インテルはサーバー向け新プロセッサ「デュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサー9000番台」の出荷を開始した。一部主要サーバーメーカーから新プロセッサを搭載したハイエンドオープンサーバーの販売も始まった。メインフレーム並みの高性能を実現するサーバーの登場で、ハイエンドシステム市場におけるメインフレームからオープンシステムへの移行案件がますます増えそうだ。(木村剛士●取材/文)
サーバー各社、製品化を表明
■Itanium Solutions Allianceが売上増加に大きく貢献 インテルが出荷を開始した「デュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサー9000番台(開発コード名:モンテシート)」は、「Itanium 2プロセッサ・ファミリー」で初めてのデュアルコアモデル。前世代のシングルコア製品に比べ、最大2倍の性能向上と、最大20%の消費電力を削減した。このプロセッサを搭載することで、メインフレーム並みの処理能力がオープンシステム環境で実現できるという。
Itaniumプロセッサは、初代版が出た2001年以来順調に出荷が伸びており、「競合となる『SPARC』や『POWER』に比べ売上成長率は40%以上で、Itaniumで50億ドルの売り上げがある」(米インテルのトーマス・キルロイ副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長)。
この好調な売れ行きを支え、普及に貢献しているのが05年9月に発足した「Itanium Solutions Alliance」。同プロセッサを活用したシステム構築のためのソフト開発者向け支援プログラムを提供する団体で、約70社のコンピュータメーカーやソフトメーカーが参加。対応アプリケーション数は、03年700本だったのが06年上半期の時点で8200本に拡大した。同団体では、10年までに100億ドルの投資を予定しており、Itanium普及促進に今後も継続的に力を注ぐ計画を示している。プロセッサとそれを搭載するハードの充実、そして対応ソフトの拡充と、Itanuimを使うシステム環境が徐々に広がっている。
■メインフレームからの移行ニーズを取り込みたい大手ベンダー 主要コンピュータメーカーは、同プロセッサを搭載したサーバーを製品化することをすでに決定している。なかでも、NECと富士通の両社は、同プロセッサの出荷開始とともに、搭載サーバーを製品化したことを早速発表した。
NECは、ITプラットフォーム製品の開発指針やロードマップを新たに定めた新戦略「REAL IT PLATFORM」のなかで、新プロセッサ搭載サーバー「NX7700iシリーズ」を新戦略を具現化するための第一弾製品として位置づけた。新プロセッサと自社開発した新チップセットを組み合わせることで、同社の従来機種よりも最大2.2倍の処理性能力向上を実現したという。「メインフレームレベルの信頼性と保守機能を備えている」(伊藤行雄執行役員)製品として、基幹系システムの中核ハードプラットフォームとして拡販。メインフレームからオープンシステムへの移行ニーズなどを取り込む。
富士通も同様に、新プロセッサを搭載したサーバー「PRIMEQUEST(プライムクエスト)500シリーズ」を発表、他社に先駆けてすでに全世界で出荷開始している。富士通は、SOA対応ミドルウェア、既存アプリケーションの移行工数を削減するサービス「マイグレーションスイート」、短期間でのシステム導入をサポートする「システムスタートアップサービス」や「カスタムメイドプラス」などPRIMEQUEST導入支援のための関連製品・サービスもリリースした。メインフレームからPRIMEQUESTへの移行をスムースに行うためのメニューを豊富に揃えており、メインフレームからの移行ニーズを取り込むという点で、NECと一致する。
2社のほか、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)や日立製作所、日本SGIなども新プロセッサを搭載したサーバーを計画しており、今後サーバーメーカー各社から順次製品化されることになる。サーバー市場は今、メインフレームやUNIX系サーバーが落ち込む一方で、IAサーバーが急成長している。調査会社のノーク・リサーチの伊嶋謙二社長は、Itaniumの普及について、「チップそのものの進化は激しく、今後価格はどんどん下がり、エントリーサーバーにも搭載される可能性がある。だが、アプリケーションや周辺機器などが追いつかないはずで本格普及には2-3年はかかる」と指摘する。ただ、「メインフレーム、オフコン、UNIXシステムからIAサーバーへの移行の流れは明らかだ。大規模システムでは、IA64(Itanium)にリプレース、またミッドレンジ以下はx86系サーバーへの移行という路線がより一層強まる」と予想する。
レガシーシステムからの移行を具現化する製品としてItanium搭載サーバーの地位はますます高まりそうだ。
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| 他社とは一線画すデル | 「Itanium」は現在、NECや富士通、日本HP、日立製作所、日本ユニシスなど主要サーバーメーカーのほとんどが搭載サーバーを開発・製品化する。 ただ、そのなかでデルはその戦略とは一線を画し、Itaniumを担がない。デルは、01年8月にItanium搭載サーバー「PowerEdge 7150」をリリースし、その後03年6月と04年6月にも新製品を発売した。だが、05年9月に販売を中止。以来、「Xeon」プロセッサのみを搭載している。 |  | デルでは、「『スケールアウト(サーバー台数を増やすことで全体のシステムのパフォーマンスを上げる考え方)戦略を取るデルの製品にマッチしない。また、ビジネスアプリケーション分野では、Xeonプロセッサで十分対応できる」とその理由を説明している。 IAサーバー市場で高成長が持続するデルが今後Itaniumを担ぐ可能性があるのか。Itanim搭載サーバーの出荷台数推移とともにデルの戦略もこの分野の注目点だ。 | | | |