大塚商会など9社が結集
アパレル産業向けにソリューション提供
大塚商会(大塚裕司社長)をはじめとしたIT関連企業9社によるアパレル産業向けプロジェクト「ACTプロジェクト」が本格的に動き始めた。すでにACTプロジェクトの成果につながりそうな引き合いも出ており、実需の拡大も期待できそうだ。低価格の中国製品や大手アパレルチェーンに押されがちな中堅・中小クラスのアパレル関連企業にとって、経営効率化と競争力アップのために情報武装は不可欠。ACTプロジェクトによりワンストップソリューションが実現する。(山本雅則(大阪駐在)●取材/文)
■生産・仕入れから店舗運営までカバー「数件の商談が進んでいる」 ACTプロジェクトは、生産から仕入れ、マーケティング、物流、販売、店舗計画や運営など、アパレル産業に不可欠な一連の情報システムをワンストップで提供することを目的としている。これまで、中堅・中小向けにそれぞれのシステムを個別に提供するソリューションやパッケージはある。しかし、経営・流通改革には情報連携が不可欠になっており、従来型システムの更新を求めるニーズが増えているという。
岸本洋一・大塚商会マーケティング本部インダストリープロモーション部課長は、「問題点はわかっている、という顧客は多い。だが、そこを効果的に解決するソリューションがあることがわからないケースがあった。大きな投資ができず、情報化が停滞している企業もある」とし、「各社の得意技を持ち寄って、そうした企業にソリューションを提供していくことが必要だ」と語る。
アパレル産業に関わる企業にとっては、生産管理であったりCRM(顧客情報管理)であったり、SFA(営業支援)システム、在庫管理、受発注予測など必要とする情報システムの幅は広い。また、企業経営という点からはERP(統合基幹業務システム)を求める企業も少なくない。さらに、SPA(製造小売業)にとっては、すべてを包括するソリューションが必要になる。9社それぞれでは部分的にしか顧客の要望に応えられないが、連携することで、よりユーザーニーズにきめ細かく応えられるようになるわけだ。
「顧客の要望に、自社で応えられなくてもACTプロジェクトの参加企業ですべて解決できる」(岸本課長)というのが9社プロジェクトの狙いであり、現実にお互いの商談の中で、ACTプロジェクトで解決可能なケースも出ているという。
このため、単独の商談であっても、ACTプロジェクトの出番となる案件は多そうだ。発足以来、アパレル産業の中でもACTプロジェクトに対する期待は高まっているという。現段階では「数件の商談が進んでいる」(同)としており、大塚商会単独だけではなくPOS(販売時点情報管理)や仕入れ・在庫管理、コンサルティングなど幅広い業務で、ACTプロジェクトを活用する機会が増えそうだという。
■8月に大阪でセミナー開催「繊維の町」でIT化推進 8月26日、ACTプロジェクト主催の「ソリューションセミナーin大阪」が、大阪市中央区のOMM(大阪マーチャンダイズ・マート)ビルで開かれた。ACTプロジェクト参加9社が、業務系、ウェブ系、インフラ系、実務系の各ソリューションを紹介する展示会とセミナーで構成され、新たなビジネスモデルの構築を指向する参加者で賑わった。
セミナーでは、ウェブ系・実務系のソリューションを提供するアパレルウェブの千金楽健司社長が「業務の課題はITで解決!!」をテーマに講演した。バブル崩壊や円高にともなう輸入増加の影響から国内アパレル市場の規模がシュリンクしているなかで、「川上(繊維・テキスタイル)」、「川中(アパレルメーカー・卸)」、「川下(小売)」という従来型の区分が時代に適合しなくなってきている状況を分析。「OEM(相手先ブランドによる生産)依存型」から脱OEMに、すなわち「SPA型」に移行し、収益性を高めていく動きが強まっていることを指摘した。そのうえで、企業や業態により方向性は異なるものの、脱OEMにはブランディングやITの活用、アジア圏でのビジネスマッチングなどが必要とした。
実際、アパレルウェブのクライアント企業の半分がSPA指向を有しており、さらにその半分がITなどの活用で経常利益率5%以上というように体質改善が進んでいることを例示。市場が縮小するなかであっても、ビジネスモデル次第でアパレル業は収益性を高められるとの見方を示した。
Q&Aセッションを通じ、セミナーに参加したアパレル企業からは、ITへの取り組みは行っているものの、十分に活用しておらず、収益につなげられていない実態なども浮かび上がってきた。
千金楽社長は、東京に比べ関西のアパレル産業のIT活用は遅れているものの、「意識変化は起きつつあり、業界における関西系企業のプレゼンスは小さくなく、重要な地域」との認識を示した。アパレルウェブの大阪営業所を取り仕切る東幹也氏も、「東京では新興企業が中心になって、うまくSPA型で事業を動かすようになっている。関西の場合、老舗企業が多く、取り組み方について迷っている場合もあるが、老舗であるだけに経営資源も豊富で、収益性向上の余地は大きい」という。また、大阪の堀江や神戸などの新興企業は、規模こそ小さいものの、意識が高く、ACTプロジェクトのような動きに対して敏感に反応する兆しも出てきている。
大塚商会の関西システムプロモーション部インダストリープロモーション課では、「ACTプロジェクトを通じ、アパレル業界に対し、ワンストップでソリューションを提供できる体制ができたことが何よりの強み。これを生かして競合社より優位に立ち、アパレル業界への取り組みを強化していきたい」としている。
アパレル業界の経営・流通革新ニーズに対応して、参加企業各社もACTプロジェクトとしてのビジネス浸透に力を入れていく考えだ。大塚商会は9月15、16の両日、東京・飯田橋の本社および本社に近いホテルメトロポリタンエドモントで「ビジネスソリューションフェア2005」を開催する。その展示会でも、ACTプロジェクトとして参加企業9社を集めた展示スペースを設ける予定になっている。
 | ACTプロジェクト | | | | | | 企業間プロジェクトである「ACTプロジェクト」は、大塚商会、アパレルウェブ、オリンパスシステムズ、東芝テックなど当初10社で今年5月に発足。これまでに2社が抜けて、新たに1社が加わり、現在は9社体制。中堅からそれ以下のクラスのアパレル企業向けに、業界共通の課題解決法として、システムソリューションを提供することを |  | 目的にしている。 アパレル産業では、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなど大手企業を除き、中堅や中小のメーカー、販売チェーンなどでの情報化が遅れているのが実情。価格競争や大手販売チェーンなどに対抗するには、旧弊で独特な商習慣を打破し、情報システムによる生産から流通に至る経営全般の改革が不可欠となっている。 | | |