日本情報取引所(JIET、二川秀昭理事長)の東海本部は、今年で設立5周年を迎える。今年4月には、「静岡支部」を立ち上げた。愛知、岐阜、三重の3県を担当する「東海支部」を加え、JIETの地区本部では唯一、複数支部を抱えている。東海4県は、トヨタ自動車などの好業績を背景に、全国で最も好景気に沸く地域だ。東海本部からは今年会員2社が株式上場を果たした。「早い時間に『1県1支部制』を実現する」という清川茂満・東海本部長に活動方針などを聞いた。
――東海本部を立ち上げる推進力になったのが、清川・東海本部長だと聞いていますが。
清川 私が社長を務めるセントラルソフトサービス(CSS、本社・愛知県岡崎市)が、東京事業所を設立した2000年当時、当社の営業窓口の1つとしてJIETの東京本部に事業所単位で加盟してから、JIETとの関わりが始まりました。同事業所は、NTT関連を主にIT人材派遣型のビジネスをしていましたが、名古屋地区でも派遣型の事業を展開しようと、CSSとして全社的にJIETへ入りました。
00年の8月には、名古屋に本社を置くR&Dアウトソーシング会社、日本テクシードの森本一臣社長(前東海支部長)らとともに、愛知県に本拠を置くソフトベンダーなど16社と東海支部を設立し、今年5周年を迎えています。
――JIETは4月、本部制を敷きました。東海本部は、これを機に、「静岡支部」を新設して、全国で唯一、2支部を抱えることになりましたね。 清川 東海本部は、愛知、岐阜、三重の3県を担当する「東海支部」と、4月5日付で新設した「静岡支部」の1本部2支部体制を敷いています。JIETでは現在、「1県1支部制」に向けて活動を強化していますが、この方針に基づき、東海本部でも今年中にまず「岐阜支部」を新設したいと考えています。
東海本部がカバーする地域は東海4県ですが、名古屋を中心にビジネス面で繋がりが深いという地域特性があります。そのため、1都府県で1拠点体制であるJIETの他の本部・支部と違い、4県が1つの“広域経済圏”という認識で、ビジネス上のまとまりがあります。
「1県1支部制」は、各会員のビジネスに好影響を及ぼすほか、各地域経済への貢献など意義のあることだと感じています。東海本部は“広域経済圏”でまとまりがあり、「1県1支部制」を敷きやすい環境にあるといえます。
――「商談会」は、どのような単位で実施しているのですか。 清川 東海本部の「商談会」は、基本的に支部単位で実施しています。だが、各県の経済的なつながりが深く、各支部の「商談会」に別の県下から参加する会員は多いです。こうした東海地区全体での活動に加え、各支部の活動で地域密着型の貢献をしているのが特徴です。
――東海本部の会員数は、東海4県の規模からすると、まだ少ないようですが。 清川 先にも申し上げた通り、「岐阜支部」を今年中に設立する計画ですが、そこまでがある意味、実質的な基盤づくりの時期と考えています。現時点ではJIET本来の目的である発注側と受注側のマッチング率を高めるには、会員数(現在、66社)が若干まだ足りません。運営面の予算も考慮すると、あと30社は不足しています。しかし、「岐阜支部」設立によってこの部分は解決できると考えています。
会員を増やすのは、なかなか難しいものです。ですが、5周年の基盤づくりのあと、活動のサービスを会員の要望に応え拡充していきます。まずは、ベンダーのビジネスに直接好影響を与えることが重要でしょう。東海地区は、トヨタ自動車の好業績などを背景に、ITベンダーが仕事を獲得する上で恵まれた環境が整っています。IT人材の派遣だけでなく、システムの受託開発など、業績に直接跳ね返るビジネスに直結した案件を効率良く会員に提供できるかが課題です。
――東海地区は、トヨタの好業績や中部国際空港の開港など、景気が活気づいているといわれる地域ですが。 清川 確かに、その好景気が各会員の業績拡大に寄与しています。今年2月に日本テクシード(ジャスダック)、6月にもシステムリサーチ(同)の会員2社が相次ぎ株式を上場しました。会員の中には、まだまだ上場できそうなベンダーが多くあるなど、各会員が好景気を背景に成長しています。
日本テクシードは、エンジニアリングや基幹システム設計で成長しました。同社は恐らく、JIETの「商談会」をうまく活用して、IT人材を獲得し、ビジネスを伸ばした部分もあると思われます。システムリサーチも同様に、ソフト開発中心ですが、東京、大阪を含め、全国のJIET会員からIT人材を確保して、業績を伸ばしてきたところがあるのではないでしょうか。
――清川本部長が社長を務めるセントラルソフトサービスの業績は、どうですか。 清川 当社は岡崎市に本社があり、同市内でのビジネスに注力しています。当社は、市の「情報ネットワークセンター」の業務を受託して、8人のSE(システムエンジニア)が常駐して、市を支援しています。
また、トヨタの「かんばん方式」による部品物流の受発注システム「COPS(コップス)」を持っていますが、その中の一部モジュールが全国にあるトヨタの部品物流拠点の半数に導入されています。「かんばん方式」は、大手電機メーカーなど、製造業で多く採用されていますので、当社製品がトヨタ以外に導入される可能性は高いでしょう。そういう意味で、トヨタの恩恵を大きく受けています。
――“トヨタ景気”に沸く愛知県以外の東海本部下で「1県1支部制」を敷くには、いくつか課題があるように思いますが。 清川 東海4県のうち、静岡県は浜松市と静岡市で商圏が違います。静岡市は神奈川県など首都圏に目が向いている傾向があります。JIETでは静岡支部ができる前は、浜松市で「ミニ商談会」を実施していたために浜松市内の会員が多く、「商談会」開催の場所を工夫する必要があるでしょう。
岐阜県では、同県の「情報サービス産業協会」などに協力を働きかけ、8月には改めてJIETの紹介を兼ねた「商談会」を現地で開きます。
一方、三重県は、ソフトベンダーが少ないのが実情です。しかし、シャープなど大手電機の工場が多く、ビジネスチャンスは転がっています。こうしたメーカーの電算部門に入会を呼びかける活動をしていき、メーカーの案件を東海地区の他地域にあるベンダーが受託する方法などを模索したいと思います。
【PROFILE】
1950年、愛知県豊田市生まれ、54歳。74年、法政大学文学部英文科卒。同年、電動工具メーカー、マキタの第1外注先である日比野工業に入社し、総務部門を担当。入社1年後に同社がコンピュータを導入し、電算室の担当になる。79年5月、29歳で高校時代の同期生とオフコンと汎用機のシステムを受託開発する現在のセントラルソフトサービスを設立して、社長に就任。同社は設立5年目で日本IBMのビジネスパートナーになった。04年4月、前任者からJIET東海支部長を引き継ぎ、本年4月に東海本部長に就任。現在、社団法人愛知県情報サービス産業協会理事及び岡崎商工会議所議員などを兼務。