その他
住宅金融公庫 情報システムを全面見直し
2005/12/19 14:53
週刊BCN 2005年12月19日vol.1118掲載
住宅金融公庫(島田精一総裁)は、住宅ローン債権管理の情報システムを全面的に見直し、2年後をめどに再構築する。元日本ユニシス社長の島田総裁自らがトップとなって委員会を年明けにも立ち上げ、NTTデータと富士通が開発したメーンフレーム系の現行システムから、オープン系のシステムへの移行を目指す。年間120億円かかっている運用コストを3割以上削減するのが狙い。同公庫では、2007年4月に迫った独立行政法人への移行後、5年以内に単年度黒字化を求められており、情報システムの全面見直しを、人員削減と並ぶ経費削減の柱と位置づけている。
2年後オープン系で再構築
06年政府系76分野でも一斉に刷新
政府は行財政改革の一環として、特殊法人改革を積極的に推進しており、政府系金融機関の整理統合問題に先駆けて、住宅金融公庫の独立行政法人への移行を今年、国会で正式に決めた。07年4月には「住宅金融支援機構」へと移行し、民間金融機関が貸し出す住宅ローン債権の証券化支援を主な業務とする金融機関が誕生する。
独法化第1期中期目標期間(07-11年度)中に、年間3000億―4000億円に達する国からの補助金の廃止と、単年度黒字化が当面の目標になる。黒字化達成のためには、第1期中に常勤職員数で10%以上、一般管理費で15%以上の削減が不可欠となる見通しだ。
公庫の債権管理システムは、望月薫雄前総裁の代でネットワーク化を実現して、ようやく全体の債権を把握できる体制を整えた。システム開発を担当したNTTデータでも「非常に困難な赤字プロジェクトだった」(浜口友一社長)と振り返るほど、かなり無理をしてシステム統合を実現した経緯がある。
今年8月に、初の民間トップとして、三井物産、日本ユニシスと20年以上にわたってIT分野に携わってきた島田総裁が就任。2年後の独法化に向けて業務改善計画などを策定してきたが、現行の情報システムは「例えれば、スパゲッティ状態のように入り組んでいて、このままでは運用コストの削減は難しい」(島田総裁)と全面見直しを決めた。
年明けにも、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)のための委員会を立ち上げ、島田総裁自ら委員長に就任して陣頭指揮を執る。役所では、BPRのためのコンサルティングなどを利用する意識が乏しかったが、「(現在の運用コスト120億円の3割に当たる)年間36億円以上を削減するのだから、コンサルを入れるメリットは十分にある」と説明、一般管理費の削減を確実に進めていく。
政府は、2003年7月に策定した電子政府構築計画で、業務・システムの最適化によって費用対効果の電子政府を構築する方針を打ち出し、システムの見直し作業を進めてきた。04年に業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)が公表され、各府省が最初にレガシー(旧式)システムの刷新可能性調査を実施。05年6月までに府省共通の業務・システム21分野、個別55分野の76分野については見直し方針が策定された。06年3月末には最適化計画の策定が完了し、システム開発が一斉に動き出す。
「これだけの政府系システムが一斉に開発に入って、ITベンダーが仕事を請けきれるのか」(山下徹NTTデータ副社長)と危惧する声も聞かれるほどのシステム開発特需が期待される。しかし、従来と違うのは、政府系システムの多くが、オープン系での構築が計画されている点だ。政府は今回の施策を電子政府の効率化だけでなく、政府調達による産業育成と位置づけており、政府系システムのオープン化で日本のIT産業のレガシー依存体質を転換させ、国際競争力を向上させる狙いがある。
果たして、日本のIT企業が今回の大量政府調達のチャンスを競争力の回復につなげることができるのか。請ける側のIT企業は、優秀なIT人材不足に悩まされている状況だが、このチャンスを逃せば日本のIT産業再生の可能性は遠のいてしまう。発注する各府省や独立行政法人も、島田総裁のようなプロフェッショナルをトップに据えて、効率化と産業育成の両面からシステム開発をリードしていくことが必要だろう。景気回復で民間企業のIT投資も堅調に推移するなかで、日本のIT産業にとって正念場となる2006年が幕を明けることになる。
住宅金融公庫(島田精一総裁)は、住宅ローン債権管理の情報システムを全面的に見直し、2年後をめどに再構築する。元日本ユニシス社長の島田総裁自らがトップとなって委員会を年明けにも立ち上げ、NTTデータと富士通が開発したメーンフレーム系の現行システムから、オープン系のシステムへの移行を目指す。年間120億円かかっている運用コストを3割以上削減するのが狙い。同公庫では、2007年4月に迫った独立行政法人への移行後、5年以内に単年度黒字化を求められており、情報システムの全面見直しを、人員削減と並ぶ経費削減の柱と位置づけている。
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