NEC(金杉明信社長)は、オフコン時代から、NECグループ内の営業部隊や系列販社などによるシステムインテグレーション(SI)を通じたソフトウェア販売(「プッシュ型」)に定評があった。ところが、「オープン系システムの時代に入り、外資系や国内のソフトベンダーとも競争することになった」(岡田高行・システムソフトウェア事業本部長)が、主力はプッシュ型のままであった。
この時代においては、「エンドユーザーや取次ぎの販社がどういう基準でソフトを選択するのか、という視点が重要」(岡田事業本部長)と、顧客や販社がNECのソフトを選択するまでの意思決定に着眼した改革の必要性に気づく。そこで、エンドユーザーへの認知度向上と「特約店」やその先にある2次店、3次店から、「NECのソフトを購入したい、あるいは推奨したい」との「プル型」のオファーをもらうため、ここへきてさまざまな施策を相次ぎ打ち出している。
今年度は主力ソフト事業を40%伸ばす
今年に入り、NECが13の「販売注力製品」を設定して、マイクロソフトなどと共同でセミナーを開始したのもその一環だ。このセミナーのターゲットは、「エンドユーザーはもとより、これまであまり直接的にリーチしてこなかった2次店、3次店」(池田秀一・システムソフトウェア事業本部ブランドマーケティング・マネージャー)と、狙いは明確だ。
NECは、IAサーバーなどハードウェアに関する磐石なパートナー制度をもつ。一方、ソフトでは、主力のクラスタ製品「CLUSTERPRO(クラスタプロ)」など、各ソフト単位で制度が確立されているが、ソフト事業全体としての制度としてさらにレベルアップをする余地がある。このため、ハードチャネルを含めたソフト販売のパートナー制度を「統合・再構築」、技術提携を含めたISV(独立系ソフトベンダー)や中堅SIの勧誘を本格化していく。
現在でも、ソフト販売に関する技術情報を提供する制度はある。だが、NECでは、「技術サポートやスキル移行などの制度が有償か無償かの区別がわかりにくい」(池田マネージャー)。一般的に、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)や外資系ミドルウェアベンダーには、ライセンスや年間保守に関する料金優待、技術コンサルティングがパートナー制度に必ず明記されている。しかし、「当社では、有償化する価値のある技術コンサルティング・サービスが多くある」(池田マネージャー)ことから、「サービスの価値化」と呼ぶ、NECの技術力をエンドユーザーや販社へ有償・無償を明確にして提供することを検討している。
岡田事業本部長は、「オープンソースソフト(OSS)の技術サポートを本格的に展開しているのはNECだけ。他より高度な技術力を提供して、競合ソフトベンダーのパートナー制度と差別化を図る。また、外資系ミドルウェアベンダーは地方に弱い。当社は、支社が主要拠点にある」と、数的優位をソフト事業に傾ける方針だ。
NECは目標として、今年度(2006年3月期)の主力ソフト事業を「前年度比40%増やす」としている。池田マネージャーは、「特に注力する自社製ソフト群においては、『50%増』という数字がトップの指示と受け止めている」と、目標値はかなり高い。
システムソフトウェア事業本部には昨年から、「NECプロパー」ではない中途入社した“新しい血”が多く注ぎ込まれた。こうした血から得たノウハウを基に、NECのソフト戦略は大きく変わろうとしている。(企画編集取材班)
