その他
システム販社 見えてきた成長戦略
2003/06/02 15:00
週刊BCN 2003年06月02日vol.992掲載
システム販社の成長戦略が明確になってきた。キーワードは、(1)自社アプリケーションソフトの拡充、(2)フルアウトソーシングの推進、(3)開発コストの削減――。これら3つをいち早く実現したシステム販社は、強気の成長戦略を描く。IT投資の総額は減少傾向にあるものの、成長基盤を整えたシステム販社は、増収増益に手応えを感じている。
カギはソフト&サービス
経済産業省の特定サービス産業動態統計によれば、情報サービス業の売上高は昨年7月以降、減少傾向が続いている。アルゴ21の大岡正明社長は、「特に中堅企業でIT投資が低調に推移している」と話す。
厳しい状況のなかでも、改革を進めるシステム販社の多くは手応えを感じる。2002年度(03年3月期)に増収増益を達成した日立情報システムズは、独自パッケージソフトと他社パッケージソフトをうまく活用した「パッケージアプリケーションインテグレーション(PAI)」戦略を打ち出す。02年度、PAIを適用したシステム構築の売上構成比は全体の約40%だったが、これを早い段階で50%に高める。
開発効率の高さや拡張性、価格、販売展開のしやすさなど、自社アプリケーションのプラットフォームとして「.NETフレームワーク」やLinux(Java)を選択するケースも多い。TKCや富士通ビジネスシステム(FJB)は主に前者を選択した。
また、アウトソーシングなど情報サービス分野でも、変革が進む。日本電子計算(JIP)の小倉勝芳社長は、「情報サービスのインターネット対応を進め、ここ1-2年を目途に同分野の対売上高比率を6割に高める」と話す。昨年度(03年3月期)の「情報サービス・インターネットサービス」の対売上高比率は45%だったが、粗利ベースでは過半の56%に達した。他の受託ソフト開発やハード販売の粗利率とは対照的な好成績だ。
日本ビジネスコンピューター(JBCC)は、今年5月にネットワーク運用センターを大幅に拡充した。ネットワーク機器の単価下落で昨年度(03年3月期)、前年度比マイナス17.9%と減収を強いられたネットワーク分野を立て直すためだ。同センターを軸に、ネットサービスやASP(サービスの期間貸し)へと、収益モデルの切り替えを急ぐ。
このほか、NECネクサソリューションズの松本秀雄社長は、「アウトソーシング関連事業の対売上高比率は約2割だが、これを今後2-3年で倍に拡大する」とし、また日本オフィス・システム(NOS)の尾嵩社長は、「SE(システムエンジニア)の移籍も含めたフルアウトソーシングの受注を進めることで、ソフト・サービス面における競争力を高める」と話す。
一方で、開発コストの低減も急務だ。富山市に本社を置くインテックは、ソフトウェア開発の外注先として約200社、延べ2万人以上のSEを使っている。これら外注先を選択して、北陸地区で巨大なソフトウェア工場を創出する構想や、中国などへのオフショア化を推進する。SRAは、自社でバイリンガルSEを養成し、米国やインドでのソフト開発を進める。
ビジネス環境の変化に柔軟に対応するIT概念として、IBMは「e-ビジネス・オンデマンド」、ヒューレット・パッカード(HP)は「アダプティブ・エンタープライズ」を提唱する。顧客の需要を捉えた戦略であろう。これと同じくして、アプリケーションパッケージやアウトソーシング、開発コストの低減などを基盤とした、システム販社独自のビジネスモデルの構築も急ピッチで進む。
システム販社各社の注力ポイント
【インテック】
ソフトウェア開発の外注費を大幅削減。北陸での「ソフトウェア工場化構想」の具体化。中国などへのオフショア開発の推進。
【NECネクサソリューションズ】
フルアウトソーシング事業を拡大。中堅・中小企業向けに焦点を絞り、ここ数年で、アウトソーシング関連事業の売上高を倍増へ。
【TKC】
.NETフレームワーク対応の自治体向け基幹システムの開発を急ぐ。合併で自治体の数は、05年3月までに約3分の2に減る見込みだが、新システム投入でシェア拡大を図る。
【日本オフィス・システム(NOS)】
徹底した収益構造の改革を推進。SE人材の移籍を含むフルアウトソーシングの受注を進め、ソフト・サービス面における人員を大幅に強化。
【日本電子計算(JIP)】
情報サービスのオープン化を進めることで、売上高に占める同分野比率を6割に増やす。ソフトウェアの受託開発やハード販売などは相対的に縮小。
【日本ビジネスコンピューター(JBCC)】
ASP(サービスの期間貸し)の拡充や、自社開発ソフトの販売網の整備など、ビジネスモデルの抜本的改革を急ぐ。5月にはネットワーク管理センターの機能を大幅に拡張。
【日立情報システムズ】
市町村合併を機に、独自に開発した自治体向け基幹システムのシェア拡大を目指す。また、SAPやアウトソーシングなど、伸びる分野、得意分野への注力を進める。
【富士通ビジネスシステム(FJB)】
.NETフレームワーク対応の基幹システムの独自開発を足がかりに、増収増益のビジネスモデルの基盤が完成。今年度(04年3月期)は増収増益を目指す。
システム販社の成長戦略が明確になってきた。キーワードは、(1)自社アプリケーションソフトの拡充、(2)フルアウトソーシングの推進、(3)開発コストの削減――。これら3つをいち早く実現したシステム販社は、強気の成長戦略を描く。IT投資の総額は減少傾向にあるものの、成長基盤を整えたシステム販社は、増収増益に手応えを感じている。
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