その他
年々拡大する中古パソコン市場 リサイクル開始でビジネスに拍車
2003/09/15 15:00
週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載
メーカーや中古機器専門の卸売り企業が、中古パソコンビジネスを強化するため、買取先を拡大している。企業のリース切れパソコンだけでなく、個人ユーザーもターゲットに中古パソコンの発掘に力を入れている。引越し業者との提携やネット上で買取査定を行うなど、潜在的なユーザーの買い替えニーズの掘り起こしも始まった。10月1日から個人向けパソコンリサイクルが始まることで、質の高いパソコンが中古市場に流入し、中古の売上増加につながるという期待もある。中古ビジネスに力を入れているショップにとっては、買取で新規参入組と競合する可能性もあるが、同ビジネスのプレイヤー増加で中古パソコン市場は一段と活性化しそうだ。(佐相彰彦●取材/文)
買取事業を強化する企業相次ぐ
■メーカーが中古事業に本格参入、卸業者は買取先を増加
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とNECの2社が中古パソコン市場に本格的に参入した。これまで中古パソコンは、パソコン専門店と家電量販店が中心になって買取と販売を行っていたが、メーカー自らが中古パソコンビジネスに本格的に取り組むことになった。
日本IBMは、1993年からリース期間の終了したパソコンを企業から回収して再生し、ショップ13社への卸売りや企業への販売を行ってきた。個人向けの中古パソコンビジネスを強化するため、今回、「IBM Refreshed PC」という名称で7月初旬から販売を開始。取り扱うショップも9月上旬時点で18社に増やした。
安食直也・グローバル・アセット・リカバリー・サービス主任セールス・スペシャリストは、「今年度(03年12月期)は、中古パソコンの売り上げを前年度比30%増に高める」と話す。
NECでは、7月から個人向けパソコンの買取サービスを開始した。買取は同社の商品情報総合サイト「121ware.com」で受け付けている。個人ユーザーは、ホームページで買取価格を検索でき、これをもとに申し込む。引き取りに関しては、NEC指定の運送業者が戸口回収を行ない、NECで現物を見て査定を行なう。
買取商品は、NECが00年1月以降に発売したものに限定しており、ハードディスク内データ消去や外観のクリーニングとOSの再インストール、動作確認を行い、6か月間のメーカー保証を付けて、「NEC Refreshed PC」という名称で店頭販売する。
NECパーソナルプロダクツの小澤昇・PC事業本部マーケティング本部シニアエキスパートは、「保証期間が6か月と長いことが強み」と、これまでにはない“サポート重視”を武器に拡販していく。
また、中古機器の卸売り企業でも、中古パソコンビジネスを拡大していく動きがある。
サイクルヒットは、パソコン買取システム「サイクルネット」を8月4日から始めた。このシステムは、同社が手がける中古卸売り事業と小売りのノウハウを、家電量販店向けに展開することを目指した。家電量販店が消費者から買い取ったパソコンは、サイクルヒットが手数料を加えて再び買い取る。これにより、「今年中には月平均の販売台数を1万台にする」(岩瀬勝一社長)方針だ。
デジタルリユースでは、企業の使用済みパソコンを中心に買取事業を手がけ、流通商社に年間6-7万台を販売している。これに加えてヤマト運輸と提携し、個人を対象に中古パソコンの買取サービスを開始した。引越しの際に不要になったパソコンを引き取るサービスで、木下敬司社長は、「まだ始めたばかりで、実例は少ない」と打ち明けるものの、「今後も企業とのアライアンスで個人を対象に調達できる体制も整えていきたい」としている。
デジタルリユースは、これまでのリテール系流通商社への卸売り中心から、「企業顧客への直販も強化していく」方針を明らかにしており、個人からの中古パソコン調達で、これまで年間300台にとどまっていた企業向け販売の拡大を目指す。今年度は中古パソコン全体で前年度比50%増の約18億円の売上高を見込む。
ショップでも中古パソコンの販売を拡大する動きがある。
ラオックスでは、ピー・シー・デポ(PCデポ)と提携。PCデポが中古パソコン販売に関するノウハウを提供し、ラオックスの郊外にある小型店舗を「PCDEPOT」にリニューアルする。今年度内をめどに2店舗をPCデポのフランチャイズ店とするほか、東京・秋葉原にラオックスの中古専門直営店を出店する。中古ビジネスを強化したのは、「パソコンの世帯普及率が上がり、家庭内で1人1台所有になりつつある。このための買い増し需要も増えていく」(山下巌・広報室部長)との読みがある。
■買取の制度化により、新製品への買い替えを促進
メーカーや中古機器卸売り業者が買取事業を強化するのは、中古パソコンの新規顧客を開拓するという意図もある。
メーカーでは、中古パソコン買取事業の強化で新品の買い替えを促す。NECでは、「買い替えるつもりがなかったユーザーが、買い取ってくれるなら、ということで新しいパソコンを購入する刺激になれば」(小澤シニアエキスパート)とみており、日本IBMでも、「企業の買い替え需要を高めていくため、新品パソコンを販売する営業担当者との連携も図っていく」(安食主任セールス・エキスパート)と強調する。
中古パソコンの市場規模は、新品パソコン市場の10分の1以下とみられるが、年々拡大傾向にある。ミック経済研究所の予測では、中古パソコンの市場規模は03年度で113万2000台、04年度で127万台、05年度で139万台に成長すると予想する。さらに、10月1日からの個人向けパソコンリサイクルの実施により、パソコンを下取りに出すユーザーが増え、質の高い中古パソコンが市場に流入する。
サイクルヒットの岩瀬社長は、「大手量販店は中古ビジネスを拡大しようとしているが、買取や再生化などのノウハウがなく、なかなか本格的に手がけられない状況」と、同社のパソコン買取システム「サイクルネット」の利用拡大に期待する。同システムの顧客企業数は今年8月末時点で大手量販店を中心に5社を獲得しており、9月末までに30社弱の導入を見込む。
メーカーや中古卸売り企業の買取事業強化で、買取面ではショップとの競合も考えられる。しかし、まずは中古パソコンの流通ルートを確立し、中古市場の活性化を図ることも重要だろう。
メーカーや中古機器専門の卸売り企業が、中古パソコンビジネスを強化するため、買取先を拡大している。企業のリース切れパソコンだけでなく、個人ユーザーもターゲットに中古パソコンの発掘に力を入れている。引越し業者との提携やネット上で買取査定を行うなど、潜在的なユーザーの買い替えニーズの掘り起こしも始まった。10月1日から個人向けパソコンリサイクルが始まることで、質の高いパソコンが中古市場に流入し、中古の売上増加につながるという期待もある。中古ビジネスに力を入れているショップにとっては、買取で新規参入組と競合する可能性もあるが、同ビジネスのプレイヤー増加で中古パソコン市場は一段と活性化しそうだ。(佐相彰彦●取材/文)
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