わかりやすいカウント方法を

　現在、日本ではどれくらいの数のソフトウェアが販売されているのだろうか──。この質問に正確に答えることは案外難しい。

　店頭で販売されているソフトは、比較的簡単に答えを出すことができる。BCNランキングが明らかにしているように、店頭販売のパッケージソフトは本数、金額ともに算出することができる。

　だが、ワープロ、表計算、財務会計ソフトなどの汎用的なパッケージソフトばかりでなく、業種向けソリューションも含めて本数を数えようとすると、意外なところに落とし穴がある。

　まず、業種ソフトパッケージがどれくらい作られていて、どんなものがあるのか、実態がつかみにくい。業種ソフトパッケージの場合、直販されているものも多い。直販ではないものの、特定ソフト用に開発されたものや、特定のハードメーカーの販社の間だけで流通しているものなど、一般的には知られていないものも多い。

　ある販社は、業種パッケージの自社販売に向けて、販売されているソフトウェアの調査を行った。その際、「製品のカタログを送って欲しいと連絡したものの、返答があったのは一部だけ。カタログがないというところも結構あった」そうだ。販社にとっても全ての業種ソフトの実態をつかむことは難しいというのが実情のようだ。

　これまで日本で「ソフト」というと受託開発などが中心とされてきた。しかし、最近では大企業でもパッケージソフトを活用している。中小企業ではパッケージソフトの導入により、コストを抑えてソリューションを作る必要がある。パッケージソフトの必要性は高まっている。業種ソフトパッケージが活躍する場面も増えてくるだろう。

　現在、どのようなパッケージソフトがあるのかをアピールする仕組みをIT業界としても、検討しなければならないのではないだろうか。

　さらに、ソフトの市場規模を計ることを難しくしているのが、ソフトの数え方がメーカーや製品によって大きく異なる点である。店頭で売られているソフトはカウントしやすいが、最近のアンチウイルスソフトなどのように1つのパッケージに2ユーザーライセンスが入っているものもある。これをどうカウントするか。

　企業向けソフトはもっと複雑だ。サーバー用ソフトとクライアント用ソフトでは、同じ「1本」でも価格が大きく異なるし、利用するユーザーの数も大きく違う。

　クライアント用ソフトでも、「CPUライセンス」、「同時使用ユーザーライセンス」、「使用人数無制限」など、様々なライセンスがあり、実際にはどれくらいの人数で利用しているのか、正確な把握が難しい。

　いっそのこと本数は考えず、出荷金額だけで市場を計っていこうとすると、1本ごとの単価が大きいメーカーが圧倒的に優位になってしまう。単価が安くても多くのユーザーに利用されている製品の利用実態が反映されないという問題が生じる。

　「本来は導入する企業や個人の数がわかればいい」という声もあるが、ユーザー登録されているものは、ある程度正確に利用実態が把握できたとしても、それ以外のものとなるとカウントしていくのは難しい。

　正確なパッケージソフトの市場規模をアピールすれば、日本のパッケージソフト市場が実は考えられているよりも大きいということをIT業界外の人にも実感してもらえるはずだ。「実はパッケージソフト市場の規模は、これだけある」とアピールしていくために、カウントの方法についても考えていくべき時期に来ているのではないだろうか。(三浦優子●取材／文)