その他
大手PBXメーカー、SMB顧客開拓へ IPテレフォニービジネスを加速
2006/07/17 14:53
週刊BCN 2006年07月17日vol.1146掲載
大手PBXメーカーがSMB(中堅・中小企業)向けIPテレフォニービジネスの拡大に乗り出した。SMB向け製品の投入や価格改訂などで新規顧客の開拓に力を入れている。単なるPBXのリプレースではなく、モバイルやウェブ会議、グループウェアなどアプリケーションサービスを含めたシステム提案を加速。大企業へのIPセントレックスの提供やIPテレフォニーサーバーの導入が一段落しつつあるなか、SMB市場でシェア争いが激化する可能性は高い。(佐相彰彦●取材/文)
価格、製品体系見直しでシェア争い激化
アプリ絡めた提案で他社ユーザー攻略も
■NECがSMB向け製品を投入 日立も体系化を検討
ここにきてSMB向けIPテレフォニービジネスに本腰を入れ始めたのはNEC。50-200人規模の企業に適した「ユニバージュワンミリオンソリューション」を7月末から提供する。同製品は、中小規模向けSIP(通信プロトコルのひとつ)対応テレフォニーサーバーの「ユニバージュSV7000SS」をベースにIP電話システムとして提供する。基本セットの価格を100万円に設定。ウェブ会議やセキュアリモートアクセスなど基本セットに付加するオプションシステムも5種類用意した。
SMB向けに製品を体系化した理由について、都筑一雄・執行役員は「ユニバージュは、大企業が導入している一方、SMBには上手く情報が伝わっていなかったからだ」と指摘する。八田孝・UNIVERGEソリューション推進本部長も、「SMBへの訴求では、価格帯に問題があった」と認める。100万円ベースの基本セットと、必要な機能をビルトアップ方式で追加できる製品体系で、「SMBの需要を掘り起こしていきたい」(都筑執行役員)考えだ。また、UNIVERGEソリューション推進本部のなかに、販売代理店の営業や技術支援を行う100人体制の組織も新設。「電話の置き換えだけでなく、導入企業のビジネス拡大につながるようなソリューションで拡販する」(八田本部長)という。
「ユニバージュワンミリオンソリューション」については、今年度(2007年3月期)に50億円の売り上げを見込む。08年度には170億円の売上高を目指しており、「国内のマーケットリーダーを獲得する」(都筑執行役員)方針。
日立製作所では、現段階で大企業へのシステム導入が中心だが、「今後は、100-200人規模の企業を中心にSMB市場でIPテレフォニーシステムの導入ニーズが高まる可能性は十分にある。こうした状況になれば、アプリケーションサービスを含めたシステム体系化が必要となる」(秋葉俊夫・ネットワークソリューション事業部Communi Max販売支援センタ主任技師)とし、今年度(07年3月期)後半から来年度初めにかけてSMB向け事業の強化を図ることを検討している。
「現段階では、通信系特約店への販売支援が中心だが、アプリケーションサービスの提供に詳しい情報系SIerとのパートナーシップも組んでいきたい」(福田吉治・ネットワークソリューション事業部CommuniMax販売支援センタ長)という狙いもある。
■沖電気はIPサーバー価格を改訂 富士通はサービス強化を徹底
両社以外にも、新たな動きが出てきた。
沖電気工業では、IPテレフォニービジネスで獲得した顧客の3割程度がSMBで、「この比率を高めていく」(原口哲朗・IPシステムカンパニーIPシステム本部マーケティング部担当部長)ためにSMB向けの「SS9100タイプM」の最小価格を100万円からに見直した。原口部長は、「アプリケーションなど付加価値に対してユーザー企業が購入意欲を持ってくれるのであれば、値頃感を訴えていくのは、顧客企業数を増やすためにも、ある程度重要」という。今年度(07年3月期)は大企業とSMBを合わせて100-200社へのシステム提供を目指すが、「3割以上はSMBを顧客として獲得する」(同)方針だ。
富士通は、昨年末からIPテレフォニーシステムとアプリケーションサービスを連携させた「オフィス・イノベーションモデル」を提供。IPテレフォニーシステム「ベーシックモデル」を中心に、「オフィス」や「モバイル・オフィス」「セキュリティ・パワーアップ」を切り口に15種類のシステムを用意。7月初旬の時点で200案件を獲得した。
なかでも、「ベーシックモデル」の価格を100万円に設定していることから、「中堅企業からの引き合いも徐々に増えている。今後は、ソリューションのラインアップを増やし、情報系のパートナーにも売ってもらう体制を整える」(大森秀晃・サービスビジネス本部ネットワークビジネス推進統括部ネットワークサービス推進部プロジェクト課長)としている。IP-PBXの売上高については、昨年度の180億円から今年度は200億円まで引き上げる計画で、「中堅企業の顧客獲得が売上増に寄与するだろう」(同)とみている。
■ニーズの高まりから事業を本格化 他社のPBXユーザー奪取も視野に
PBXメーカー各社がSMB向け事業を本格化させたのは、「SMBのなかで、ITとIPを使って業務効率化を図り、ビジネスの拡大につなげたいというニーズが出ている」(NECの八田本部長)ためだ。IPネットワークを活用したアプリケーションサービスの需要がSMBにまで広がっているわけだ。顧客獲得の決め手となるのが、IPネットワークとアプリケーションサービスを連携させたサービスモデルの提供ということになる。
しかも、「既存のPBX顧客に対するIP-PBXへのリプレース提案を蓄積することが、他社のPBXユーザーの攻略にも応用できる」(富士通の大森課長)との声も挙がる。新規顧客を増やすことについては、各社とも躍起になっている。SMB市場でのIP-PBXに関するシェア争いが繰り広げられることは必至だ。
【記者の眼】
・PBXメーカーは、SMB向けIPテレフォニー事業の拡大に向け低価格製品を強化
・IP-PBX市場でのシェア拡大競争が始まろうとしている
・SMB需要の増大は、販売代理店にとってビジネス拡大につながる可能性がある
大手PBXメーカーがSMB(中堅・中小企業)向けIPテレフォニービジネスの拡大に乗り出した。SMB向け製品の投入や価格改訂などで新規顧客の開拓に力を入れている。単なるPBXのリプレースではなく、モバイルやウェブ会議、グループウェアなどアプリケーションサービスを含めたシステム提案を加速。大企業へのIPセントレックスの提供やIPテレフォニーサーバーの導入が一段落しつつあるなか、SMB市場でシェア争いが激化する可能性は高い。(佐相彰彦●取材/文)
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