その他
人材不足に韓国から援軍 「日本就業IT研修生」が誕生
2006/05/29 14:53
週刊BCN 2006年05月29日vol.1139掲載
日本と韓国の政府間で「日韓IT協定」が結ばれたのは1997年の秋だった。当時、韓国は通貨危機に陥り、IMFの指導下で金大中大統領が硬直化した経済の建て直しに取り組んでいる最中だった。失業者が急増し、大学新卒者の就職がままならないという状況を背景に、日韓両政府は韓国における「高度なIT技術者」の養成と日本への受入れで合意した。それから10年目の今年、日韓IT人材交流プロジェクトは新しい局面に入っている。韓国の大学に開設した「日本就業IT研修制度」の研修生が専門教育コースを修了し、日本に就業する段階を迎えたのだ。ソウル市で開かれた第1期生約60人の日本就業式の様子をレポートする。(佃 均(ジャーナリスト)●文/写真)
ソウルで見た第1期生終了式
日本人以上に正確な日本語も
■日韓の官産学協同で実現 授業はすべて日本語で
5月8日、韓国の日本就業IT研修制度終了式に出席する機会を得た。会場はソウル市瑞草区にある海外向け研修施設「ソウルEnglish Park」。その中心にセミナールームや宿泊施設、パーティ会場を備えた「SEOUL Education Culture Center(ソウル教育文化会館)」があって、ここで当日午後4時から、日韓の官産学共同による「日本IT研修生出陣式」(研修修了生歓送会)が開催された。
瑞草区のソウルEnglish Park。周囲の緑はまさに公園そのもの。この国では、両親が「子どもを少しでもいい大学にいれたい」と教育に費用を投入し、当の子どもたちも「いずれは海外で働きたい」と考えている。 中学校は夜10時まで授業をやっている。その理由を聞くと、「生徒を早く家に返すと、塾通いが過熱するから」という。また最近のソウルでは英語か日本語ができないと、喫茶店のアルバイトにも就けない。教育熱とあいまって、公営のEnglish Parkが次々にオープンしている。瑞草区のそれは「English」と名づけられているものの、英語に限定していないのが特徴だ。英語が主だが、日本語や中国語のコースもある。つまりここでいうEnglishは「外国語」の代名詞といっていい。
ここに入ると、原則として韓国語はいっさい使えない。日本IT就業研修制度の研修生は試験で選抜され、国費で特別コースが開設されている大学で実践的な授業を受けるが、相当額を自己負担しなければならない。全額補助でなく自己責任が明確なので、研修生も両親も真剣だ。
式典に参加したのは韓国側が明知大学、祥明大学、シャロム・コンピュータ学院の3校と韓国産業人力公団、日本側が在韓日本大使館、岩崎言語学研究所および、日韓共同出資のAICON、AICONとビジネスパートナーの関係にあるクリエアナブキなど関係者約200人。うち日本に就業する研修生は58人である。「釜山から泊りがけでやってきた家族もいる」と聞いた。
■日韓IT協定が新たな局面に「韓国代表として立派な仕事を」
修了式で挨拶に立った各教育機関の総長、副総長は、研修生に「君たちは民間大使です。日本に行ったら韓国を代表する覚悟で立派な仕事をしてほしい」「後に続く人たちのためにも、国の名に恥じない成果をあげてくるよう」と送る言葉を投げかけ、これに応えるかたちで研修生の代表が感謝と決意を語った。研修生の大半が海外に行くのは初めて、しかも卒業と同時に海外で就労となれば、覚悟のほどが理解できる。辞令を受け取った研修生たちは足取りも軽く、自然に笑顔が浮かぶ。演壇近くまできて、自分の子どもの晴れ姿を撮影する父兄にも感激の表情が見えた。
研修生からは、「私は……」で始まり「……です」で終わるキチンとした日本語(日本ではついぞ耳にすることが少なくなった)で答えが返ってきた。半年の特訓でここまで外国語をマスターした彼らの能力に感心した。「日本のアニメで覚えました。私の日本語はちゃんと通じますか?」「大阪に姉が住んでいますが、東京には行ったことがありません」「秋葉原に行きたいです。新しい電車(つくばエクスプレスのこと)には乗りましたか?」――希望と不安が入り交じった質問が次から次に飛び出し、インタビュアーがインタビューされることになってしまった。
日韓の政府機関の代表者まで出席して開かれた日本IT研修制度修了式は、日韓IT協定が新しい局面に入った証には違いない。これが韓国の期待を裏切ることにならないよう、関係者ばかりでなく、日本のIT産業の前向きな姿勢が求められる。
日本と韓国の政府間で「日韓IT協定」が結ばれたのは1997年の秋だった。当時、韓国は通貨危機に陥り、IMFの指導下で金大中大統領が硬直化した経済の建て直しに取り組んでいる最中だった。失業者が急増し、大学新卒者の就職がままならないという状況を背景に、日韓両政府は韓国における「高度なIT技術者」の養成と日本への受入れで合意した。それから10年目の今年、日韓IT人材交流プロジェクトは新しい局面に入っている。韓国の大学に開設した「日本就業IT研修制度」の研修生が専門教育コースを修了し、日本に就業する段階を迎えたのだ。ソウル市で開かれた第1期生約60人の日本就業式の様子をレポートする。(佃 均(ジャーナリスト)●文/写真)
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