開発者の支持を得られるか

　サン・マイクロシステムズは、ソラリス10を完全にオープンソース化し無償で提供するという大方針転換を図った。

　当初は、「4CPUまで無料」と条件付きだったものの、CPUの数に制限なく無償とするなど、本気でOSのオープンソース化を進める姿勢をアピールしている。この方針転換によって、同社のビジネスにどのような変化が起こるのか。

　サンは、2月23日に開いた記者会見で「ソラリスは当社のコア事業だが、収益の中心となっているのは、ハードウェアなどソラリス以外の製品。オープンソース化し、無料にしても売り上げに与える影響は少ない」（纐纈昌嗣・プロダクトマーケティング本部本部長）と、収益面では影響が少ないことを強調した。

　また、現在サンにいるソフトウェア開発者は約5000人で、そのほとんどがソラリス開発に従事しており、オープンソース化しても技術者の配置換えをする予定はなく、開発の中心がコミュニティへ移行したとしても、検証などは引き続きサンが担当していくと説明した。

　こうした説明を聞くと、ソラリスがオープンソース化されても、開発コストや収益面では大きな違いはないということになる。では、なぜサンはオープンソース化にこだわるのだろうか。

　杉本博史・取締役フィールドマーケティング統括本部統括本部長は、「将来は、機能拡張は開発コミュニティの手に委ね、対応アプリケーションの開発者を増やし、その開発スピードを上げていきたい」と、開発者の支持が重要なポイントであるとの見方を示す。

　さらに、オープンソース化を決意したきっかけとして、「Linuxの存在が大きかった」と説明している。このことから分かる通り、開発者の関心をソラリスに向けさせることが大きな狙いということなのだろう。

　だが、競合他社からは、「オープンソース化しただけで開発者の支持を得ることができるとは限らない」と厳しい声も挙がっている。あるハードメーカーの担当者は、「Linuxに多くの開発者が手を貸した時と現在とでは状況が違う」と指摘する。

　「Linuxが登場した時には、他にオープンソース化されたOSがなかっただけに、多くの人の関心を引いて、開発者が多く集まった。だが、現在ではオープンソースは決して珍しいものではなくなった。開発者の数には限りがあるだけに、オープンソースといっても開発者の支持を得られるもの、得られないものが明確に分かれてくるのではないか」

　確かにサンも開発コミュニティの動向に対しては慎重な見方を示す。「開発コミュニティでの開発が活発化するまでには時間がかかるだろう。具体的にどれくらいの時間がかかるのかは分からない」と話している。この慎重さは、かなり開発者の意向を尊重したいという気持ちの表れでもあるだろう。

　つまり、サンにとってはOSの収益を捨ててでも開発者の支持を得ていく必要を感じたからこそ、オープンソース化という道を選択したというわけだ。それがサンのビジネスを活性化する〝唯一の道〟になると考えたと言い換えてもいい。

　もっとも、サンもしたたかである。「次のバージョンはオープンソース化するのか」という質問に対しては、「現在は未定」と答えている。つまり、時間が経ってうまくいかなければ元に戻す可能性もあるということだ。オープンソース化をちらつかせて関心を引くというしたたかさも含め、サンの方針転換を開発者はどう受け取るのだろうか。(三浦優子●取材／文)