高スペックモデルのシェア争い激化

　「レンズ交換式一眼レフタイプのデジタルカメラが、今年末にはデジタルカメラ国内市場の約40％を占めることになる」──。ソフマップの井澤秀夫・店舗営業本部秋葉原営業部副部長はこう言い切り、デジタルカメラのなかでもレンズ交換式の一眼レフタイプが急成長製品のひとつとみる。〝新三種の神器〟のひとつに数えられ、爆発的な人気を維持し続けるデジタルカメラ。BCNランキングでも、前年比50％増前後の販売台数の伸びを続ける。家電量販店やパソコンショップでは、「中核商品の位置付けにあることは依然変わらない」と口を揃える。人目につきやすい場所にデジタルカメラを展示する風景は、ここ2─3年変わっていない。

　そのデジタルカメラ売り場で、注目を集めているのが普及価格帯のレンズ交換式一眼レフデジカメである。人気を集める背景には、これまで特別な製品だったプロ向けの高額モデルではなく、価格10─15万円程度で購入できる初心者層をターゲットにしたエントリーモデルをカメラ各社が相次ぎ発売したことがある。キヤノンが「EOS KISSデジタル」で市場に火を点け、ニコン、オリンパスなどのライバルメーカー各社が続々とエントリーモデルのレンズ交換式一眼レフデジカメを発売している。BCNランキングでシェアトップを誇るソニーは、現段階ではレンズ交換式一眼レフデジカメを製品化していないが、「市場環境をじっくり見て、ユーザーの要望が強ければ検討していく」（ソニーの辻和利・デジタルイメージングマーケティング部統括部長）と話しており、製品開発の可能性を匂わせる。

　これまでのデジタルカメラ市場では、コンパクトでカメラの形状を感じさせないスタイリッシュなモデルが売れ筋だった。スペックは、300─400万画素、3─5倍の光学ズームレンズを搭載している機種が主流で、価格も2万円後半から5万円前後。キヤノンの「イクシーデジタル」や、カシオ計算機の「エクシリム」などはその代表格だ。だが、レンズ交換式一眼レフデジカメを手がけるメーカー担当者は、「小さくて軽く、価格4─5万円程度のモデルは高機能化が進んでおり、開発の限界に来ている。競合他社との差別化が打ち出しにくく、画期的な製品開発は難しい」と洩らす。さらに、「初めてデジタルカメラを買うユーザーと、買い替えユーザーの比率がほぼ同じになってきた。買い替えユーザーは、すでに持っている機種よりも高いスペックを求めるから、レンズ交換式の一眼レフデジカメも購入対象の選択肢になる」と話す。

　東京・秋葉原に店舗を構えるカクタソフマップでは、昨年の5月からレンズ交換式一眼レフデジカメの販売を強化してきた。デジタル家電を担当する吉田浩志・フロア長は、「デジタルカメラの売り上げ台数の10─20％をレンズ交換式一眼レフが占めている。購入者層も女性や初心者など、裾野が広がり始めている」と、もはや特別の製品ではなくなったという。デジタルカメラ市場は、これまで新規購入者を中心に成長を続けてきた。だが、「従来の売れ筋機種には需要が一巡した感がある」（井澤部長）という声もある。今後は、レンズ交換式一眼レフデジカメを筆頭に高スペックモデルのシェア争いが焦点となる。デジタルカメラ市場は、新規ユーザー開拓から、買い替え・買い増しユーザーをいかに取り込むかという方向に、各社の開発・販売戦略が移り始めている。 木村剛士●取材／文