ベンチャー企業が開発したソフトウェアの普及に情報処理推進機構（IPA、藤原武平太理事長）が動き出した。手始めに開発支援事業により商品化したソフトの製品説明会を、ディストリビュータやシステムインテグレータ（SI）などを会員に持つ日本コンピュータシステム販売店協会（JCSSA、梅哲雄会長）向けに実施した。特別行政法人であるIPAが、ソフトを売り込むためにセミナーを行ったのは今回が初めて。JCSSAも、大きなビジネスチャンスにつながることを期待している。（佐相彰彦●取材／文）

大きなビジネスチャンスに期待

■10社のソフトウェアを紹介

　9月7日、東京・秋葉原ダイビルの産学連携会議室で、IPAはJCSSAの会員向けに製品説明会を行った。セミナーでは、IPAの開発支援事業の対象となっているベンチャーや中小企業のうち10社の製品を披露。参加した各社とも、自社開発のソフトウェアを売り込もうと製品の強みや差別化ポイントなどをアピールした。冒頭では藤原IPA理事長が、「ソフトは開発しただけでは意味がない。開発したソフトを広く市場に普及させることを目的に説明会を開催した」と述べたうえで、「各製品の説明を聞き、『このソフトだったら売ってもいい』ということであれば、この場で商談を行うスペースも用意している。是非、JCSSAの会員に拡販してもらいたい」と、単刀直入にセミナー開催の主旨を訴えた。

　IPAでは、ソフト開発の支援プログラムとして、中堅・中小企業などを対象に「IT利活用促進ソフトウェア開発事業」や「中小ITベンチャー支援事業」、学生など個人向けに「未踏ソフトウェア創造事業」などを行っている。1年間で支援する平均件数は、IT利活用ソフトウェア開発事業で11－12件、中小ITベンチャー支援事業で10件、未踏ソフトウェア創造事業で40－50件に上っており、投資額は毎年度60億円程度で推移している。支援した開発ソフトのなかには市場に出回った製品もあるものの、「大半が拡販でつまずく」（藤原IPA理事長）ことに嘆息しており、「投資するからには、できるだけ多くのソフトを市場に普及させることが使命」と力説する。加えて、「ビジネスマッチングを実現させたい」（同）との意向から、セミナーの開催に踏み切った。

■業界団体間の新しい連携

　説明会には約30社のJCSSA会員が参加した。松波道廣・JCSSA専務理事は、「新しいソリューションの可能性を見つけ出すために会員企業に参加を促した」と、会員企業が売り込める新しいソフトウェアを本格的に見つけ出すことに今回のセミナーが一役買うのではと期待を寄せる。藤原IPA理事長は、「1回目で手探りではあったが、予想以上の参加があったといえる」と、幸先の良いスタートを切れたことに自信をみせる。

　今回、IPAがJCSSAに説明会の話を持ちかけたのは、IPAのIT利活用促進ソフトウェア開発事業で、ソフトの商品化に向けた専門委員にJCSSA会員から5社が参加していることが背景にある。IPAでは、「今回のセミナーでJCSSAの会員企業とのビジネスマッチングを実現し、第2回、第3回と今後も続けていきたい」（藤原IPA理事長）考えを示している。JCSSAでも、「当協会の会員企業にとっても、ソリューションを提供するための最適なソフトを見つける場になる可能性がある」（松波JCSSA専務理事）と期待する。

　セミナーをきっかけに、IPAが新しいソフトを創出するために開発支援事業を手がけ、そのソフトをJCSSAの会員企業が拡販するというサイクルを構築し、JCSSA会員企業とIPAから支援を受ける企業双方のビジネス拡大につながれば、新しい連携として注目を集めることになる。