その他
家電の新たな主力商材になるか 可能性秘めるホームサーバー
2003/07/28 15:00
週刊BCN 2003年07月28日vol.1000掲載
ホームサーバーは普及するか――。ホームネットワークの核となる装置として注目を集め、この1年間でベンダー数社が製品化に踏み切った。参入各社は、まだ発売後間もないこともあり、際立った販売実績はないと口を揃えるが、将来の需要を見込み、普及への手応えを感じている。ホームサーバーの機能をどう訴えて、どのようにユーザーに浸透させていくかが課題だ。情報機器と家電の融合の“先駆け”ともいえるホームサーバーは、新たな市場創出の可能性を秘めている。(木村剛士●取材/文)
手応え感じる各メーカー
■ソニーやNECなどが製品化
IDCジャパンによると、ハードディスク装置(HDD)を記録用ストレージとして利用した家庭用AV機器の2007年の市場規模は500万台に達する見込み。02年の実績46万6000台に対し大幅に拡大する予想だ。そのうち、ホームサーバーに分類される製品は100万台規模に成長するとみている。ここ数年注目を集めてはいたが、この1年間でようやくソニーやNEC、富士通、シャープなど大手メーカーが製品化を開始した。
ネットワーク接続可能でAV機能を充実させた製品が主流で、テレビ番組の録画を遠隔地から行ったり、録画した映像をブロードバンド回線を通じ、パソコンをはじめとした様々なデバイスから視聴することができる。このほか、自分の好みの番組をホームサーバーが記憶して自動的に録画できるなど、各社それぞれに個性のある製品が揃っている。価格もエントリーモデルであれば10万円程度とHDDとDVDの複合機と同等の価格設定で値頃感がある。
IDCジャパンの鈴木康介アナリストは「製品の拡張性から、新たなサービスのビジネスモデルを生み出す可能性を秘めている」と話す。
1年ほど前からホームサーバーを販売している日本電算機は、自社製品専用のコンテンツサービスも始めた。「独自のコンテンツがなければ差別化はできない」(石井孝利社長)と、製品の機能向上とともにコンテンツサービスを拡充する方針で、新たなビジネスモデルも模索している。
参入各社は、今後の展開に手応えを感じている。NECの越坂悦大・PC事業本部マーケティング本部商品企画部マネージャーは、「インフラの充実が普及を後押しする」と話す。「ブロードバンドの普及やモバイル製品の性能向上など、ホームサーバーのメリットを生かせる環境が整いつつある」とか。IDCの鈴木アナリストは、「HDDの認知度向上が大きく寄与するだろう」とする理由として、「ハードディスクレコーダの普及には約2年かかったが、ユーザーがメリットを感じ始めてきた」ことが大きいとしている。
パソコンショップでは、「パソコンの外部機器として使用するパワーユーザーを軸に購入層は広がっている」(カクタソフマップの井澤秀夫店長)と、市場の立ち上がりを確信している様子。
■「ここ1-2年が勝負」
一方、松下電器産業は、現在製品化を検討しているというが、「(ホームサーバーは)まだニーズが表面化していない。急いで製品化する予定はない」と冷ややかな態度。
ソニーは半年前に参入しているが、バイオで苦い経験がある。以前バイオでホームネットワークをキーワードにしたモデルを他社に先駆けて発売したが、ユーザーの反応はいまひとつで、バイオのシェアは激減した。「ネットワーク化が逆にユーザーの関心を損ねてしまった」(ソニーマーケティング)。
ソニーの場合、ホームサーバーの拡販には約20人の店頭強化部隊を組織。分かりやすさを徹底して訴えていく。
また、富士通の伊藤公久・経営執行役パーソナルビジネス本部長も、「ホームサーバーの分かりにくさは否めない。機能の向上より分かりやすさの提案の方が重要」と、まずユーザーの理解を求めていく、という意見。
機能と価格は少なくとも普及レンジに入ってきた。それだけに、豊富な機能をどう分かりやすく伝えるかが勝負の分かれ目になる。「ここ1?2年が勝負」。各社の市場予測は共通している。新市場の開拓に、好スタートを切ったメーカーが市場をその後も引っ張る可能性も十分考えられる。
ホームサーバーは普及するか――。ホームネットワークの核となる装置として注目を集め、この1年間でベンダー数社が製品化に踏み切った。参入各社は、まだ発売後間もないこともあり、際立った販売実績はないと口を揃えるが、将来の需要を見込み、普及への手応えを感じている。ホームサーバーの機能をどう訴えて、どのようにユーザーに浸透させていくかが課題だ。情報機器と家電の融合の“先駆け”ともいえるホームサーバーは、新たな市場創出の可能性を秘めている。(木村剛士●取材/文)
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