今年度業績予想を軒並み下方修正
企業IT投資は堅調ながら単価ダウン響く
システム構築ビジネスの収益が悪化している。ハードウェア単価の下落ばかりでなく、値下げ圧力や過当競争の激化でサービス単価も影響を受けている。大手ベンダーなどが発表した今年度(2005年3月期)第3四半期決算にも、その影響が如実に表れている。(川井直樹●取材/文)
■システム事業の収益悪化が要因、顧客の要求もますます厳しく 大手ベンダーのほとんどが、この第3四半期で今年度の業績予想を下方修正している。NEC、富士通、日立製作所などのシステムベンダー大手は、電子デバイスの市況悪化、デジタル家電の価格下落などの影響で下方修正を加えたが、システム事業の収益悪化もその要因として挙げられる。
富士通の場合、04年10月の中間決算発表段階で公表したソフトウェア・サービス部門の通期営業利益予想1550億円に対して、第3四半期決算では1400億円に下方修正した。電子デバイス部門が同500億円から350億円へと同じく150億円下方修正しており、全体で300億円の下方修正をソフトウェア・サービス事業と電子デバイスで2分することになる。
富士通のソフトウェア・サービス部門の第3四半期業績は、売上高が4359億円(前年同期比0.1%減)、営業利益は前年同期の2.15倍となる142億円。売上高のうち国内向けは2992億円(同2.8%減)。ソリューションおよびシステムインテグレーション事業の売上高は1750億円(同3.6%減)、インフラサービスは2609億円(同2.5%増)。つまり、システムインテグレーションビジネスが足を引っ張っている。
富士通によれば、システムインテグレーション事業の案件数は減少していないという。官公庁向けの需要が、補正予算で一部防災関連にシフトしたことで若干弱含みになったものの、民間のシステム需要は堅調だ。業績が伸び悩むのは、単純に単価ダウンの影響というわけだ。
NECのITソリューション事業の第3四半期業績は、売上高4933億円(同0.1%減)、営業利益260億円(同31.8%増)。システムインテグレーション/サービス事業に絞れば売上高は前年同期に比べ8.4%増えて1679億円となった。ソフトウェアも234億円(同13.0%増)と好調。ITソリューション事業では、コンピュータ・プラットフォームが1288億円(同6.6%減)、パーソナルソリューションが1792億円(同4.1%減)と低迷しており、システムインテグレーションやソフトがカバーした形になる。
一見好調なように見えるが、ITソリューション部門の業績から内部取引を除くと様子が一変する。ITソリューション事業の第3四半期の外部向け売上高は4253億円(同7.1%減)となり、さらに国内に限れば3158億円と前年同期に比べ1割強の減少だ。ここにも国内の単価下落の影響が見て取れるだろう。
NECによれば、ITソリューション部門は、想定した収益は確保しているものの、市場は緩やかに拡大しているが顧客の要求は厳しいとみている。このため、年度末で需要が拡大する第4四半期にかけては、一層のコストダウンを図っていく方針だ。
日立製作所の情報通信システム部門の第3四半期売上高は4824億円(同6.2%減)。ソフトウェアの売上高は342億円(同8.3%減)、サービスは1637億円で前年同期比6.4%の増加。ソフト/サービス全体の売上高は1979億円(同3.5%増)となっている。
日立の場合も、サーバーやパソコンの売上高が大きく落ち込み、ハード全体で2845億円(同12.0%減)と1割以上もマイナスになった。ハードウェアの単価ダウンの影響は、情報通信部門の営業利益を前年同期に比べ6分の1程度に相当する21億円に引き下げることになった。
このため通期予想でも、情報通信システム部門の売上高は従来見通しの2兆3050億円から2兆2500億円へ550億円の下方修正。営業利益も従来見通しの990億円から630億円へ360億円下方修正した。
■法人分野のIT投資は増加傾向 各社、低コスト化対応に拍車 大手システムインテグレータのNTTデータの第3四半期決算は、売上高5717億円(前年同期比6.0%増)と増収になったものの、営業利益は305億円(同27.6%)と大幅な落ち込みとなった。システムインテグレーション事業の売上高は4555億円で、前年同期に比べ6.3%の増収。価格競争が激しくなっていることから、売上原価は第3四半期で4306億円となり、原価率は前年同期の72.2%から75.3%へと3.1ポイント悪化している。
NTTデータによれば、法人分野のIT投資は増加傾向にあるが、景気は弱含みになっているという。また、ユーザー企業も価格競争の激化や業界再編などによるコスト圧力が大きく、結果的にシステムに対しても単価ダウンの圧力が強まっているようだ。また、企業構造変革のためのIT活用に向けて、コンサルティングフェーズでの受注が顕在化しているという。このため同社では、業種ノウハウやコンサルティングスキルを備えた人員を200人増やす計画で、第3四半期までに約150人の中途採用を実施した。
ハードウェア単価の下落が引き続き予想され、それに伴う形でソフト・サービス分野の単価引き下げ要求も根強い。ユーザー企業はIT活用による業務効率化やサービス強化を狙っており、案件の数自体は増えてはいるが、システム構築にかかる費用は削減したいというのが本音。
プロジェクト単価のダウンはコンピュータベンダーやシステムインテグレータの収益悪化に直接影響する。結果的に赤字プロジェクトに陥るケースもあり、さらにシステムベンダーの収益を悪化させることになる。現在、多くのシステムベンダーがオフショア開発をはじめとした低コスト化対応に拍車をかけている。しかし、それを上回る勢いで過当競争に晒されているのが現状だ。
 | 半導体・電子部品が低迷 | | | | | 大手電機・電子メーカーで、今年度(2005年3月期)第3四半期に営業減益となったのは、日立製作所、ソニー、東芝、NEC、富士通など。ソニーはフラットパネルテレビの需要が好調だったものの、価格低下で原価率が上昇し足を引っ張った。「フラットテレビのパネル、キーデバイスともに他社から調達していることが収益を下げる原因となった」(井原勝美・執行役副社長兼グループCSO&CFO)という。 そのほか、半導体をはじめとした電子部品の市況悪化で、日立、東芝、NEC、富士通ともに営業減益を余儀なくされた。 |  | 東芝の場合、電子デバイス部門の第3四半期売上高は2979億円(前年同期比11.8%減)であるのに対し、営業利益は前年同期の約7分の1の51億円にとどまった。 デジタル家電や携帯電話などに向けたLSIをはじめ、電子部品の需要減退が顕著になってきている。NECエレクトロニクスは、第3四半期の半導体売上高は前年同期比3.6%減の1607億円だったが、営業利益は同92.5%減の12億円と低迷。「10月以降、予想以上に市場が減速した。第4四半期には(価格が)下げ止まる」(佐藤博・執行役員兼財務本部長)としている。 | | |