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検証 ネットで起きてるホットなトレンド 話題のWebサービス「Web2.0」っていったい何だ!?
2006/02/27 14:53
週刊BCN 2006年02月27日vol.1127掲載
【米・ニューヨーク発】このところ、「Web2.0」が大流行だ。この原稿を書いている今、Web2.0の代表企業とされるグーグルで「Web2.0」を検索すると1000万件近くの検索結果が表示される。ここ1年ほどの間に一気に広まった感のある「Web2.0」という言葉だが、日々メディアで取り上げられるほどその意味合いが一般に知られているわけではない。「Web2.0」とは何なのか。そして今後どのような変化をもたらすのか。改めて現状を見つめ直すとともに、今後の展望を見据えてみる。(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
Webの複合化で新たなサービス誕生へ
Web2.0という言葉を聞くようになってから、多分まだ2年も経ってはいまい。しかし今やありとあらゆるメディアで取り上げられ、各種の解説が専門誌を埋め尽くし、さらには多くの識者が今後の展望を述べている。しかし一方ではITベンダーの営業マン氏のセールストークを聞く限り、これまでと何が違うのかが分かりづらく、また何か具体的なメリットがあるのかどうかさえ疑わしく感じてしまう。いったい、Web2.0とは何であり、そしてなぜこんなにも騒がれているのであろうか。改めて複数の視点からWeb2.0を見つめ直してみたい。
■製品ではなく「コンセプト」
Web2.0とは乱暴に言ってしまえば、「Webをプラットフォームとする新世代サービス」の「概念/考え方」である。アナリストたちのブレーンストーミングにおいて「今ではもう新しい次元でのサービスが始まっている」との見解から、「2.0と呼ぶべき」と言われたのがきっかけだという。つまりWeb2.0とはある種の考え方の一つの方向性にしか過ぎないといえる。
Web2.0が混乱をきたしているのは、このようにその名称がメーカーや技術者側に名づけられた製品名でないことや、Web2.0として認知されている各種のサービスが多様を極めており、技術的にもマーケティング的にも新旧さまざまな要因を内包するために、容易にその基準を明確に制定できないことに起因する。Web2.0の基本となるのは「ウェブをプラットフォームとする各種のサービス」である。もちろんそこにはRSSやparmalink、XMLやAjaxといった新技術により実現されたものも多い。しかしながらWeb2.0がWeb2.0であることの最大の要因は、「あくまでサービス供与をよりよい形で行うためのものであるべきで、製品や技術の売買がWeb2.0の本質ではない」ことは一致した認識として浸透しつつある。
■サービスの無料提供が人気の条件
では、Web2.0をビジネスとしてみた場合にはどうだろうか。Web2.0を代表する企業として、グーグルがある。現在最もよく知られたWeb2.0サービスは、「グーグル・マップ」や「Gメール」だろう。ネットスケープやマイクロソフトのインターネットエクスプローラがあくまでパッケージ化されたアプリケーション・ソフトウェアとして販売・配布されていたのに対し、グーグルはあくまでウェブ上でのサービスを提供しているのが特徴だ。
「ブログ」や「Wikipedia」も代表的なWeb2.0サービスだ。これらの特徴は多くのユーザーの持つ小規模のデータベースや関連情報、知識が相互に組合わされ最終的にユーザーにアウトプットされることにある。個人がホームページを立ち上げて情報発信をしたのがWeb1.0なら、それを閲覧者がカスタマイズして自由に使いこなすことができるのがWeb2.0といってよい。
ただし、現時点で人気を博しているWeb2.0サービスのほとんどは、「無料」であることが欠かせない要素ともいえる。例えばAmazonで書籍を購入するとする。旧来のオンラインショップでも購入は可能だが、現在のAmazonでは事前に書評を読むことができ、しかもその書評は不特定多数のインターネットユーザーからのもので、売り手からの一方的な情報だけではない。もちろん読書後には購買者が自分自身で書評を追記することも可能だ。このAmazonのサービスは無料だ。彼らの収益はオンラインショップからによるものが中心で、多くのWeb2.0サービスサイトでは、ユーザーがサービスを利用することによる課金は行われていない。
■データを複合化したサービスの登場
Web2.0の重要な基盤となるものに、提供するサービスの根幹であるべきデータベースの所有権と複数の資産の融合があげられる。Web2.0サービスの代表的な例としてしばしば取り上げられるグーグル・マップは、先駆者であるMapQuestと同じデータベースを入手することにより同等以上のサービスを容易に構築し、先駆者MapQuestの脅威となったばかりか、ESRIのようなプロフェッショナル向けの有料サービスをも駆逐する勢いだ。マッシュアップと呼ばれるこのサービスは、いかに複数のデータベースを活用するかを模索したものだ。
すでにこの分野には、賃貸住宅の情報と地図データを併せ持つものや、中古車の個人売買情報を兼ね備えたものなども存在し、好評を博している。2種以上のデータを組み合わせることによって実現した新サービスは、Web2.0の本質といえるだろう。
これらのサービスの特徴は、根幹になる独自のデータベースを活用しながらも、データそのものではなく、そのデータを活用するサービスを提供していることにある。そしてユーザーへの有益なサービスの実現こそが、成功の要因であったことはいうまでもない。
■収益源にはなりにくい!?
しかしながら、今の時点で改めてオンラインでのサービスを提供すれば、企業が成長したりユーザーに受け入れられるのかといえば、そういうわけではない。かつて数多くのB2Bマーケットプレイスがインターネット上に出現し、そしてその大半が消え去っている。ウェブブラウザを経由してデータベースにアクセスし、最終的な取引とそれに伴う決済業務までを一元管理するという考えは、現在のWeb2.0に近いものだったはずだ。その一方ではビジネスモデルは旧来のままでありながらも、Amazonのように他社がうらやむほどの成功を収めている例も多い。改めて考えてみれば、利用者側の利益を最大限に留意した企業こそが成功を収めるという図式は、実はずっと以前から商売の基本ではなかっただろうか。
しかし、Web2.0の隆盛はIT業界各社にとって手放しで喜べる状況ではない。当然ながら、今ではWeb2.0は各ITベンダーの営業マンが一日に何回も口に出すキーワードとなっている。Web2.0サービスの実現のために「技術力を提供」するというのは、特にITベンダーであれば容易に考えつくビジネスモデルである。
ところがこの選択肢もまた困難なようだ。1999─2000年のいわゆる「Y2K」時には多くの企業が莫大な出費を強いられ、時を同じくして訪れたドットコムバブルの崩壊とともに、企業のIT部門はその信頼と権限を大きく失っていた。
そこにやってきたスパム/フィッシングメールによるネット犯罪や、サーバーへの不正侵入などによるセキュリティ問題への危機感。サーベンス・オクスリー(SOX)法の制定による企業内部の監査システムの大幅変更に伴う作業、そしてそれらに続く今回のWeb2.0と、ITベンダーの営業マンはセールストークのネタに事欠かない。
セキュリティ関連やSOX法がらみであれば、技術面での売り上げが期待されたが、Web2.0では、それが「サービス」であるがゆえに、具体的な形での販売品目がなく、結果として新たに大幅な売り上げアップを見込めないからだ。いうまでもないことだがWeb2.0の場合、必ずしも新商品や新技術を売り物にできるわけではない。
■実は大きなビジネスチャンスが…
ではどうすれば収益をあげることができるのだろうか。これまで述べてきたようにWeb2.0の本質とは「サービス」の概念である。もちろんサービスを実現するのは技術ではあるが、「技術志向」ではないことがWeb2.0の特徴でもある。RSSといった技術は他者の智恵を入手するためのサービスの供給にほかならず、それを支えるのが新しい技術というスタンスなのである。
また、現在のところWeb2.0の代表企業の大半はまだまだ未熟なベンチャーだ。物品販売が主とならないWeb2.0では、短期的な収益をもたらすものがないために、結果として企業としての体力が蓄えられずにいるケースが多く、ベンチャー企業のレベルを脱しきれない要因ともなっている。しかし技術生産指向の企業だからといって、Web2.0と縁がないわけではない。先に述べたAmazonのように、ビジネスモデルは一見旧態依然であっても、Web2.0の概念を取り入れることにより躍進した企業は多い。
捉えどころがないようにも見えるWeb2.0だが、実は大きなビジネスチャンスを内包する動きであることもまた明白だ。とはいえ「モノ」を売りたいベンダーとの温度差が、ユーザーまで含めた三者それぞれに対してよい結果を生み出すことを難しくしているのも事実である。
■個人の智恵の総和が信頼情報を生む
書き手の一方的な情報提供であったホームページはブログにとって代わり、書き手と読み手のお互いがその情報のみならず周辺情報までを共有するようになってきた。そして個人の持つ情報が互いに融合するようになることにより、ネットを経由してのマーケティングには大きな変化が訪れると考えられている。
多くのユーザーの有機的な融合がWeb2.0であり、共有される情報が増えるほどに情報発信側の意向は薄れ、智恵の総和による洗練された情報がアウトプットの中心となっていく。ソーシャルネットワーク等も同様だ。一方的に押しつけられる宣伝行為はWeb2.0サービスのなかでは淘汰されやすく、ユーザー側の総合評価こそが重要なコンテンツとなる傾向は強い。しかしこのような状況であるがゆえに有意義なサービスの提供を実現できれば、その企業が大躍進する可能性を秘めているといえ、そしてそのことこそが、Web2.0時代の特徴なのである。
このような状況から、今後課題となっていくと考えられるのは、Web2.0企業の収益構造の確立であろう。順次生み出されるWeb2.0の新サービスをいかに収益に結びつけることができるのか。マイクロソフトはWeb2.0への注力を明らかにした。大手でさえもこのWeb2.0への乗り遅れを憂慮し、表だったものから一般には発表されないものまで、何らかの対策を立てている。これは、かつてたくさんの有望なビジネスモデルを持つ企業があえなく消え去ったインターネット創世期のような状況に近いが、ひとつだけ大きな違いがある。
それはWeb2.0が「オープン」だということだ。プログラムやデータベース、そしてそこに参加するユーザーたちの智恵や技術を自由に取り込めるからこそのWeb2.0である。ブログはWeb2.0の代表的な個人活動のひとつとなった。多くの一般インターネットユーザーは自身のホームページの更新に飽きてしまっていたが、個人のブログはますます増えつつある。
ブログの普及により、ユーザー同士の連携や協調が加速され、求めるものがより入手しやすくなったことや、多くの有益な情報が入手しやすくなったことで、虚偽の情報や低質なコンテンツに行き着く割合が大きく減少した。ウェブがいっそう便利なツールとして認識されてきたことが重要な要因とみられている。
PCの枠を越えて進化する可能性も
■専用ハードウェアも登場か
Web2.0は、すでにそのハードウェア・プラットフォームがPCに限られないことも現象として現れてきている。携帯電話やPDAといったウェブブラウザが利用可能な機器はもちろん、今後はWeb2.0を前提とした専用ハードウェアの登場も予測される。
また、アップルのiPodと同社のウェブサービスであるiTMSは新しい形態のビジネスモデルといえ、各種のハードウェアとウェブサービスを有機的に組み合わせたビジネスモデルの出現は今後さらに加速されるだろう。
楽曲をリズムで検索するという新しい概念をネットに持ち込んだ、The Songtapper(www.songtapper.com)などは、MP3プレーヤーを常に携帯するような世代には、登場してしかるべきサービスといえる。
これらを見る限り、Web2.0に手を染める新進企業はそう遠くないうちにきちんとした事業の形を成していくのではないだろうか。良質なサービスの、より一層の充実を期待するためには、企業や個人を問わずWeb2.0にかかわるすべてが重要な要素となり、そしてそのシームレスな環境と考え方こそがWeb2.0の真髄といえるだろう。
Webの複合化で新たなサービス誕生へ
グーグル・マップなどがWeb2.0の代表例
Web2.0という言葉を聞くようになってから、多分まだ2年も経ってはいまい。しかし今やありとあらゆるメディアで取り上げられ、各種の解説が専門誌を埋め尽くし、さらには多くの識者が今後の展望を述べている。しかし一方ではITベンダーの営業マン氏のセールストークを聞く限り、これまでと何が違うのかが分かりづらく、また何か具体的なメリットがあるのかどうかさえ疑わしく感じてしまう。いったい、Web2.0とは何であり、そしてなぜこんなにも騒がれているのであろうか。改めて複数の視点からWeb2.0を見つめ直してみたい。 ■製品ではなく「コンセプト」
Web2.0とは乱暴に言ってしまえば、「Webをプラットフォームとする新世代サービス」の「概念/考え方」である。アナリストたちのブレーンストーミングにおいて「今ではもう新しい次元でのサービスが始まっている」との見解から、「2.0と呼ぶべき」と言われたのがきっかけだという。つまりWeb2.0とはある種の考え方の一つの方向性にしか過ぎないといえる。
Web2.0が混乱をきたしているのは、このようにその名称がメーカーや技術者側に名づけられた製品名でないことや、Web2.0として認知されている各種のサービスが多様を極めており、技術的にもマーケティング的にも新旧さまざまな要因を内包するために、容易にその基準を明確に制定できないことに起因する。Web2.0の基本となるのは「ウェブをプラットフォームとする各種のサービス」である。もちろんそこにはRSSやparmalink、XMLやAjaxといった新技術により実現されたものも多い。しかしながらWeb2.0がWeb2.0であることの最大の要因は、「あくまでサービス供与をよりよい形で行うためのものであるべきで、製品や技術の売買がWeb2.0の本質ではない」ことは一致した認識として浸透しつつある。
■サービスの無料提供が人気の条件
では、Web2.0をビジネスとしてみた場合にはどうだろうか。Web2.0を代表する企業として、グーグルがある。現在最もよく知られたWeb2.0サービスは、「グーグル・マップ」や「Gメール」だろう。ネットスケープやマイクロソフトのインターネットエクスプローラがあくまでパッケージ化されたアプリケーション・ソフトウェアとして販売・配布されていたのに対し、グーグルはあくまでウェブ上でのサービスを提供しているのが特徴だ。
「ブログ」や「Wikipedia」も代表的なWeb2.0サービスだ。これらの特徴は多くのユーザーの持つ小規模のデータベースや関連情報、知識が相互に組合わされ最終的にユーザーにアウトプットされることにある。個人がホームページを立ち上げて情報発信をしたのがWeb1.0なら、それを閲覧者がカスタマイズして自由に使いこなすことができるのがWeb2.0といってよい。
ただし、現時点で人気を博しているWeb2.0サービスのほとんどは、「無料」であることが欠かせない要素ともいえる。例えばAmazonで書籍を購入するとする。旧来のオンラインショップでも購入は可能だが、現在のAmazonでは事前に書評を読むことができ、しかもその書評は不特定多数のインターネットユーザーからのもので、売り手からの一方的な情報だけではない。もちろん読書後には購買者が自分自身で書評を追記することも可能だ。このAmazonのサービスは無料だ。彼らの収益はオンラインショップからによるものが中心で、多くのWeb2.0サービスサイトでは、ユーザーがサービスを利用することによる課金は行われていない。
■データを複合化したサービスの登場
Web2.0の重要な基盤となるものに、提供するサービスの根幹であるべきデータベースの所有権と複数の資産の融合があげられる。Web2.0サービスの代表的な例としてしばしば取り上げられるグーグル・マップは、先駆者であるMapQuestと同じデータベースを入手することにより同等以上のサービスを容易に構築し、先駆者MapQuestの脅威となったばかりか、ESRIのようなプロフェッショナル向けの有料サービスをも駆逐する勢いだ。マッシュアップと呼ばれるこのサービスは、いかに複数のデータベースを活用するかを模索したものだ。
すでにこの分野には、賃貸住宅の情報と地図データを併せ持つものや、中古車の個人売買情報を兼ね備えたものなども存在し、好評を博している。2種以上のデータを組み合わせることによって実現した新サービスは、Web2.0の本質といえるだろう。
これらのサービスの特徴は、根幹になる独自のデータベースを活用しながらも、データそのものではなく、そのデータを活用するサービスを提供していることにある。そしてユーザーへの有益なサービスの実現こそが、成功の要因であったことはいうまでもない。
■収益源にはなりにくい!?
しかしながら、今の時点で改めてオンラインでのサービスを提供すれば、企業が成長したりユーザーに受け入れられるのかといえば、そういうわけではない。かつて数多くのB2Bマーケットプレイスがインターネット上に出現し、そしてその大半が消え去っている。ウェブブラウザを経由してデータベースにアクセスし、最終的な取引とそれに伴う決済業務までを一元管理するという考えは、現在のWeb2.0に近いものだったはずだ。その一方ではビジネスモデルは旧来のままでありながらも、Amazonのように他社がうらやむほどの成功を収めている例も多い。改めて考えてみれば、利用者側の利益を最大限に留意した企業こそが成功を収めるという図式は、実はずっと以前から商売の基本ではなかっただろうか。
しかし、Web2.0の隆盛はIT業界各社にとって手放しで喜べる状況ではない。当然ながら、今ではWeb2.0は各ITベンダーの営業マンが一日に何回も口に出すキーワードとなっている。Web2.0サービスの実現のために「技術力を提供」するというのは、特にITベンダーであれば容易に考えつくビジネスモデルである。
ところがこの選択肢もまた困難なようだ。1999─2000年のいわゆる「Y2K」時には多くの企業が莫大な出費を強いられ、時を同じくして訪れたドットコムバブルの崩壊とともに、企業のIT部門はその信頼と権限を大きく失っていた。
そこにやってきたスパム/フィッシングメールによるネット犯罪や、サーバーへの不正侵入などによるセキュリティ問題への危機感。サーベンス・オクスリー(SOX)法の制定による企業内部の監査システムの大幅変更に伴う作業、そしてそれらに続く今回のWeb2.0と、ITベンダーの営業マンはセールストークのネタに事欠かない。
セキュリティ関連やSOX法がらみであれば、技術面での売り上げが期待されたが、Web2.0では、それが「サービス」であるがゆえに、具体的な形での販売品目がなく、結果として新たに大幅な売り上げアップを見込めないからだ。いうまでもないことだがWeb2.0の場合、必ずしも新商品や新技術を売り物にできるわけではない。
■実は大きなビジネスチャンスが…
ではどうすれば収益をあげることができるのだろうか。これまで述べてきたようにWeb2.0の本質とは「サービス」の概念である。もちろんサービスを実現するのは技術ではあるが、「技術志向」ではないことがWeb2.0の特徴でもある。RSSといった技術は他者の智恵を入手するためのサービスの供給にほかならず、それを支えるのが新しい技術というスタンスなのである。 また、現在のところWeb2.0の代表企業の大半はまだまだ未熟なベンチャーだ。物品販売が主とならないWeb2.0では、短期的な収益をもたらすものがないために、結果として企業としての体力が蓄えられずにいるケースが多く、ベンチャー企業のレベルを脱しきれない要因ともなっている。しかし技術生産指向の企業だからといって、Web2.0と縁がないわけではない。先に述べたAmazonのように、ビジネスモデルは一見旧態依然であっても、Web2.0の概念を取り入れることにより躍進した企業は多い。
捉えどころがないようにも見えるWeb2.0だが、実は大きなビジネスチャンスを内包する動きであることもまた明白だ。とはいえ「モノ」を売りたいベンダーとの温度差が、ユーザーまで含めた三者それぞれに対してよい結果を生み出すことを難しくしているのも事実である。
■個人の智恵の総和が信頼情報を生む
書き手の一方的な情報提供であったホームページはブログにとって代わり、書き手と読み手のお互いがその情報のみならず周辺情報までを共有するようになってきた。そして個人の持つ情報が互いに融合するようになることにより、ネットを経由してのマーケティングには大きな変化が訪れると考えられている。
多くのユーザーの有機的な融合がWeb2.0であり、共有される情報が増えるほどに情報発信側の意向は薄れ、智恵の総和による洗練された情報がアウトプットの中心となっていく。ソーシャルネットワーク等も同様だ。一方的に押しつけられる宣伝行為はWeb2.0サービスのなかでは淘汰されやすく、ユーザー側の総合評価こそが重要なコンテンツとなる傾向は強い。しかしこのような状況であるがゆえに有意義なサービスの提供を実現できれば、その企業が大躍進する可能性を秘めているといえ、そしてそのことこそが、Web2.0時代の特徴なのである。
このような状況から、今後課題となっていくと考えられるのは、Web2.0企業の収益構造の確立であろう。順次生み出されるWeb2.0の新サービスをいかに収益に結びつけることができるのか。マイクロソフトはWeb2.0への注力を明らかにした。大手でさえもこのWeb2.0への乗り遅れを憂慮し、表だったものから一般には発表されないものまで、何らかの対策を立てている。これは、かつてたくさんの有望なビジネスモデルを持つ企業があえなく消え去ったインターネット創世期のような状況に近いが、ひとつだけ大きな違いがある。
それはWeb2.0が「オープン」だということだ。プログラムやデータベース、そしてそこに参加するユーザーたちの智恵や技術を自由に取り込めるからこそのWeb2.0である。ブログはWeb2.0の代表的な個人活動のひとつとなった。多くの一般インターネットユーザーは自身のホームページの更新に飽きてしまっていたが、個人のブログはますます増えつつある。
ブログの普及により、ユーザー同士の連携や協調が加速され、求めるものがより入手しやすくなったことや、多くの有益な情報が入手しやすくなったことで、虚偽の情報や低質なコンテンツに行き着く割合が大きく減少した。ウェブがいっそう便利なツールとして認識されてきたことが重要な要因とみられている。
PCの枠を越えて進化する可能性も
“顧客満足”の実現が成否を分ける
■専用ハードウェアも登場か Web2.0は、すでにそのハードウェア・プラットフォームがPCに限られないことも現象として現れてきている。携帯電話やPDAといったウェブブラウザが利用可能な機器はもちろん、今後はWeb2.0を前提とした専用ハードウェアの登場も予測される。
また、アップルのiPodと同社のウェブサービスであるiTMSは新しい形態のビジネスモデルといえ、各種のハードウェアとウェブサービスを有機的に組み合わせたビジネスモデルの出現は今後さらに加速されるだろう。
楽曲をリズムで検索するという新しい概念をネットに持ち込んだ、The Songtapper(www.songtapper.com)などは、MP3プレーヤーを常に携帯するような世代には、登場してしかるべきサービスといえる。
これらを見る限り、Web2.0に手を染める新進企業はそう遠くないうちにきちんとした事業の形を成していくのではないだろうか。良質なサービスの、より一層の充実を期待するためには、企業や個人を問わずWeb2.0にかかわるすべてが重要な要素となり、そしてそのシームレスな環境と考え方こそがWeb2.0の真髄といえるだろう。
【米・ニューヨーク発】このところ、「Web2.0」が大流行だ。この原稿を書いている今、Web2.0の代表企業とされるグーグルで「Web2.0」を検索すると1000万件近くの検索結果が表示される。ここ1年ほどの間に一気に広まった感のある「Web2.0」という言葉だが、日々メディアで取り上げられるほどその意味合いが一般に知られているわけではない。「Web2.0」とは何なのか。そして今後どのような変化をもたらすのか。改めて現状を見つめ直すとともに、今後の展望を見据えてみる。(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
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