低迷する市場の中にあって、コンスタントな成長を続けているのがダイワボウ情報システムだ。2003年3月期の連結売上高は対前年比106%を達成、不況をものともしない成長神話を維持している。成熟期に入っている市場において、今後も成長路線を続ける同社の戦略とはどのようなものなのかを松本紘和社長、高井左千郎専務に聞いた。
シェアナンバーワンのディストリビュータにこだわる
■2つのテーマが成長路線を続けるカギ――松本紘和社長
今年4月に社長に就任した松本紘和氏の3年後、5年後を見据えた経営戦略は明確だ。
「地域密着とディストリビューションビジネスの徹底」。この2つのテーマを貫くことが成長路線を続けるためのカギだと、松本社長は断言する。経費削減を目的として、地域拠点から撤退する傾向が強まっているなか、松本社長は、「地域拠点網はこれまで同様に崩さない。むしろ、今以上に地域密着型のビジネス展開に力を入れる」と主張する。
「インターネットが普及し、受発注が容易に行えるようになったのは事実。しかし、実際に顧客先に足を運んで、コミュニケーションを取りながらビジネスを手がけるフェイス・ツー・フェイスのニーズは無くならない。また、各地域によってニーズもそれぞれ違う。きめ細かいサービスを提供するためには、地域拠点網は重要な武器」と話す。
70余もの拠点を全国に構えることは、松本社長が地域密着とともに推進するローコスト経営とは、逆なイメージもあるが、「各地域に密着したビジネスはDISの基本戦略」とその姿勢を崩すことは今後もないことを強調する。
ローコストオペレーションのための施策としては、これまで以上に物流構造の改善や、販売管理、受発注業務の効率化の徹底で、利益向上に努める。全国13ヶ所の物流センター網を構築したことで、取扱商品が増加すれば、「物流コストはより下がる」としている。
地域密着とともに松本社長が推進するのが、ディストリビュータとしてのビジネス展開の徹底だ。
「当社はディストリビュータとしてこれまでビジネスを展開してきた。関連会社で、システム販売などを手がけてはいるが、核となるディストリビュータとしての位置づけは変わらない。これまでのノウハウを活かして、ディストリビュータとしてシェアナンバーワンにこだわり続ける」という。
商品としては、これまで同様、パソコンを主軸商品として力を入れる。
「パソコンは確かに利益が薄いが、パソコンが売れなければ、周辺機器などのビジネスに発展しない。3年、5年後でもパソコンは主力商品になっている」としている。
■ハードとともにソリューションも――高井左千郎専務
「夏商戦は、コンシューマー向けでは上向いているが、力強いとまではいえない。いま動いているのは、自治体、文教などe-Japanがらみで国家資金が投入されている分野だが、競争は激烈だ。結局価格に絞り込まれるので、利益は出しにくい」と語るのは高井左千郎専務である。
その中で同社は強気の増収計画を打ち出しているわけだが、「シェアをあげればいい」と戦略は明快だ。過去多くの産業では、成長期から成熟期に入りかけたところで、落ちるところは落ち、トップ企業のシェアは高まるという軌跡を見たが、ITディストリビュータの世界で、その再現を狙っているわけだ。
「業界のパイは必ずしも大きくなっていないが、年間1000万台の回転需要は保っている。これは、巨大な市場規模であり、その中でシェアを上げていけば、売上増もはかれる」とみる。
現実はどうなのか。「一時期アクティブな取引先は8000社くらいだったが、ここに来て常時取引先は増加しており1万5000社くらいになった。どんどん当社を頼ってくるところが増えている」という。
「シェア20%に挑戦」という過大とも思える同社の目標は、現実の裏付けがあるわけだ。
「ハードでは儲からないと誰もが口にするが、ハードがなければソフトだって売れない。当社は、ハード第一主義を貫きつつ、ソリューション販売にも取り組んでいく。利幅の薄いハードでも、ボリュームがあればそれなりの利益は出せる。ただ、そのためには当社自身、血のにじむような努力をしなければならない。3万アイテムの常時在庫と物流体制の充実、機種選定・納入から廃棄までどんな要望にも応えられる体制は、他社には真似のできないレベルにあると自負している。とにかくハードのことなら、当社に相談してもらえば、迅速に、的確にすべて揃う。ハードに関するワンストップサービスは絶対どこにも負けない。当社と取引先を結ぶWeb販売サイト「iDATEN(韋駄天)」による人手を介さない受発注システムもさらに高度化させていく。現在、販売管理システム(基幹業務システムと情報管理システムの統合)を再構築中で、来年には稼働するが、これが動き出せば、メーカーからエンドユーザーまでの一貫した情報を把握することができる。「iDATEN(韋駄天)」とも当然連動する」と高井専務。ソリューション販売については、「昨年は、まずセキュリティに焦点を絞り、ノウハウを蓄積してきた。昨年度は50億円の売上だったが、3年後には200億円を目指す。今年は、その上にミドルウェアなどに力を入れ、ソフトウェア部門で全社売上の10%を目指す」意向だ。
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