その他
私立大 生き残りかけIT武装に動く
2002/09/23 21:12
週刊BCN 2002年09月23日vol.958掲載
私立大学のIT投資が活発化している。学生数が減り続けるなか、ITを武器に生き残りをかける傾向が強まっているからだ。この動きを受けNECは、大学向けの情報システムを今年度末までに大幅刷新し、ほぼ完成したパッケージとして売り込む。対する富士通は、一足早くパッケージ化を済ませ、今年度は同パッケージ上で動く教育コンテンツの拡充に力を入れる。猛追する日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、主力の日本システム技術(JAST)の大学向け製品を今年度末までに安価なASPサービスにして、他社ユーザーを攻略する。
NEC、富士通はパッケージ販売で攻勢
私立大学のIT投資に詳しい桜美林大学の佐藤東洋士学長は、「大学にとってのITは、従来、図書館検索やLL教室(視聴覚室)程度でしかなかった。だが、今は大学経営の危機感も後押しして、ウェブによる履修登録などの学生サービス向上に始まり、eラーニング、大学経営を支える基幹系システムに至るまで、IT投資に力を入れる傾向が強まっている」と指摘する。
この需要に目を付けた富士通は昨年末、大学向けパッケージを大幅に刷新。ウェブ履修からeラーニングまで、学生サービス向上を主眼に据えたシステムに仕上げた。同パッケージは、今年4月に阪南大学、久留米大学、9月に相模女子大学、福井県立大学へそれぞれ納入し、来年4月には名城大学でも稼働を始める。旧バージョンの導入校を含めれば大学・短大合わせて200校に達し、同分野でシェア約40%を誇る。
富士通の寺田遂・公共営業本部文教ソリューション推進部長は、「大学向け情報システムの基盤を構築したのに続き、今年6月からeラーニング用の『コンテンツ(教材)パートナー制度』を立ち上げた。年度内には教材を揃え、来年度からはeラーニングも包含したパッケージに仕立てる」と話す。
一方、NECは、これまで大学個別に構築するシステムが主流で、パッケージをあまり意識してこなかった。だが、多くの私立大学が背に腹を変えられない状況にあり、学内のBPR(業務改革)も含めてパッケージの導入に走っている。これを受けてNECでは、「今年度末までには、学生サービス・満足度向上に主眼を置いた新しいパッケージを出す」(中山隆・文教ソリューション事業部第三営業部長)とパッケージ化へと大きく方向転換する。
中山部長は、「私立大学のIT投資額は、年間1400-2000億円と言われるが、市場そのものはここ数年ほぼ横ばい。IT投資ができる大学と、そうでない大学が二極化している」と分析。私立大学は約500校あるが、このうち学生数6000人以上の約80大学が、全私学学生数の60%を寡占する。その他、約420校で残り40%の学生を奪い合う。体力のある大規模校は、積極的なIT投資でますます近代化する一方、そうでない大学は投資さえもままならない。
日本IBMは、こうした体力の小さい中小規模大学向けのASPサービスを来年度から始める。日本IBMは日本システム技術の大学向けパッケージを担いでおり、今回のASPも同社製のシステムを使う。北島司・文教事業部長は、「ASPで自由度は狭いが、経費は3-4分の1で済むよう設定する。学生サービスの質は大幅に高まる」と話す。日本システム技術の平林武昭社長は、「パッケージが手軽だとしても、すべての大学がパッケージを動かすためのサーバーを運営できるわけではない」と、中小規模の大学を対象としたASP化を進める。
少子化で学生数の減少に加え、大学進学率も50%近くに達し、これ以上高まる見通しがない。すでに一部の学部は「Fランク」(フリー入学=名前を書けば入学できる)指定に陥り、さらに定員割れが進めば、私学助成金が得られなくなる。2008-09年には、全入時代に突入するのは必至という状況下で、ITは大学を救うことができるだろうか。
私立大学のIT投資が活発化している。学生数が減り続けるなか、ITを武器に生き残りをかける傾向が強まっているからだ。この動きを受けNECは、大学向けの情報システムを今年度末までに大幅刷新し、ほぼ完成したパッケージとして売り込む。対する富士通は、一足早くパッケージ化を済ませ、今年度は同パッケージ上で動く教育コンテンツの拡充に力を入れる。猛追する日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、主力の日本システム技術(JAST)の大学向け製品を今年度末までに安価なASPサービスにして、他社ユーザーを攻略する。
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