既存システムの付加価値商材で売込み
インターネットは第2ステージへ
インターネットユーザーに一気に広がったブログを、ビジネスで活用しようとする動きが拡大している。企業でのナレッジマネジメントや情報共有など、アイデア次第で応用が利くツールとしてニーズが高まっている。総務省はブログ関連市場が2006年度には04年度の40倍の1377億円になると予測。ブログをキーワードにインターネットビジネスに弾みがつきそうだ。(田澤理恵●取材/文)
■企業のイントラネットをブログで、グループウェアとの連携も 国内でのブログは、ニフティが「2003年12月に一般層にブログを広げる」(ソーシャルシステム部の清田一郎氏)ことを目的に米シックス・アパートのブログサービス「タイプパッド」をカスタマイズし「ココログ」を開始したのが嚆矢。その後、NTTコミュニケーションズ「ブログ人」など大手ISP(インターネットサービスプロバイダ)が相次いで個人ユーザーにブログサービスを開始し、広がり始めた。また、個人ユーザーへ浸透していくだけでなく、ビジネスでのブログ活用にも関心が集まり始めた。
日立製作所は昨年5月、シックス・アパートの「タイプパッド」のOEM供給を受け、法人向けに「BOXERBROG powered by Type Pad(BOXERブログ)」の販売を開始した。その後、企業内のイントラネットをブログベースで構築するサービス「BOXERイントラブログ」を開始したほか、サーバーソフトを順次増やすなどブログニーズの開拓に力を入れている。企業向けのブログ構築は、「企業が情報システムを導入する際にブログをプラスする」(松澤茂・ブロードバンドサービス本部コラボレーションウェア設計部BOXER事業担当部長)というニーズが高い。需要が拡大してきていることから、「現在はほとんどが直販だが、パートナー戦略にも力を入れていく」方針だ。ブログはシステム構築と合わせた付加価値商材として、「今後は、大手ITベンダーが参入してくる可能性も高いだろう」(松澤部長)という。
イーストは、ブログとSNS(ソーシャルネットワークサービス)を組み合わせたシステム「ビズパル」と、ビズパルに電子公証機能を付加した「サイネストラボノート」を独自開発。「一般企業でのナレッジマネジメントなどに絡んだブログやSNSのコミュニケーションサービスが拡大していく」(下川和男・専務取締役)ことを確信し、販売強化を図っている。
各社の担当者によれば、ブログはグループウェアなど既存システムとの連携も想定できることから、アイデア次第でビジネスのなかで多様な使われ方をしていくだろうという声が多い。ブログサービスを提供しているドリコム関係者は、「既存システムが補完できない部分の新価値を生み出していく可能性が高い」と話す。
■関連市場は06年度に1300億円超、新たなコミュニケーション手段に 今年5月に総務省が発表した「ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の現状分析および将来予測」によると、05年3月時点の国内ブログ利用者数は延べ約335万人で、閲覧者数は1651万人程度に達した。2年後の07年にはそれぞれ約2倍に拡大すると予測している。
ブロードバンドが普及し、人々がインターネットに費やす時間が増えたことを背景に、EC(電子商取引)市場やネット販売、ブログの拡大など、一段とインターネット市場が活気づいてくることになるだろう。総務省の予測によれば、ブログ関連市場は06年度には04年度の40.5倍の1377億円になるとされていることから、「インターネットの第2ステージ」(ニフティ)としてビジネスを創出するチャンスと見ている企業も多いようだ。
NTTコミュニケーションズでは、「ブログの拡大がホスティングサーバービジネスの伸長に貢献している」(ブロードバンドIP事業部グローバルホスティングサービスの永尾徳隆氏)という。ニフティも今年3月から中堅・中小企業(SMB)向けに、専用ホスティングサービスの追加機能としてシックス・アパートの「ムーバブルタイプ」とコンサルティングを合わせた販売活動を開始している。
「ウェブサイトは一方通行。電子メールは限定的なつながりだった」(シックス・アパートの平田大治・技術担当執行役員)のに対し、ブログは個人への普及にともなって、双方向で参加しやすいイメージが確立されつつある。この参加しやすい特性を生かして、プロジェクトごとにブログを立ち上げれば、意見交換のツールとして使え、そしてナレッジマネジメントの面からも効果を生むことになる。
また、ブログに情報を蓄積しておき、アーカイブされた情報を容易に検索できる機能を使って共有価値の高い情報を作ることもできるという。つまりこれまでのウェブサイトの文化とは違った、企業の内外でのコミュニケーション手段ができ、それが新しい価値を生み出すことにつながるというわけだ。
 | 2月にコンソーシアム発足 | | | | | ブログソフト大手のシックス・アパートは、ブログツール「ムーバブルタイプ」と、統合ブログサービス「タイプパッド」を提供している。ニフティの「ココログ」、NTTコミュニケーションズの「ブログ人」、日立製作所の「BOXERブログ」などがこれを利用している。現在のパートナー企業は64社(6月21現在)。ドリコムは、2004年9月に独自開発の社内ブログツール「ドリコムオフィス」を販売開始しており、独自開発のブログシステムをGMOインターネットの「ヤプログ!」にOEM提供している。 現在、企業のブログは、流行している「社長ブログ」のような広報サイトやEC(電子商取引)などが挙げられ、ブログを利用している企業は多い。また、教育分野では父兄の連絡などにも |  | 利用されていることから、今後は、リテラシー教育、暗記以外の学習など、「新しい教育のスタイルに広がっていく」(シックス・アパートの平田大治・技術担当執行役員)ことも想定できる。 ビジネスでの活用に注目が集まるなか、今年2月に、日立製作所、シックス・アパート、ドリコム、ネットエイジの4社が共同で「イントラブログ・コンソーシアム」を発足させた。6月に開催した第2回の事例紹介を中心としたセミナーには95人が参加。自社のビジネスにどのように利用したらいいのかという企業も含め、ビジネスにブログを活用しようという前向きなニーズが高まりつつある。このセミナーは、今後も定期的に開催される予定になっている。 | | |