伝わらない本来の「価値」

　マイクロソフトが「ウィンドウズXPサービスパック2セキュリティ機能強化搭載（SP2）」の配布を開始したのが昨年9月2日。それから約半年が過ぎた。配布直後は「既存のアプリケーションが正常に動作しなくなる」との声が広がり、不安視したユーザーが導入を見送るケースが目立った。しかし、半年経った今では、情報セキュリティに対する関心が高まり、導入ユーザーは順調に伸びているようだ。

　インターネット情報サイト「快適ネット」が同サイトのアクセスユーザーを対象に行った調査では、導入比率は昨年10月3日段階で25％であったのに対し、今年2月の段階では74・2％に膨れ上がっているという。

　ウィンドウズのセキュリティパッチ配布ソフトを開発・販売するアップデートテクノロジーの永来真治・取締役営業担当も、「法人の50％はSP2を導入している」と実感している。

　SP2導入後の不具合報告や、大手企業が導入を見送る動きに歩調を合わせるように様子見をしていた企業も、「情報セキュリティ対策強化の一環としてSP2を導入するケースが増えてきた」（永来取締役）。「他社の様子を見て導入を控えていた企業が、年末頃からSP2をインストールし始める傾向が出てきた」と、立ち上がりは遅かったがここにきて急速に導入が進んでいるという。さらに、「導入企業のなかで不具合があったとの報告は少なく、配布前に想像していた状況に比べて混乱は少ない」という。

　また、〝不具合報道〟がユーザーのSP2導入にあたっての注意を促し、動作検証を行ったうえで導入するケースも多かったことがトラブルを未然に防いだ。

　一方、「ユーザーがSP2の機能を使いこなしていない」と口にするITベンダーも多い。使い勝手の悪さや知識不足から、SP2のファイアウォール機能などをオフにしてしまい、セキュリティ対策自体は何も変わっていないケースもあるという。

　あるセキュリティソフトメーカー幹部は、「ユーザーがSP2のセキュリティ機能を理解しているかは疑問。インストールすれば解決しているように思っているユーザーが特に中小企業には多い」と話す。また、「マイクロソフトは、インストールさせることだけを訴え過ぎる。導入によるメリットやSP2の機能をアピールしていない」とも。

　SP2は、これまでのサービスパックのようなセキュリティパッチ（修正プログラム）の集合体ではなく、セキュリティ機能を強化したアップデートプログラム。単にインストールするだけでは意味がない機能もある。「導入したけど、機能は使っていない」では、何のためのSP2かわからない。

　マイクロソフトは、SP2の配布にあたって、雑誌やテレビなど、あらゆるメディアに広告を掲載して、啓蒙活動を積極的に推進。ナローバンドユーザーのために郵便局でSP2搭載CD─ROMの配布まで行った。OSの脆弱性を突いた「MSブラスター」ウイルスで引き起こされた被害を再発させないために必死の呼びかけを行ってきた。

　ただ、「導入したが使いこなせていない」ユーザーがいることも事実。マイクロソフトは導入促進だけではなく、使い方やセキュリティ対策の意味を改めて訴えかけなければならないだろう。導入ユーザーが順調に増えているだけに、「ウィンドウズのセキュリティ対策を抜本的に変えるためのツール」（マイクロソフトのマイケル・ローディング社長）であるSP2の価値を正確に伝える必要がある。(木村剛士●取材／文)