これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「松元亮太・代表取締役CEO」を取材しました。
監査法人を1年半で辞めて起業
学生時代にビジネスマッチングサイトや、SNSを使った課金サービスの開発に挑戦するなど起業に向けた試行錯誤を続けたが、いずれもしっくりこないまま大手の監査法人に就職した。データ分析の部門に配属となり、実際に顧問先の企業グループの財務データを分析してみると、取引の実態や矛盾点、場合によっては不適切な行為まで赤裸々に見えてくるのに驚いた。同時に「本格的に起業するならデータ分析に関わる領域しかない」と確信。1年半で辞めて起業する。
部門を越えてカタログをつくる
企業活動で生まれるデータは、事業部門がさまざまなかたちでデータを管理している。企業規模が大きくなればなるほどデータ量は増え、分散の度合いも大きくなる。監査法人で主に見ていた財務諸表の種類よりも桁違いに多い。
経理担当が勘定項目ごとに仕訳するのと同様に、このデータは何で、正確さの度合いはどのくらいで、個人情報の有無などの札(メタデータ)をつける。「データの資産表をつくることでデータ活用が促進され、企業活動がより活性化する」と考え、データをカタログ化するクラウドサービスの会社を立ち上げた。
生成AI活用にもデータは必須
しかし、いざサービスを始めてみるとユーザー企業の部門の壁が予想以上に高いことを知る。事業部門から見れば自分たちが管理している重要なデータをおいそれとは出せないし、万が一のときの責任問題になるのも怖い。そこで部門担当者の懸念を取り除くべく、申請と承認のワーフクローをつくり、管理責任の所在を明確化。会社組織の中にデータを集める仕組みを実装できるようにした。
データを起点とした経営は企業の競争力に直結し、技術革新が著しい生成AIも企業が所有するデータをいかに活用するかがかぎを握る。「データカタログとワークフローを切り口に、国内だけでなく海外市場にも進出したい」と、データ分析で未来を切り開いていく。
プロフィール
松元亮太
1997年、兵庫県生まれ。2020年、大阪大学経済学部卒業。同年、KPMGあずさ監査法人入社。21年、Quollio Technologiesを創業。
会社紹介
メタデータを管理し、データカタログを作成する「Quollio Data Intelligence Cloud」を開発している。従業員数は約30人。