その他
ITSSPプロジェクト 情報化への意識改革を
2002/02/04 15:00
週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載
中堅・中小企業の経営者の多くは、大きな悩みを抱えている。それは情報化に対応するための人材不足だ。(谷古宇浩司●取材/文)
深刻な人材不足は、企業の戦略的な情報化に対する悩みや疑問を解決することが困難な環境を自ら醸成し、結果的に戦略的情報化投資の遅れにつながる。
ここでいう人材とは、IT技術に特化した専門家のことではない。経営者をITの観点から支援できる人材、経営的な観点を持ち合わせて戦略的にITを推し進められる人材を指す。
このような中堅・中小企業の悩みを解消するために誕生したのが、経営者のIT化を支援するプロジェクト「戦略的情報化投資活性化事業(ITSSP)」である。
このプロジェクトは、経済産業省と厚生労働省が、情報処理振興事業協会(IPA)を通じて次世代高度情報化社会に対応できる人材の育成を行うというもの。3か年の時限事業である。
ITSSPが推進する事業は大きく分けて、「経営者交流会」、「セミナー」、「企業訪問」、「情報提供」の4つがある。
基本は、中堅・中小企業からの参加者(ウェブ登録者1万人強、2002年1月現在)と経営・IT専門家とのマッチングの場を提供し、あるいは情報提供を行うことで、戦略的情報化に対する啓蒙活動を行う、というものだ。
では、専門家とはどのような人々か。中心となるのは、01年10月に誕生した「ITコーディネータ」である。
IPA人材育成推進部企画課の水上雅弘課長は言う。
「昨年10月の時点で559人の認定者が誕生した。この資格は、経営と情報技術双方に高度な知識と経験をもつ人材の輩出を目指している」
ITコーディネータ制度は、日本のIT投資を改善するとともに、企業の国際競争力の向上を目指すという国家プロジェクトから生まれた民間資格だ。
初回に誕生した認定者は、一般試験を通過して合格した人材ではなく、公認会計士や税理士などを対象に養成を行った。3年間の特例を設け、その期間内にある一定の条件(研修など)を満たせばITコーディネータとして認定される。
一般試験は昨年12月に実施された。一般試験の場合、通過者はITコーディネータ補として認定され、その後、実務経験を積み、知識研修を重ねたうえで正式なITコーディネータと認定される。
水上課長によれば、「かなりの狭き門」で、「応募総数約1600人のなかで試験に合格するのは1割以下ではないか」という。
試験の実施機関であるITコーディネータ協会(ITCA)では、今年度(02年3月期)までに約1000人のITコーディネータの資格取得者を見込んでおり、今後、同協会では、1年間に試験を2回開催する計画。「第2回ITコーディネータ補試験」は5月26日に実施される予定で、2月1日から3月29日までの期間、願書を配布中だ。
ITSSPの事業内容は、このITコーディネータが企業の参加者に対し、セミナーや経営者交流会を通じて、さらには個別の企業訪問によってアドバイスを与えることを活動の中核に据えている。
“アドバイス”という響きからはかなり軽い言葉に感じられる。
しかし実際は、ITの導入によって業務を改善するという、ほとんどコンサルティングに近い。
つまり企業側の意識次第では、IT化による企業構造改革につながる重みをもっているのである。
そもそも、日本にはコンサルティングというビジネスが根付いてこなかった歴史がある。
今でこそかなり意識改革が進んだとはいえ、情報=無料との認識が少なからず残っている。
米国にはITコーディネータに類する資格制度さえないのが、その証左でもあろう。
情報化への意識はありながらも、これまでは手が出せなかった中堅・中小企業の経営者に対し、まず情報とは無料ではないこと、そして情報化を推し進めることの優位性を啓蒙する取り組みが、初歩中の初歩とはいえ、重要な点である。
水上課長は「3年間の期限が切れる頃には、このようなことが当然となっているのではないか」と見通す。少なくともその道のりは平坦ではないといえるだろう。
中堅・中小企業の経営者の多くは、大きな悩みを抱えている。それは情報化に対応するための人材不足だ。(谷古宇浩司●取材/文)
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