その他
大手パソコンメーカー、直販サイト強化 EC市場拡大が追い風に
2005/05/23 15:00
週刊BCN 2005年05月23日vol.1089掲載
大手パソコンメーカーが直販サイトの強化に乗り出した。各社が昨夏から今年にかけて、ウェブ直販サイトをリニューアルするなど、ライバルとの差別化を図るための戦略を打ち出している。ネット直販は、ショップやパートナーからの反感を招きかねないビジネスモデルとして遠慮していた部分もあったが、電子商取引(EC)市場拡大が追い風となり、個人消費者向けの店頭販売とのすみ分けが明確化になってきたことで流れが変わった。今では、パートナーとの連携に相乗効果を生むケースも出てきている。(田澤理恵●取材/文)
店頭販売とのすみ分け進む
■「NECダイレクト」は売り上げ約170億円に
大手メーカー各社は昨年8月以降、直販サイトのリニューアルに着手し、本格的な事業拡大に力を入れている。これまで大手メーカーの直販は、店頭やパートナーのビジネスとの競合という面もあったが、ここにきて店頭モデルと店頭には無いカスタマイズ可能な直販モデルが中上級者を中心に需要が拡大するなど、顧客ニーズの多様化がさらに明確になってきた。
NEC(金杉明信社長)のウェブ直販サイト「NECダイレクト」は、昨年度(2005年3月期)の売上実績が前年度比約1.7倍の約170億円に成長した。従来の顧客層である中上級者に加え、「カラーバリエーションやキャラクターの限定モデルのラインアップが奏功し、女性や若年層も増加した」(那須俊彦・パーソナルソリューション事業部事業部長)ことも急成長の要因だ。今年1月に行ったサイトのリニューアルでさらなる集客の拡大を目指す。携帯サイトが今年4月から本格的にスタートしたほか、店頭などの実機展示スポットの拡大を進め、直販と連携した販売チャネルも積極的に開拓していく方針だ。
ソニー製品のダイレクト販売および関連サービスを提供するために、ソニーマーケティンググループ子会社として4月1日からスタートしたソニースタイル・ジャパン(佐藤一雅社長)が運営する「ソニースタイル」も、ソニーマーケティング時代の実績も含めて「00年の設立以降、売上高は毎年前年比20%増で推移している」(杉山博高取締役)。同社は4月の設立後、従来のBtoC中心のビジネスに加えて、本格的に法人向け直販に注力していく方針を示しており、新たにBtoBポータルを作るなどのリニューアルを実施した。
■EC市場規模、09年度は5兆円超
日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小田晋吾社長)の「HPダイレクトプラスオンラインストア」も昨年8月にリニューアルを行った。エンタープライズ、中小・中堅企業(SMB)、コンシューマの顧客の規模に合わせた3つの窓口を設置している。昨年度(04年10月期)の売上高は前年度比70%増と大幅に伸長。HPダイレクトプラスで製品や価格を確認したエンドユーザーが、日本HP製品の取り扱い代理店である「ダイレクトパートナー」や「ダイレクトリセラー」を通じて購入できる同社特有の販売形態が直販ビジネスとパートナーとの相乗効果を生んでいる。「直販ビジネスを伸ばそうとすると、結果的にダイレクトパートナーおよびリセラーからの受注が増えて直販ビジネス全体に寄与する」(甲斐博一・コマーシャルビジネス統括本部SMBマーケティング部部長)構図になっているわけだ。
セイコーエプソングループでBTO(注文生産方式)パソコンを販売しているエプソンダイレクト(山田明社長)は、パソコン販売の付加価値であるサポートを重視する差別化戦略を昨年度(05年3月期)下期から本格的に開始した。ネット直販で付加価値の高いサービスモデルをアピールし、国内でフルBTO生産を強みに納期短縮で差別化を図る。
パソコンメーカー各社が、ネット直販に力を入れているのは市場調査でも明らかだ。昨秋にIDCジャパンが発表した調査でも、03年の国内家庭向けパソコン市場がインターネット直販のみで前年比77.2%増、企業向けのネット直販(テレセールスなども含む)が約30%増の高成長を記録したとしている。
今年1月に野村総合研究所が発表した調査によると、国内のEC市場規模は04年度が2兆8800億円。これが05年度は3兆5600億円に成長し、09年度には04年度の約2倍の5兆5100億円に成長すると予測している。
EC市場拡大を背景にメーカーは直販ビジネスを強化し、それによりエンドユーザーの生の声をフィードバックできるメリットがある。また、直販を活用したパートナーとの連携により、新たなチャネルとしてのポジションを築くことに成功したといえそうだ。
大手パソコンメーカーが直販サイトの強化に乗り出した。各社が昨夏から今年にかけて、ウェブ直販サイトをリニューアルするなど、ライバルとの差別化を図るための戦略を打ち出している。ネット直販は、ショップやパートナーからの反感を招きかねないビジネスモデルとして遠慮していた部分もあったが、電子商取引(EC)市場拡大が追い風となり、個人消費者向けの店頭販売とのすみ分けが明確化になってきたことで流れが変わった。今では、パートナーとの連携に相乗効果を生むケースも出てきている。(田澤理恵●取材/文)
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