中堅企業向けERPの再構築進める

　SAPやオラクルなど大手ERP（統合基幹業務システム）ベンダーが中堅企業を意識した展開を進めるなか、日立製作所においても同領域を強化する動きが活発化している。独自開発したERP「ジェムプラネット」シリーズの開発フレームワークをグループ企業やビジネスパートナーの共通基盤にすることで開発効率を高め、より密接な連携を推進する。

　グループ企業やビジネスパートナー内で一部機能が重複したり、連携が十分に取れないことなどが、日立でも課題となっていた。ジェムプラネットを販売し、ソフト開発を行うパートナー数は全国に約70社あるが、このうち07年度（08年3月期）までの2年間で約半数のパートナーに開発フレームワークを使った開発経験を積んでもらうことで連携を促進。将来的には開発フレームワークの共通化を目指す。

　現時点では、実際に開発フレームワークを採用している比率はまだ低く、連携基盤の浸透が遅れている。開発プラットフォームを早期に共通化することで「重複投資を回避して生産性の向上を図る」（渡辺昌弘・ゼネラルマーケットビジネス統括本部ソリューションビジネス本部統括部長）方針。

　日立では、04年11月にジェムプラネットファミリーとして、一体感を持った展開を推進すると発表したものの、統合や連携は難航気味だ。

　オフコン時代から30年近く開発し続けている業務システムや社運を賭けて新規に開発したERPなど、ビジネスパートナー各社はすでに莫大な開発資金を投じているケースが多い。投資回収のスケジュールもあり、ジェムプラネットと連携させる手直しのために新たな投資がしにくい状況が背景にある。また、開発環境が統一されていないことも連携しにくい原因になっている。

　日立系の中堅企業向けビジネスパートナー御三家といわれる日立エイチ・ビー・エム（日立HBM）、ニッセイコム、日立情報システムズは、それぞれハイコアシリーズ、NCくんシリーズ、天シリーズを開発しているが、すべてがジェムプラネットとの連携を実現しているわけではない。

　日立では、こうした主力商材をジェムプラネットとより密接に連携させることで相乗効果を高める計画だ。

　現在、ジェムプラネット本体以外で完全なデータ連携を実現しているのは5製品程度。来年度はこうした連携製品を20種類に増やし、07年度には40種類に拡大することを目指す。

　この40種類の中には、主要ビジネスパートナーのERP製品も候補にあがっている。開発フレームワークを共通化して連携を密にすることを目指すが、一部でSOA（サービス指向アーキテクチャ）技術を使った緩やかなデータ連携も視野に入れる。

　日立は、中堅企業の顧客を今年度までの3年間で約5000社を新規に開拓する見込みで、累計約1万5000社に増やすなど、中堅企業市場におけるビジネス拡大に力を入れてきた。新規顧客のうち約3000社はSIを軸としたソリューション案件で、ジェムプラネットファミリーの引き合いも活性化している。

　ビジネスパートナーのERPも好調で、今年度のハイコアシリーズ関連の売上高は前年度比約20％増、NCくんシリーズ関連の来年度の販売本数は今年度見込みの1・5倍に、それぞれ伸ばす計画だ。

　開発効率の向上を進めるとともに、ビジネスパートナーが持つ売れ筋商材との連携促進が、日立の中堅市場における競争力拡大に欠かせない要素になりそうだ。 安藤章司●取材／文