複数機能搭載の製品登場が後押し
NIer、サービス強化で顧客開拓へ
スイッチやルータの簡素化などネットワークシステム統合化の動きが出てきた。メーカー各社が複数の機能を搭載したネットワーク機器を市場に投入していることでニーズが徐々に高まっている。そこで、NIer(ネットワークインテグレータ)各社は基幹スイッチのリプレース需要に向け、ネットワークの構築技術や保守を含めたサービスの強化を図っている。「仮想化」を切り口に、サーバーの統合が進みつつあるのに伴い、複雑なネットワークシステムを解消する意識も高まっているようだ。(佐相彰彦●取材/文)
■統合型ネットワークの需要増 ニッチからすそ野が広がる ネットワークの統合は、メーカー各社がスイッチやルータなどにネットワーク以外の機能を付加した製品を投入したことから始まった。シスコシステムズの統合型ルータ「ISR」シリーズなどが代表的な製品だ。同製品は、レイヤ2スイッチ機能やセキュリティ、音声やコンテンツデータの最適化など、さまざまな機能を搭載していることが特徴。2004年秋の登場から今年春頃までは研究所や教育機関などニッチ市場での需要が多かったが、最近になり一般企業でも導入が進みつつあるようだ。
ネットワンシステムズでは、「これまで法人市場では、機能を集約したスイッチやルータは高額というイメージが強かった。ところが、最近ではネットワークをリプレースする際、運用管理を簡素化したいとのニーズが出てきており、複数の機能を搭載したネットワーク機器の導入を提案するケースが増えている」(宮川悟・NWテクノロジー本部ネットワーク事業開発部第1チーム)という。加えて、「IPネットワーク化が進み、複数のセキュリティ機能搭載のファイアウォールなど、アプライアンス化した製品が売れる傾向にある。ルータも、単に“ネットワークをルーティングする製品”という位置づけだけでなく、さまざまな機能の搭載が拡販につながる」(内野義生・NWテクノロジー本部ネットワーク事業開発部第1チーム)としており、統合型ルータの販売増に力を注ぐ。現段階では、研究所や教育機関での導入顧客が多いものの、「近い将来に、法人市場で爆発的に需要が増えるのではないか」(内野氏)とみている。
ネクストコムでは、「メーカーが差別化を図るためには、競合他社にはない機能を搭載することが重要になる」(川原一彦・商品企画部インフラネットワーク課課長)と指摘する。現段階では、シスコ製の「ISR」シリーズなど統合型ネットワーク機器が爆発的に売れているわけではないが、「さまざまなセキュリティ機能を搭載したアプライアンス製品が売れているように、顧客ニーズに合った製品は人気が高い。モジュールが追加されれば、販売量が増える可能性は十分にある」(同)としている。
■IPネットワーク化で需要増に サーバー集約も寄与  |
| 将来的には「仮想化」も | さまざまな機能を搭載したネットワーク機器の登場で、ネットワークの統合が図れるだけでなく、「仮想化」が実現できるようだ。 シスコシステムズと日本IBMが共同で発表した「IT基盤の統合ソリューション」は、シスコ製マルチレイヤスイッチの「カタリスト6500」とIBM製ブレードサーバーの「ブレードセンター」を連携。これにより、導入企業は実環境と同一の仮想化ネットワーク環境を構築したり、ファイアウォールなどの仮想化による適材適所へのセキュリティ構築が可能となる。ネットワークシステム稼働時でも仮想化でテスト環境の稼働を実施できるという。中堅ベンダーのエス・アンド・アイ(S&I)は、他社との差別化策として同ソリューションを積極的に提供しており、新規顧客を着実に増やしている。 | | | |
ユーザー企業がネットワークの統合化に関心を寄せているのは、IPネットワーク化が進むとともに、IP電話やテレビ会議などデータと音声、映像を融合したシステムを導入する傾向が高まっているためだ。配信するデータ量の増加に伴い、ネットワークをリプレースする必要性がある。「法人市場では、ブロードバンド環境の整備が遅れていたため、新しいアプリケーションサービスの導入時にリプレースする傾向が高まっている。そのため、統合を切り口にシンプルなネットワーク導入を提案している」(ネットワンシステムズの内野氏)というわけだ。ネクストコムでも、「リプレース時には、ユーザー企業のシステム運用担当者が管理しやすいネットワークを常に心がけている。顧客から要望があれば、構築の際に統合型ネットワーク機器を採用する」(川原課長)としている。
ネットワークの統合化に合わせ、社内システム全体を統合管理するニーズも出てきている。ネットワンシステムズは、ネットワークの統合管理を切り口にオペレーティングセンター「エキスパートオペレーションセンター(XOC)」を設置した。同センターでは、ネットワーク回線やセキュリティシステムを365日24時間、常に管理し、IPネットワーク経由で遠隔監視するのが特徴。今年11月からIP電話、来年3月にはサーバーやストレージなどの遠隔監視にも着手する。「複雑なシステムの構築をなかなかリプレースできないユーザー企業が、このサービスの導入をきっかけにネットワークシステム構築を依頼するケースが増えた。今後は、社内システム全体を統合管理できるサービスとして新規顧客を開拓できる」(内野氏)とみている。
また、「サーバーを集約することに伴い、ネットワークを1か所に集中するユーザー企業も出ている。そのため、今後はネットワーク統合化ビジネスを本格化することも視野に入れている」(シーティーシー・エスピーの渡辺裕介・技術本部企画推進室長)という動きもある。ユーザー企業によるシステムや管理の統合化に対する意識が高まることで、ベンダーにとってはビジネスチャンスが広がる可能性を秘めている。