米オラクル、「オープンワールド」開催
カリフォルニア州で最大規模のITイベント
米オラクルは、9月19日から22日までの4日間、米サンフランシスコで「オラクルオープンワールド」を開催した。今回は、ピープルソフトと統合後初めてのイベントで、過去最大規模となった。今回のテーマは、「オラクルフュージョンミドルウェア(OFM)」、「オラクルアプリケーションズ」、「オラクルデータベースとグリッドテクノロジーズ」の3つ。なかでも、OFMがオラクルの戦略の最大のキーワードであることが公表された。(田澤理恵●取材/文)
■“オープンでスタンダード”をアピール OFMへの継続的な投資を表明 米オラクルは、オラクルオープンワールド開催中の19日、既存のアプリケーションを保護し、企業システムを連携させるオラクルの新ミドルウェア基盤であるOFMに、「ホット・プラガブル」機能を提供すると発表した。
ホット・プラガブルは、異種混合システムを互いに接続・拡張する機能で、標準技術に対応することで「簡単にアップグレードやメンテナンスができる」ようにするほか、「顧客に選択肢を与えたい」というオラクルのメッセージが込められている。
基調講演でもOFMが重要な位置づけであることをラリー・エリソンCEOをはじめとしてオラクル首脳陣が強調しており、OFMが今年最大のテーマであることを表していた。「ミドルウェアの売上高は、前年比22%増で成長している」(トーマス・クリアン・サーバー技術担当上級副社長)と自信を示すなど、今後もOFMに投資を続けて強化していく意向を明確にした。
エリソンCEOの基調講演でも、「(OFMが)既存のアプリケーションを保護し、将来の拡張についても選択できる」ことや、オープンかつスタンダードな柔軟性を前面にアピールした。OFMにより、顧客が既存のシステムに満足していれば、変える必要はないことや、既存システムの資産を生かすなど、SOA(サービス指向アーキテクチャ)による相互運用性を推進するためにもOFMを強化していく考えだ。
今回の基調講演でエリソンCEOは、アプリケーションを連携させるOFMに加え、今後の課題として、IBMの「DB2」などオラクル以外のデータベースに対応する検討をしていることも明らかにした。
アプリケーションの今後の方針について、ジョン・ウーキー・アプリケーション開発担当上級副社長は、ピープルソフトとの統合が完了し、ピープルソフトおよびJ.D.エドワーズ製品のユーザーに対して、各製品のバージョンアップにともなうアップグレードについては、「強制せずに、顧客のタイミングに合わせてアップグレードできるようにする」という考えを示した。顧客の情報システムのライフタイムに合わせたサポートポリシーを強調し、顧客のメリットを損なわないことをアピールしたわけだ。
■シーベル買収は「パーフェクトなタイミング」北米市場でCRMのナンバーワン企業に エリソンCEOの基調講演でも、ピープルソフト、J.D.エドワーズ製品などのM&A(企業の合併・買収)によりオラクルのラインアップとなったアプリケーションのユーザーから、「オラクルのアプリケーションにいずれはマイグレーションされるのではないか」という懸念の声があったことを挙げたうえで、「顧客が既存のシステムに満足していれば変える必要がなく、これまでの資産を生かしてシステムを自由に選べる」環境を提供できることを明確にした。OFMの強化は、そのための手段でもあるわけだ。
来年初めにも買収が完了する予定のシーベルについては、アプリケーションを統合する流れのなかで、次世代製品につなげるためにも、今回のシーベルの買収は「パーフェクトなタイミング」(チャールズ・フィリップス社長)とした上で、顧客のためにも統合を進めたいと語った。フィリップス社長は、シーベル買収により、オラクルがCRM(顧客情報管理)で北米市場ナンバーワンを目指すと、その意気込みを熱っぽく語った。
これに応えて、シーベルのジョージ・シャヒーンCEOも、今回の買収について顧客に伝えた反応が「ポジティブだった」ことを明かし、顧客は既存の投資を継続できるほか、サポートが保護されることから、OFMに対応していくことは、「シーベルの顧客にとっても良いことだ」と受け止めている。
今回のオラクルオープンワールドは、カリフォルニア州で開催されるITイベントとしても過去最大規模となるほどの大盛況だった。ピープルソフトとの統合後、サポート組織を強化した結果、「ユーザーの顧客満足度が向上している」ことをアピール。来年初めに予定されるシーベル買収についても、これまで行ってきたM&Aと同じく、「顧客に価値を提供していくための戦略」(フィリップス社長)であることを強調した。顧客に提供する価値を高めるために、既存のアプリケーションを柔軟に連携させるOFMをキーワードとした戦略を推進することがはっきりした。
 | オラクルフュージョンミドルウェア(OFM) | | | | OFMは、データベースと業務アプリケーションの中間にある統合されたソフトウェア群。データ統合、プロセス統合、セキュリティ統合、データ可視化など、オープンかつスタンダードな技術で異種混合のエンタープライズ環境を統合する。 OFM構成製品は、主要コンポーネント「オラクルアプリケーションサーバー10g」と、「アイデンティティーマネジメント」や「ビジネスインテリ |  | ジェンス(BI)」、「BPELプロセスマネジャー」といったオプション群、「データハブ」、「コラボレーションスイート」といったオラクルのコンテンツ管理、コラボレーションサービスなどが含まれる。 今年4月に米オラクルがOFMを発表し、日本オラクルでは、OFMのコンポーネント「オラクルBPELプロセスマネジャー」を7月25日から販売開始。9月21日からは、「オラクルコラボレーションスイート10g」の販売も開始している。 | | |