダー内で、この教材の利用を促していく。札幌市が来年度、この教材を利用した教育事業を開始するなど、国内の「ITアーキテクト」育成が段階的に全国へ波及しそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
札幌で講座実施を経て
■実態に即した能力が身につく
今回の事業は、総務省の「高度情報通信人材育成プログラムに関する調査・開発事業」のうち、「ITアーキテクト育成PBL教材の開発プロジェクト」を豆蔵が受託したもの。同社が公表したプロトタイプは、開発者の羽生田栄一・取締役会長によると、「RPG(ロール・プレイング・ゲーム)の感覚で取り組む教材」という。日用雑貨品を販売する文具店が発注者という設定で、事業拡大のために小売店など販売業向けに「受発注システム(ウェブシステム)」を構築する案件を受託したことを想定した構成になっている。
「ITアーキテクト」は、SEやプロジェクトマネジメント(PM)の役割を包含し、「要求と設計(実装も含む)のかい離をなくす役割を果たす人材」(羽生田・取締役会長)という。このためプロトタイプでは、新規に構築するシステムのアーキテクチャの要件定義や決定といったシステム面だけでなく、発注者やステークホルダー(利害関係者)との交渉、プロジェクトの形態など、コミュニケーションを各場面に織り込んだ「受託開発型プロジェクト」の内容になっているのが特徴だ。
プロトタイプを使った検証講座は1-2月の5日間、05年9月に「札幌ITアーキテクト育成プロジェクト」を実施して地元ITベンダー人材で教材開発を進めていた札幌市とマイクロソフト、さっぽろ産業振興財団の協力を得て、3年程度のシステム設計・開発経験のある市内の技術者を対象に実施した。参加した地元ITベンダー、北海道NSソリューションズの磯野晃・グループマネージャーは「書籍などを参考にした独学だと、流行を追いかけ過ぎ、実態に即した能力が身につかない。しかし、今回のPBL教材を使えば、無理なくIT人材を育成でき、若い人材の確保につながる」と、小規模のITベンダーにありがちなシステム開発経験不足を補いつつ、効率よく「ITアーキテクト」を育成できると期待している。
■中堅中小でも育成が可能
「ITアーキテクト」は、経済産業省はIT技術者に求められるスキル・役割に応じた職種体系として「ITスキル標準(ITSS)」「組込みスキル標準(ETSS)」に組み込まれた。しかし、SEやPMなどシステム開発・構築の経験値が必要になるため、特に中堅中小のITベンダーには浸透しづらい部分があった。札幌市内のITベンダーも、大半は大手ITベンダーの「下請け」で、随時要員を派遣をしているため、IT人材の育成にかける時間と費用が不足していた。こうした悪条件下でも、バーチャルに経験値を高められる今回の教材を利用すれば、中堅中小のITベンダーでも「ITアーキテクト」育成ができるようになりそうだ。
さっぽろ産業振興財団の赤羽幸雄・シニアアドバイザーは「ITアーキテクトがITベンダー内に1人でも育てば、その担当者を筆頭に社内メンター制度を拡大できる。若い人材の目標であり、象徴的な存在と成りうるITアーキテクトを輩出できなければ、すそ野は広がらない」と指摘する。札幌市は、マイクロソフトと取り組んだ「ITアーキテクト」の経験と同教材を利用して「パブリックな教育機関を設立したい」(一橋基・IT推進担当係長)と、具体的な新施策に関する言及は避けたが、「大学院大学」などを設置し、市内ITベンダーのIT技術者を養成するようだ。
最近では、発注先である企業のシステムに対する要求が複雑化し、その方針に正確に応える能力を身につけた人材を育成することがITベンダーに求められている。この教材の利用が中堅中小のITベンダーに拡大すれば、国内ITベンダーの「モノづくり」の底上げが図れそうである。
総務省がITコンサルティング会社、豆蔵に委託して開発を進めていた「ITアーキテクト」を育成するための「PBL(プロジェクト方式の学習)教材」のプロトタイプが、このほど完成した。国内初の試みである。豆蔵は1-2月に「ITアーキテクト」育成の取り組みで全国に先駆ける札幌市やマイクロソフトの協力を得て、市内のICT(情報通信技術)人材を対象に検証を目的とした講座を実施。ここに参加した「ITアーキテクト候補生」の感想などを参考に「完成版」を近くリリースする。今後、教育機関やITベンダー内で、この教材の利用を促していく。札幌市が来年度、この教材を利用した教育事業を開始するなど、国内の「ITアーキテクト」育成が段階的に全国へ波及しそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
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