その他
公益法人市場にビジネスチャンス
2005/03/21 15:00
週刊BCN 2005年03月21日vol.1081掲載
会計基準改正が需要喚起の起爆剤に
販売戦略を練る会計ソフトメーカー
公益法人(財団法人および社団法人)市場がIT需要で盛り上がりそうだ。来年4月に公益法人の会計基準が改正され、会計システムを見直す動きが一気に高まる可能性が出てきたからだ。この“改正特需”を囲い込もうと、会計ソフトメーカーを中心に一部のITベンダーは着々と販売戦略を練り始めている。公益法人は現在約2万6000団体と、決して大きな市場ではない。だが、会計システムの買い替え、新規導入を通じ「IT化が遅れている公益法人」にアプローチするには、今回の会計基準改正は絶好のきっかけとなりそうだ。(木村剛士●取材/文)
■新基準対応を急ぐ会計ソフトベンダー PCA、12月に新版発売
「公益法人向け事業の大きなビジネスチャンスであることは間違いない。新たに1000団体には導入したい」。
公益法人向け会計ソフト「PCA公益法人会計」を約6000団体に納入しているトップベンダー、ピー・シー・エー(PCA、大炊良晴社長)の折登泰樹・常務取締役営業本部長兼Dream21事業部長は、シェア拡大に向けて強気だ。2006年度に控える公益法人会計基準の改正が、需要喚起の“起爆剤”になると感じているからだ。
総務省は昨年10月14日、公益法人の会計基準の見直しを発表した。寄付金の使用目的の明確化など、現行の会計基準よりも明確で、細分化された形での財務情報開示を求める内容となっている。一般企業並みの財務諸表の作成が公益法人にも必要になってくるわけだ。
PCAでは、「手作業で財務会計業務を行っている団体や、従来型の会計システムを利用している団体では対応できない。システムが根本的に変わる」(折登常務)ことから、これまで会計ソフトを利用していなかった公益法人にもアプローチでき、さらに他社からの買い替えニーズも促進できるとみている。
同社は、新会計基準に対応した新バージョンを今年12月中旬にリリースする予定。発売に向け6月には東京、7月には大阪で、改正後の会計基準内容と新バージョンの優位性を紹介するセミナーを開く。さらに早期の顧客囲い込みのため、現行バージョンを新規購入したユーザーには、新バージョンへの無償アップグレードと、通常は5万円の1年間保守サービスを無償提供する。
公益法人向け会計ソフト市場に02年末に参入して以来、約2年で約1000団体に会計ソフト「公益大臣」を導入した応研(原田明治社長)も、着々と準備を進めている。
他の会計ソフトベンダーに先駆け、今年4月に新バージョンを投入予定だ。ただ、4月にリリースする新版はあえて新会計基準に対応せずに、新会計基準対応機能とは別の機能を追加する。会計基準改正関連の新機能を競合に漏れないようにするためだ。新会計基準対応版は来年4月に提供を始め、無償アップグレードできる仕組みを整える。さらに、今年5月には新会計基準対応版のプロトタイプをユーザーに限定して披露していく戦略をとる。シェア20%の確保が目標だ。
応研の岸川剛・取締役営業部長は、「社会福祉法人の会計基準が改正された時に大きな需要が生まれた。今回の公益法人でも同じようにニーズが強まるだろう」と予測。「当社は公益法人市場では後発だが、社会福祉法人での基準改正の際、新会計ソフトへの移行支援やサポートなど手厚い導入サービスも提供し、実績を残してきた。そのノウハウを生かしていく」と話す。
会計ソフト「財務応援」シリーズで、公益法人向けモデルを持つエプソン販売(真道昌良社長)も、2月上旬に開催した公益法人向けセミナーで定員50人を上回る100人以上から申し込みを受けるなど、ニーズの強さを肌で感じている。年内には新会計基準に対応した新バージョンを投入予定で、「例年販売本数は年間100本程度だが、来年は倍の200本は売りたい」(西博幸・ビジネスソリューション営業推進部ビジネスソリューション企画課係長)としている。
■会計システム以外の提案も注力、オフコンリプレース需要にも期待
会計ソフトメーカーだけではない。システムインテグレータも注目している。
NEC系中堅システムインテグレータの日本事務器(NJC、大塚孝一社長)は、公共機関向けシステム構築事業のなかでも、「高等学校および短大・大学と、公益法人の2市場を強化ポイントに置いている」(徳永勝哉・公共事業推進本部販売推進部公共自治体販売推進グループマネジャ)。
公益法人市場強化の理由は、やはり「会計基準の改正」だ。徳永マネジャは、「最近は公益法人も改正基準に合わせシステムを組もうと買い控えが起きている」としており、今後の需要拡大を確信している。今年2月に行ったセミナー参加者は前回よりも10倍に膨れ上がった。NJCでは、関東甲信越地方にある公益法人の中から顧客ターゲットを約2000団体選び、専任の営業担当者を配置している。
ただ、NJCでは会計システムの導入だけを念頭に置いていない。理由は、「公益法人は10人以下の小規模団体が大半であり、会計システムの新規導入や買い替えだけでは顧客単価は上がらず、利益は小さい」(徳永マネジャ)からだ。徳永マネジャは、50人以上の公益団体は500-600団体とみており、10人以下の団体が大半だという。各公益法人特有のソフト開発やシステム構築、セキュリティ対策といった“旬”のソリューションをむしろ提案の中心にしているという。会計基準の改正は、「単なるきっかけに過ぎない」(徳永マネジャ)わけだ。
一方で、「システムインテグレータにとってもビジネスチャンスになる」と予測する声もある。PCAの折登常務は、「大規模な公益法人では、会計システムなどをオフコンで動かしている顧客がまだ30%はいるだろう。今回の基準改正でオフコンに代わり、クライアント/サーバー(C/S)系のシステム構築案件が出てくるはずだ」と指摘する。
現在、公益法人は全国に2万6000団体程度と、一般企業市場はもとより、文教や医療機関市場に比べれば決して大きなマーケットとは呼べない。だが、19年ぶりとなる今回の基準改正で、公益法人は会計システムの見直しを余儀なくされるのは事実。ニッチなマーケットとはいえ、ビジネスチャンスは大きい。
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