その他
対策進む偽造キャッシュカード被害 ICカード化や生体認証導入へ
2005/02/21 15:00
週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載
偽造キャッシュカードによる被害拡大に対応するため、金融機関の対応が加速している。1月末に全国銀行協会(全銀協、西川善文会長=三井住友銀行頭取)が「偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせ」を公表。大手銀行が偽造しにくいICカード化を積極化し、地方銀行などでも生体認証(バイオメトリックス)システムの導入や独自の取り組みを相次いで打ち出している。不良債権処理問題が山を越え、今年4月からはペイオフの対象が普通預金にも拡大され全面解禁を迎える。サービスやセキュリティの向上で、個人や中小企業といったリテール顧客に「選ばれる金融機関」になることが最重要テーマとなっており、そのための投資も活発化している。もっとも、コストを抑制したいという思いも強く、効果的ながら効率的にというのが本音。ITベンダーや機器メーカーとともに、差別化をアピールする金融機関が増えそうだ。(山本雅則(大阪駐在)●取材/文)
スタンダード存在せずアイデア勝負も
■大手行が相次いで導入
全銀協の申し合わせ事項は、(1)暗証番号のセキュリティ強化、(2)磁気ストライプと暗証番号に代わるシステムの導入、(3)利用限度額の引き下げ、(4)万一の際の補償の検討──の4項目からなる。補償を除いては、その解決策にはITが力を発揮するが、特に柱となるのは磁気ストライプと暗証番号に代わる新たなシステムの導入だ。
大手行では、東京三菱銀行が昨年からクレジットカード一体型カードについて、手のひらの静脈で本人確認するシステムの導入を始めている。三井住友銀行も、今月からICカードの取り扱いを開始し、生体認証の活用についても2005年度中の導入に向けて検討する。UFJ銀行は、3月からICカードの申し込み受け付けを開始するが、他行と異なりカード発行手数料を無料とし、ICカード対応ATMを9月までに4700台(04年末時点では2700台)に増設する。発行手数料の無料化で、5年に1度は10億円以上の負担が発生するため、思い切った戦略といえる。
地方銀行でも差別化に向けた取り組みは急だが、大手行の取り組みとはやや異なる。店舗数が少ないといってもハイテク活用には投資もかさむからだ。東京の巣鴨信用金庫のようにカードは発行せず、本人確認を「合言葉」で行うというのは例外かもしれないが、効果と効率に知恵を絞っている。
岐阜県の大垣共立銀行(土屋嶢頭取)は、3月に開業する新名古屋支店の貸金庫入室の認証に「顔認証システム」を導入する。企業内などでの入退出を管理する東芝の顔照合セキュリティシステムを応用したもので、銀行での利用は初めて。300以上の貸金庫を設置する新支店では有効であり、話題性もあるというのが狙い。
■独自の動き見せる地方銀行
大阪の関西アーバン銀行(伊藤忠彦頭取)は、キャッシュカードのセキュリティ強化策として、他行とは全く異なるアプローチをとる。従来の磁気カードの安全性を高める「アルファベット暗証による可変二重暗証システム」は、NECとの共同開発で、現在、特許申請中。通常の4桁数字を入力した後、任意のアルファベット4文字を入力するいたって簡単な原理。ATM(現金自動預払機)のタッチパネル画面が1枚増えるだけだが、数字だけなら1万通りの組み合わせが、計算上は約46億通りに増える。
「生体認証の導入には当行クラスでも5億円の投資が必要。この方法なら半分の投資で済み、安全性は格段に高められる」(伊藤頭取)と満足げで、他行の採用も大歓迎という。
同行が磁気カードにこだわり、システムもオープンにするのには理由がある。1つは、ICカード化について銀行界全体の規格が決まっていないこと。もう1つは、個人情報を銀行側のセンターに持つことができないため、認証する情報はカード上のICチップに格納することになる。万が一、ICカードを読み取る装置が出てきた場合、セキュリティやプライバシーの面で問題が生じる可能性があるとの判断だ。事実、この2つの理由から、ICカード化に躊躇する金融機関も少なくない。地域金融機関が採用する生体認証が貸金庫入退室などに限られるのもこのためだ。
関西アーバン銀行のシステムでも、ICカードは用意するが、センター側での認証が可能なものとし、サービス向上だけを目的に使用できる。「金融界全体の方針が決まるまで、悠長に待っているわけにもいかない」(伊藤頭取)以上、アイデアで勝負し、もし他行でも採用するなら大成功というわけだ。スタンダードが存在しないだけに、こうした動きは今後も続きそうだ。
偽造キャッシュカードによる被害拡大に対応するため、金融機関の対応が加速している。1月末に全国銀行協会(全銀協、西川善文会長=三井住友銀行頭取)が「偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせ」を公表。大手銀行が偽造しにくいICカード化を積極化し、地方銀行などでも生体認証(バイオメトリックス)システムの導入や独自の取り組みを相次いで打ち出している。不良債権処理問題が山を越え、今年4月からはペイオフの対象が普通預金にも拡大され全面解禁を迎える。サービスやセキュリティの向上で、個人や中小企業といったリテール顧客に「選ばれる金融機関」になることが最重要テーマとなっており、そのための投資も活発化している。もっとも、コストを抑制したいという思いも強く、効果的ながら効率的にというのが本音。ITベンダーや機器メーカーとともに、差別化をアピールする金融機関が増えそうだ。(山本雅則(大阪駐在)●取材/文)
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