これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「アジャイルウェア・川端光義代表取締役CEO」を取材しました。
アジャイル開発の理念に共感
勤めていた会社を辞め、プログラマーとして独立して10年。度重なる仕様変更、無茶な納期、繰り返される長時間労働の現場を見てきた。デスマーチが頻発する状況を何とかしたいとの思いからアジャイル開発にのめり込むようになる。納期ありきではなく、人のアイデアを重視し、よりよい成果物を生み出そうとする理念に共感したからだ。
下請けになることが多いフリーランスは、ユーザー企業と直接接点を持つことが難しいことから、2012年に会社を立ち上げた。社名をアジャイルを連想させるアジャイルウェアとし、直接ユーザー企業に提案できる体制を整えた。
人口減でも持続可能な開発を
最初にアジャイルウェアの提案を支持してくれたのは、ある専門商社の情報システム担当者だった。
「彼はSIer出身で、私と同じように苛酷な開発現場を見てきたこともあり、徐々に完成度を高めていくアジャイル方式の開発手法を受け入れてもらえた」
就労人口が少なくなる中でも、持続可能な開発を行うためにアジャイル開発の手法は役立つとの信念から、起業して間もない頃からOSSの「Redmine(レッドマイン)」をベースとした独自のプロジェクト管理ツール「Lychee Redmine(ライチ・レッドマイン)」を開発した。
独自ツールが売り上げの8割に
単なる進行管理のツールではなく、システム開発の現場をよくしたいという思いを反映したこともあり、Lychee Redmineは順調に販売数を伸ばす。本年度(23年12月期)の会社全体の売上高は初の10億円台に乗る見込みで、うち8割余りをLychee Redmineのライセンス売り上げが占めるまでになった。
開発現場だけでなく、企業や社会をより健康に楽しくするため、歩数計による運動量の増加や社員交流を促進する「KIWI GO(キウイゴー)」を開発した。人生の中で「働いている」時間が最も長いのに、辛く苦しい現場では悲しすぎる。楽しく充実した働き方に変えていくことで人生は充実したものになり、会社や経済全体の成長につながると確信している。
プロフィール
川端光義
1976年生まれ、大阪府育ち。IT企業などで勤めたのち2002年にフリーのプログラマーとして独立。12年、アジャイルウェアを設立。
会社紹介
アジャイル方式によるソフト開発を手掛ける。自社商材としてプロジェクト管理ツールの「Lychee Redmine」や健康経営支援の「KIWI GO」を開発。従業員数は約60人。