これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「invox・横井 朗代表取締役CEO」を取材しました。
請求書1枚につき1円を寄付
子どもの幸せを願うのが親心だが、「世の中がよくならないのに、自分の子どもだけが幸せになるなんてあり得ない」との信念から、子ども支援のNPO団体に売り上げの一部を寄付してきた。主力の請求書受け取りサービス「invox」で、処理した請求書1枚につき1円を、保育支援などを手がけるフローレンスや、こども食堂支援のむすびえといったNPO団体に拠出してきた。
起業して間もない頃は「わずか数百円」だったが、ここ4年半余りでinvoxのユーザー企業は1万社を超え、寄付額も順調に増えた。自社は本年度(2023年11月期)に初の通期黒字化を見込むまでに成長している。
脱炭素でよりよい社会を
新しい事業を起こすことが好きで、サラリーマン時代も所属先の会社でいくつもの新規事業を立ち上げてきた。事業を通じてユーザー企業の課題を解決するだけでなく、「もっと広く社会課題に向かい合えるようにしたい」との思いで、自身の会社をつくった。
子宝に恵まれたタイミングでもあり、まずは育児支援のNPO団体への寄付から始めたが、「ゆくゆくは脱炭素に役立てるようなサービスも始めたい」と環境問題にも取り組む姿勢を示す。請求書の受け取りは「調達業務」と隣接している。ここを分析することでサプライチェーンのCO2排出量を測定し、ユーザー企業の脱炭素経営に役立てる構想だ。
100万社が使うサービスに育てる
invoxは派手な宣伝をしていないものの、価格を抑えたシンプルなサービスメニューにしたこともあって、当初の予想を上回る速度でユーザー数が増えた。従業員や、協力関係にある個人事業主、副業で参画する人たちの報酬もできる限り手厚くしている。社会への貢献と報酬、個々人のキャリアのバランスがとれる環境づくりが成長につながると考えるからだ。「将来的には100万社に使ってもらえるような、広く社会を支えるサービスに育てていきたい」と夢を語る。
プロフィール
横井 朗
1977年、東京都生まれ。2000年、東京工科大学工学部卒業。システム開発のビーブレイクシステムズでERP事業を担当。15年、クラビス(マネーフォワードグループ)入社。16年、取締役CTO。19年、ビジネス・ブレークスルー大学大学院でMBAを取得。同年、Deepwork(現invox)を起業。
会社紹介
請求書の受け取りや発行の代行、電子帳簿保存などのサービス「invox(インボックス)」シリーズを手がける。invoxサービスの利用社数は約1万社、従業員数は約50人。