社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は大塚祐司会長を団長とした「JCSSA米国エグゼクティブ視察団」を組織し、10月16日から21日の6日間の日程で米国主要IT企業および販売店を訪問し、米国IT産業の最新事情を視察した。(吉若 徹●取材/文)
MSとアップルのスケールを実感
「社員力」を生かす企業、大ヒット商品に勢いづく企業

今回の視察ツアーの参加者は、大塚商会の大塚裕司社長をはじめ、九十九電機・鈴木淳一社長、ジェイエムシー・香月誠一会長、シー・シー・ダブル・金成葉子社長、ソフトクリエイト・林宗治社長、東芝情報機器・山下文男社長、サンワサプライ・山田哲也社長、日本事務器・鈴木幹男顧問、エレコム・柴田幸生取締役、セイコーアイ・インフォテック・岸本隆三西日本営業部長、リコー・ヒューマン・クリエイツ・吉見正裕人財開発戦略室長、リコー・佐藤邦彦執行役員、キヤノンマーケティングジャパン・井上伸一理事、電波新聞社・水品唯週刊データコミュニケーション編集長、日本コンピュータシステム販売店協会・松波道廣専務理事、BCN・吉若徹の総勢16名。
視察団が訪問した企業は、ワシントン州のマイクロソフト(MS)、カリフォルニア州のアップルコンピュータ、トレンドマイクロ、ヒューレット・パッカード、グーグル、アドビシステムズの6社。また、カリフォルニア州サンノゼ近郊のコンピュータ販売店を視察した。
マイクロソフトの新キャンペーン-社員力を経営力に生かす-

最初に訪問したのは、ワシントン州レドモンドに本社を構えるマイクロソフト。シアトル空港到着後、税関検査を終えたその足で、小雨が降るなか、同社を訪問した。
訪れると、まずは最高業務執行役員のケビン・ターナー氏から歓迎の言葉をいただいた。次いでボブ・エルスワースディレクターから同社のエンタープライズビジネスの今後についてレクチャーを受けた。
マイクロソフトは現在、「People Ready Business」というキャンペーンを展開している。これはマイクロソフトが社員の役割をIT推進に積極展開しようという呼びかけで、社員の行動力、交渉力、洞察力、判断力を生かして、パートナー企業との収益性の高い顧客関係の構築、業務プロセスの改善、革新的な製品・サービスの提供、関係強化を行い、その結果、ソフトウェアの役割の明確化、IT基盤の最適化、インフォメーション基盤の最適化を促進させようというもの。つまり、社員力を経営力に生かそうというキャンペーンである。

マイクロソフトが現在進めているビジネス展開は、デスクトップエリア、サーバー・ビジネスアプリケーション、エンタテインメント、オンラインサービスの4つの分野だ。コマーシャル市場とコンシューマ市場の2つの市場を360度の眼で捉え、コマーシャル市場のワークスタイルの演出と、コンシューマ市場のデジタルライフの演出をマイクロソフトが支援するという。
同社は07年初頭に「Windows Vista」「Office2007」をリリースする準備を進めており、販売パートナーの支援拡充を考えている。
Windows XPを01年10月にリリースして以来5年、Windowsの新バージョンは発表されなかった。同社は、売り上げと利益の大半をWindowsとOfficeから獲得しており、07年初頭に予定している「Windows Vista」「Office2007」のリリースは、同社の今後のビジネス展開を占うものといえる。
また、マイクロソフトはコンシューマ市場にも積極的で、11月には容量30GBのデジタルメディアプレーヤー「Zune」を市場に投入する。これはアップルコンピュータの「iPod」と直接競合する商品で、音楽サービスの「Zune Pass」と連動する。マイクロソフトによると、Zuneソフトウェアは、AppleのiTunesソフトウェアが採用するAACフォーマットをはじめ、人気の高い複数のフォーマットを再生できるようになるとのことである。
好業績に沸くアップル-画期的な新製品を予告-

マイクロソフトの訪問を終えた一行は、カリフォルニア州へ移動し、アップルコンピュータを訪問した。
iPodの大ヒットで勢いづくアップルコンピュータは絶好調である。iPodがMacの販売を促進し、MacがiPodの販売を促進させる相乗効果がでているようだ。
われわれが訪問した翌日に発表された同社の暫定業績発表(第4四半期)によると、MacとiPodの売り上げが30%以上も伸びたことが追い風となり、第4四半期に48億4000万ドルの売上高と5億4600万ドルの純利益を計上した。前年同期は売上高が36億8000万ドル、純利益が4億3000万ドルだった。
最高経営責任者(CEO)スティーブ・ジョブズ氏は、「アップルコンピュータは、今四半期の好調な決算で素晴らしい1年を締めくくった。2007年はアップルコンピュータ史上、最もエキサイティングな新製品を出していく」と述べた。
アップルコンピュータは第4四半期に、前年同期比35%増となる870万台のiPodと、前年同期比30%増となる161万台のMacを販売したという。
同社は、今後インテルチップを搭載したMac、そしてiPodを中心に、製品ラインアップの拡大、ビジネスパートナーの拡充、ミュージックビジネスに注力し、プロシューマ市場、コンシューマ市場に積極展開していくことを計画している。
・第2回に続く