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2005年を振り返る IT業界国内10大ニュース
2005/12/19 14:53
週刊BCN 2005年12月19日vol.1118掲載
2005年は、個人情報保護法の全面施行を受けて、セキュリティ関連を中心とした企業のIT投資意欲が高まりをみせた。デジタル家電の需要はますます堅調で、景気回復への足どりが一段と強まった。しかし、IT産業のなかでは、ベンダー各社のビジネスに明暗が分かれた年でもある。ソニーはエレクトロニクス事業の復活をかけ経営陣を大幅に刷新。デジタル家電が好調な松下電器産業との対比でも、勝ち組、負け組のコントラストが浮き立った。一方、“世界屈指のIT拠点”を掲げ、都市再開発が進む秋葉原地区がさらに変貌。年末には東京証券取引所のシステムダウンやみずほ証券による株の誤発注など、情報システムのトラブルが大きな社会的混乱を招きかねない事件も起こった。IT業界の1年間を振り返る。
IT景気、堅調に回復
(1)「iPod」独走、シェア7割へ
ソニー“本家”の意地も失地回復ならず
携帯オーディオ市場は、アップルコンピュータiPodの独走状態が加速。BCNランキングによると、今年1月から24.1%で首位を走っていたが、11月には53.7%に躍進。今年1─10月の累計では69.7%に達し、2位のソニー(8.1%)を61.6ポイント引き離して、他社の追随を許さない牙城を築いた。
最盛期66社を数えた参入メーカーは、アップルの圧倒的なシェアの前に対抗を断念、撤退組が相次いだ。今春までシェア2位を獲得していたリオジャパンは9月に撤退、その後NHJ、オリンパスも撤退を表明。
ソニーは4月に投入したフラッシュメモリタイプのネットウォークマンが好調で、一時期はアップルから首位を奪還。携帯オーディオ“本家”の意地を賭けた巻き返しも可能と思われた。しかし、9月にアップルがフラッシュメモリタイプのiPod nanoを発売したことで、形勢はさらに逆転。売れ筋トップ10をアップルが独占、勝敗は決した。
iPodブームを足場にiTunesで音楽配信市場をも席巻したアップルに対し、本家ソニーがなぜ先手を打てなかったのか。ここに日本のデジタル家電産業が抱える課題がある。(田澤理恵)
(2)東証の売買システム、相次ぎトラブル
ITインフラの重要性を再認識するきっかけに
情報システムが、ビジネスや生活に欠かすことのできないインフラであることを最も印象づけた事故が、東京証券取引所の売買システムダウンだ。
11月1日午前6時47分、東証は売買システムの立ち上げ処理中に、システムが正常に動かないことに気づいた。午前9時に株券および転換社債型新株予約権付社債券など全銘柄の売買を停止。午後1時30分に取り引きを開始するまでの約7時間、東証で売買されている全銘柄の取り引きが不可能となった。
売買システムの開発と保守を請け負う富士通と、運用業務を担当する東証コンピュータとの間で、一部のプログラム変更情報が伝わっていなかったという些細なミスが原因だった。
さらに、東証は12月8日に発生したみずほ証券によるジェイコム株の誤発注事故に際しても、注文取消しの指示をシステムの不具合により受け付けられなかった。東証は、信頼失墜という大きなダメージを被る結果となった。
利便性を向上させるための追加投資も大切だが、万一の場合を想定したフェールセーフの重要さを再認識させる事故となった。(木村剛士)
(3)ソニー、復活賭けて経営陣刷新
エレクトロニクス事業の回復に全力注ぐ
ソニーが6月22日付けで大規模な経営陣の刷新を実施した。代表執行役会長兼グループCEOのポストにハワード・ストリンガー氏、代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに中鉢良治氏が就任。出井伸之会長と安藤国威社長の経営体制に終止符を打ったこと、外国人経営者が国内大手電気メーカーのトップに立つことなどで大きな話題を呼んだ。
トップ交代の理由は、エレクトロニクス事業を復活させるため。9月には、中期経営計画を発表。05年度(06年3月期)下期以降、重要分野の意思決定権限をエレクトロニクスCEOに集中する。
90年代に他社に先駆けて採用した社内カンパニー制を廃止、特定製品分野に直結した事業本部制にするなど組織を再編した。
「テレビの復活なくしてソニーの復活なし」(中鉢社長兼エレクトロニクスCEO)とし、エレクトロニクス事業の業績回復に全力を注ぐ。
満を持して薄型テレビの新ブランド「ブラビア」を立ち上げた。07年度の目標として掲げた連結での売上高8兆円、営業利益率5%、エレクトロニクス事業単体での営業利益4%を達成できるかに注目が集まる。(佐相彰彦)
(4)セキュリティ市場が活況
個人情報保護法と相次ぐ被害で需要も急増
今年、情報セキュリティは、IT産業の中核ビジネスといえるまでに成長した。社内内部からの情報漏えいを防ぐソフトへの需要が急増。入退出管理システムの導入や、プライバシーマーク(Pマーク)などの第3者機関による認証取得が急増した。また、ハードディスクを搭載しないシンクライアントが再び脚光を浴びるなど、セキュリティ関連商品が注目を集めた。
市場を盛り上げた要因はいくつかある。今年4月1日に「個人情報保護法」が完全施行。5月には、「価格・com」への不正アクセス事件が発生し、運営会社のカカクコムは、9日間サイトの閉鎖に追い込まれた。企業にとって強固なセキュリティ対策が重要であることを強く印象づけるきっかけとなった。さらに、コンピュータ内の情報を知らぬ間に盗み出す「スパイウェア」、詐欺行為を働くフィッシングサイトによる被害も顕在化した。
個人情報保護法の完全施行で特需を生んだセキュリティだが、ITベンダー各社は「その後もセキュリティに対する関心と需要は根強い」と口を揃える。06年もセキュリティがIT産業の大きなビジネスになるのは確実だ。(木村剛士)
(5)64ビット環境が急速に普及
大手メーカーの対応機種出揃い主流に定着
64ビット版OSは、これまでLinuxだけだったが、5月に、マイクロソフトがx 64版「ウィンドウズサーバー2003x 64エディション」を出荷開始。64ビット環境の普及が加速した。
インテルは、プロセッサ「ジーオン」「アイテニアム」シリーズが、昨年末の出荷ベースで64ビット化率が50%だったが、今年末に100%に達するという。
日本AMDは、4月に投入した「AMDオプテロン」で、従来の資産をそのままに64ビット対応のOSやアプリケーションを導入すれば、64ビット環境に移行できるようにした。同社も05年を「64ビット本格普及の年」と位置づけた。
大手サーバーメーカーは04年半ばから、x64搭載サーバーを出荷。日本IBMとデルは、x64を上位機種のサーバーに展開。他の国産勢でも、年内中に64ビット環境に相次ぎ対応した。
マイクロソフトは「年内にウィンドウズサーバー2003の出荷量の半分がx64版になる」と予測。サーバーOSの64ビット対応化で、業務ソフトウェアベンダーなども、対応製品を出し始めるなど、急速に64ビット環境が企業システムに浸透した。(谷畑良胤)
(6)パソコン市場が堅調に拡大
AV機能の人気で個人需要も低迷脱出に期待
国内パソコン市場が堅調に拡大している。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、05年度上期(05年4-9月)の国内パソコン出荷実績は台数ベースで620万2000台(前年同期比16%増)と過去最高を記録。金額ベースでも7901億円(同6%増)になった。
プラスの要因としては、パソコンを含めた企業のIT投資回復の効果が大きい。個人市場でも購買意欲の高まりを受けて、例年販売が一段落する7月のボーナス商戦以降も、店頭のパソコン売場が活況を呈したためという。
そのため、パソコンメーカーの期待度は大きい。NECは、AV(映像・音響)機能とインターネットを連動させたことで、「AV需要の波を捉えていることに加え、今後はパソコンならではの提案で需要を掘り起こせる」(NECパーソナルプロダクツの片山徹社長)と強気。富士通は、「地上波デジタル放送対応のAVパソコンをラインアップすることで、来年は10%台の成長が期待できる」(山本正己経営執行役)と意気込む。
AVパソコンの人気によって、長く低迷にあえいできた個人市場にも、ようやく成長路線への助走路が見えてきた。(佐相彰彦)
(7)プラズマvs液晶競争激化
1インチ8000円を割り、42型以上でも互角の争い
国内薄型テレビ市場は、今年1─10月の累計出荷台数(JEITA)が、液晶テレビ61.8%増、プラズマテレビ26・5%増と好調に推移した。8月にシャープが65 V型液晶テレビ「アクオス」を投入。プラズマで圧倒的な強さを発揮する松下電器産業の「ビエラ」に攻勢をかけ、液晶対プラズマの主導権争いが激化した。
BCNランキングの11月月次データでは、42型以上の大画面で液晶が46・9%、プラズマが48.4%と戦いに拍車がかかった。
さらに、新ブランド「ブラビア」を掲げて、ソニーがテレビ事業の巻き返しに打って出る一方で、パイオニアがプラズマ生産ラインの縮小に追い込まれるなど、生き残りを賭けた再編が進んだ。
年末商戦では、地デジ放送地域拡大を見据えたハイビジョン製品の価格競争に火がついた。松下は、「手の届く大画面プラズマ!」を掲げ、1インチ1万円を軸に価格を設定、日立製作所も従来比3割以上の価格低減を宣言。店頭実売価格は、42 V型のプラズマが1インチ約8000円台、37 V型液晶は同7000円台(BCNランキング11月)で、1インチ1万円を切り本格普及が進んだ。(田澤理恵)
(8)再開発で変貌進む秋葉原
つくばエクスプレス、ヨドバシ開店で集客力拡大
東京都や千代田区によるJR秋葉原駅前の都市再開発が進み、街が一気に活気づいた。
駅前超高層ビルの「秋葉原ダイビル」が3月31日に稼働したことを手始めに、首都圏新都市鉄道の「つくばエクスプレス」が8月26日に開通、ヨドバシカメラの「マルチメディアAkiba」が9月16日に開店と駅前開発の目玉となるイベントが相次いだ。
秋葉原ダイビル内でのイベントや、同ビルの主要機能である産学連携などにより、IT関連企業の関係者が集まる機会が増えた。つくばエクスプレスは、茨城県つくば市まで延びていることから、秋葉原電気街の商圏が一気に広がったことになる。
ヨドバシカメラのマルチメディアAkibaは、日本最大級の売場面積と品揃えを誇り、休日になるとパソコンや家電を求める家族連れでにぎわう。
秋葉原には、幅広い客層が訪れるようになった。しかも、秋葉原のメインユーザーである“おたく”の来訪が減少しているわけではない。来年3月には、大規模な集客機能が期待される「秋葉原UDX」が竣工。秋葉原地区は、ますます変貌するといえそうだ。(佐相彰彦)
(9)「NEBA」33年の活動に終止符
「家電量販業界再編のなかで役割は終わった」
日本電気大型店協会(NEBA)が05年8月31日に解散した。家電量販業界の主力団体が72年の発足から33年を経て活動に終止符を打つことになった。
解散の理由は、「昨今の家電量販業界の厳しい情勢のなか、合従連衡など再編が次々と起こるなど新しい潮流が出てきている。そのような状況下でNEBAが継続していくことが果たして良いのかを模索した結果、NEBAの役割は終わったという結論に達した」(岡嶋昇一会長)ため。「NEBAが家電量販店間の連携を邪魔していた感もあった」(加藤修一副会長)と総括した。家電量販店各社が協調関係を築くといった新しい枠組みを作るための「発展的解散」(岡嶋会長)だったわけだ。
一方、ヨドバシカメラの東京・秋葉原進出や、来春のヤマダ電機による大阪・なんば地区への大型店舗出店など、マーケットシェア上位の大手家電量販店が駅前や郊外という従来の枠を越えたビジネスを展開しつつある。
NEBA解散で、ショップ間の緩衝材はなくなった。今後は、家電量販店の生き残りをかけた“仁義なき戦い”が一段とヒートアップすることは確実だ。(佐相彰彦)
(10)ブログ活用、企業にも浸透
市場規模は06年に1377億円と経済効果広がる
ブログをビジネスで活用するビジネスブログの認知度が高まり、その潜在的な機能に気づいたインターネット企業、大手IT企業などが本格的にブログ普及促進に向けて動きだした。
導入事例として、商品ブログを立ち上げて消費者の生の声を聞きマーケティングに活用する例や、社内の情報共有を目的としたイントラブログ、口コミ効果の高いブログを利用したアフィリエイトも注目され、ECビジネスの顧客拡大にも寄与した。
今年5月、総務省が「ブログ・SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の現状分析及び将来予測」を発表。ブログ広告やブログソフトウェア、ブログEC販売総額などを含めたブログ関連市場規模が、2006年には04年の約40倍の1377億円に成長すると発表し、ブログ関連ビジネスの経済効果が注目された。
今年2月には、日立製作所が事務局となってイントラブログの技術的向上と普及活動を推進する「イントラブログ・コンソーシアム」が発足し、普及促進に向けて動き出した。そのほか、インターネット関連企業などが主催したビジネスブログ関連セミナーの開催も増えた。(田澤理恵)
IT景気、堅調に回復
各社のビジネスに明暗
(1)「iPod」独走、シェア7割へソニー“本家”の意地も失地回復ならず
携帯オーディオ市場は、アップルコンピュータiPodの独走状態が加速。BCNランキングによると、今年1月から24.1%で首位を走っていたが、11月には53.7%に躍進。今年1─10月の累計では69.7%に達し、2位のソニー(8.1%)を61.6ポイント引き離して、他社の追随を許さない牙城を築いた。
最盛期66社を数えた参入メーカーは、アップルの圧倒的なシェアの前に対抗を断念、撤退組が相次いだ。今春までシェア2位を獲得していたリオジャパンは9月に撤退、その後NHJ、オリンパスも撤退を表明。
ソニーは4月に投入したフラッシュメモリタイプのネットウォークマンが好調で、一時期はアップルから首位を奪還。携帯オーディオ“本家”の意地を賭けた巻き返しも可能と思われた。しかし、9月にアップルがフラッシュメモリタイプのiPod nanoを発売したことで、形勢はさらに逆転。売れ筋トップ10をアップルが独占、勝敗は決した。
iPodブームを足場にiTunesで音楽配信市場をも席巻したアップルに対し、本家ソニーがなぜ先手を打てなかったのか。ここに日本のデジタル家電産業が抱える課題がある。(田澤理恵)
(2)東証の売買システム、相次ぎトラブル
ITインフラの重要性を再認識するきっかけに
情報システムが、ビジネスや生活に欠かすことのできないインフラであることを最も印象づけた事故が、東京証券取引所の売買システムダウンだ。
11月1日午前6時47分、東証は売買システムの立ち上げ処理中に、システムが正常に動かないことに気づいた。午前9時に株券および転換社債型新株予約権付社債券など全銘柄の売買を停止。午後1時30分に取り引きを開始するまでの約7時間、東証で売買されている全銘柄の取り引きが不可能となった。
売買システムの開発と保守を請け負う富士通と、運用業務を担当する東証コンピュータとの間で、一部のプログラム変更情報が伝わっていなかったという些細なミスが原因だった。
さらに、東証は12月8日に発生したみずほ証券によるジェイコム株の誤発注事故に際しても、注文取消しの指示をシステムの不具合により受け付けられなかった。東証は、信頼失墜という大きなダメージを被る結果となった。
利便性を向上させるための追加投資も大切だが、万一の場合を想定したフェールセーフの重要さを再認識させる事故となった。(木村剛士)
(3)ソニー、復活賭けて経営陣刷新
エレクトロニクス事業の回復に全力注ぐ
ソニーが6月22日付けで大規模な経営陣の刷新を実施した。代表執行役会長兼グループCEOのポストにハワード・ストリンガー氏、代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに中鉢良治氏が就任。出井伸之会長と安藤国威社長の経営体制に終止符を打ったこと、外国人経営者が国内大手電気メーカーのトップに立つことなどで大きな話題を呼んだ。
トップ交代の理由は、エレクトロニクス事業を復活させるため。9月には、中期経営計画を発表。05年度(06年3月期)下期以降、重要分野の意思決定権限をエレクトロニクスCEOに集中する。
90年代に他社に先駆けて採用した社内カンパニー制を廃止、特定製品分野に直結した事業本部制にするなど組織を再編した。
「テレビの復活なくしてソニーの復活なし」(中鉢社長兼エレクトロニクスCEO)とし、エレクトロニクス事業の業績回復に全力を注ぐ。
満を持して薄型テレビの新ブランド「ブラビア」を立ち上げた。07年度の目標として掲げた連結での売上高8兆円、営業利益率5%、エレクトロニクス事業単体での営業利益4%を達成できるかに注目が集まる。(佐相彰彦)
(4)セキュリティ市場が活況
個人情報保護法と相次ぐ被害で需要も急増
今年、情報セキュリティは、IT産業の中核ビジネスといえるまでに成長した。社内内部からの情報漏えいを防ぐソフトへの需要が急増。入退出管理システムの導入や、プライバシーマーク(Pマーク)などの第3者機関による認証取得が急増した。また、ハードディスクを搭載しないシンクライアントが再び脚光を浴びるなど、セキュリティ関連商品が注目を集めた。
市場を盛り上げた要因はいくつかある。今年4月1日に「個人情報保護法」が完全施行。5月には、「価格・com」への不正アクセス事件が発生し、運営会社のカカクコムは、9日間サイトの閉鎖に追い込まれた。企業にとって強固なセキュリティ対策が重要であることを強く印象づけるきっかけとなった。さらに、コンピュータ内の情報を知らぬ間に盗み出す「スパイウェア」、詐欺行為を働くフィッシングサイトによる被害も顕在化した。
個人情報保護法の完全施行で特需を生んだセキュリティだが、ITベンダー各社は「その後もセキュリティに対する関心と需要は根強い」と口を揃える。06年もセキュリティがIT産業の大きなビジネスになるのは確実だ。(木村剛士)
(5)64ビット環境が急速に普及
大手メーカーの対応機種出揃い主流に定着
64ビット版OSは、これまでLinuxだけだったが、5月に、マイクロソフトがx 64版「ウィンドウズサーバー2003x 64エディション」を出荷開始。64ビット環境の普及が加速した。
インテルは、プロセッサ「ジーオン」「アイテニアム」シリーズが、昨年末の出荷ベースで64ビット化率が50%だったが、今年末に100%に達するという。
日本AMDは、4月に投入した「AMDオプテロン」で、従来の資産をそのままに64ビット対応のOSやアプリケーションを導入すれば、64ビット環境に移行できるようにした。同社も05年を「64ビット本格普及の年」と位置づけた。
大手サーバーメーカーは04年半ばから、x64搭載サーバーを出荷。日本IBMとデルは、x64を上位機種のサーバーに展開。他の国産勢でも、年内中に64ビット環境に相次ぎ対応した。
マイクロソフトは「年内にウィンドウズサーバー2003の出荷量の半分がx64版になる」と予測。サーバーOSの64ビット対応化で、業務ソフトウェアベンダーなども、対応製品を出し始めるなど、急速に64ビット環境が企業システムに浸透した。(谷畑良胤)
(6)パソコン市場が堅調に拡大
AV機能の人気で個人需要も低迷脱出に期待
国内パソコン市場が堅調に拡大している。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、05年度上期(05年4-9月)の国内パソコン出荷実績は台数ベースで620万2000台(前年同期比16%増)と過去最高を記録。金額ベースでも7901億円(同6%増)になった。
プラスの要因としては、パソコンを含めた企業のIT投資回復の効果が大きい。個人市場でも購買意欲の高まりを受けて、例年販売が一段落する7月のボーナス商戦以降も、店頭のパソコン売場が活況を呈したためという。
そのため、パソコンメーカーの期待度は大きい。NECは、AV(映像・音響)機能とインターネットを連動させたことで、「AV需要の波を捉えていることに加え、今後はパソコンならではの提案で需要を掘り起こせる」(NECパーソナルプロダクツの片山徹社長)と強気。富士通は、「地上波デジタル放送対応のAVパソコンをラインアップすることで、来年は10%台の成長が期待できる」(山本正己経営執行役)と意気込む。
AVパソコンの人気によって、長く低迷にあえいできた個人市場にも、ようやく成長路線への助走路が見えてきた。(佐相彰彦)
(7)プラズマvs液晶競争激化
1インチ8000円を割り、42型以上でも互角の争い
国内薄型テレビ市場は、今年1─10月の累計出荷台数(JEITA)が、液晶テレビ61.8%増、プラズマテレビ26・5%増と好調に推移した。8月にシャープが65 V型液晶テレビ「アクオス」を投入。プラズマで圧倒的な強さを発揮する松下電器産業の「ビエラ」に攻勢をかけ、液晶対プラズマの主導権争いが激化した。
BCNランキングの11月月次データでは、42型以上の大画面で液晶が46・9%、プラズマが48.4%と戦いに拍車がかかった。
さらに、新ブランド「ブラビア」を掲げて、ソニーがテレビ事業の巻き返しに打って出る一方で、パイオニアがプラズマ生産ラインの縮小に追い込まれるなど、生き残りを賭けた再編が進んだ。
年末商戦では、地デジ放送地域拡大を見据えたハイビジョン製品の価格競争に火がついた。松下は、「手の届く大画面プラズマ!」を掲げ、1インチ1万円を軸に価格を設定、日立製作所も従来比3割以上の価格低減を宣言。店頭実売価格は、42 V型のプラズマが1インチ約8000円台、37 V型液晶は同7000円台(BCNランキング11月)で、1インチ1万円を切り本格普及が進んだ。(田澤理恵)
(8)再開発で変貌進む秋葉原
つくばエクスプレス、ヨドバシ開店で集客力拡大
東京都や千代田区によるJR秋葉原駅前の都市再開発が進み、街が一気に活気づいた。
駅前超高層ビルの「秋葉原ダイビル」が3月31日に稼働したことを手始めに、首都圏新都市鉄道の「つくばエクスプレス」が8月26日に開通、ヨドバシカメラの「マルチメディアAkiba」が9月16日に開店と駅前開発の目玉となるイベントが相次いだ。
秋葉原ダイビル内でのイベントや、同ビルの主要機能である産学連携などにより、IT関連企業の関係者が集まる機会が増えた。つくばエクスプレスは、茨城県つくば市まで延びていることから、秋葉原電気街の商圏が一気に広がったことになる。
ヨドバシカメラのマルチメディアAkibaは、日本最大級の売場面積と品揃えを誇り、休日になるとパソコンや家電を求める家族連れでにぎわう。
秋葉原には、幅広い客層が訪れるようになった。しかも、秋葉原のメインユーザーである“おたく”の来訪が減少しているわけではない。来年3月には、大規模な集客機能が期待される「秋葉原UDX」が竣工。秋葉原地区は、ますます変貌するといえそうだ。(佐相彰彦)
(9)「NEBA」33年の活動に終止符
「家電量販業界再編のなかで役割は終わった」
日本電気大型店協会(NEBA)が05年8月31日に解散した。家電量販業界の主力団体が72年の発足から33年を経て活動に終止符を打つことになった。
解散の理由は、「昨今の家電量販業界の厳しい情勢のなか、合従連衡など再編が次々と起こるなど新しい潮流が出てきている。そのような状況下でNEBAが継続していくことが果たして良いのかを模索した結果、NEBAの役割は終わったという結論に達した」(岡嶋昇一会長)ため。「NEBAが家電量販店間の連携を邪魔していた感もあった」(加藤修一副会長)と総括した。家電量販店各社が協調関係を築くといった新しい枠組みを作るための「発展的解散」(岡嶋会長)だったわけだ。
一方、ヨドバシカメラの東京・秋葉原進出や、来春のヤマダ電機による大阪・なんば地区への大型店舗出店など、マーケットシェア上位の大手家電量販店が駅前や郊外という従来の枠を越えたビジネスを展開しつつある。
NEBA解散で、ショップ間の緩衝材はなくなった。今後は、家電量販店の生き残りをかけた“仁義なき戦い”が一段とヒートアップすることは確実だ。(佐相彰彦)
(10)ブログ活用、企業にも浸透
市場規模は06年に1377億円と経済効果広がる
ブログをビジネスで活用するビジネスブログの認知度が高まり、その潜在的な機能に気づいたインターネット企業、大手IT企業などが本格的にブログ普及促進に向けて動きだした。
導入事例として、商品ブログを立ち上げて消費者の生の声を聞きマーケティングに活用する例や、社内の情報共有を目的としたイントラブログ、口コミ効果の高いブログを利用したアフィリエイトも注目され、ECビジネスの顧客拡大にも寄与した。
今年5月、総務省が「ブログ・SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の現状分析及び将来予測」を発表。ブログ広告やブログソフトウェア、ブログEC販売総額などを含めたブログ関連市場規模が、2006年には04年の約40倍の1377億円に成長すると発表し、ブログ関連ビジネスの経済効果が注目された。
今年2月には、日立製作所が事務局となってイントラブログの技術的向上と普及活動を推進する「イントラブログ・コンソーシアム」が発足し、普及促進に向けて動き出した。そのほか、インターネット関連企業などが主催したビジネスブログ関連セミナーの開催も増えた。(田澤理恵)
2005年は、個人情報保護法の全面施行を受けて、セキュリティ関連を中心とした企業のIT投資意欲が高まりをみせた。デジタル家電の需要はますます堅調で、景気回復への足どりが一段と強まった。しかし、IT産業のなかでは、ベンダー各社のビジネスに明暗が分かれた年でもある。ソニーはエレクトロニクス事業の復活をかけ経営陣を大幅に刷新。デジタル家電が好調な松下電器産業との対比でも、勝ち組、負け組のコントラストが浮き立った。一方、“世界屈指のIT拠点”を掲げ、都市再開発が進む秋葉原地区がさらに変貌。年末には東京証券取引所のシステムダウンやみずほ証券による株の誤発注など、情報システムのトラブルが大きな社会的混乱を招きかねない事件も起こった。IT業界の1年間を振り返る。
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