これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Stock・澤村大輔社長」を取材しました。
世の中を突き動かすサービスを
学生時代、サイバーエージェントの藤田晋代表取締役をはじめ、新進気鋭の若手起業家に憧れた。「事業を起こす生き方もあることを、彼らは教えてくれた」と目を輝かせながら話す。
大手SIerに5年ほど勤務したのち脱サラ。有志とともに「世の中を突き動かすようなサービスをつくろう」と起業したが、具体的なサービス内容についてはほぼノープラン。「まずは100件アイデアを出して、そのなかから決めよう」という流れになった。
1社を除いて総スカンを食らう
最初に事業化を試みたのは、何万人ものモニターに顧客の商品のダメ出しをしてもらう“鬼突っ込み”だったが、集まってくる声の分析に予想以上の工数がかかり挫折。ほかにも多くのアイデアを試すうちに「どのアイデアをどのように議論して、どこまで進んだのか」が分からなくなる事態に陥る。
そこで、アイデアをストックしていつでも参照できる仕組みを自前でつくったところ、予想以上に使い勝手がよいため、商品化に向けて30社ほどの顧客に提案した。結果は惨憺たるものだったが、うち1社には「お金を出すから使わせてくれ」と評価してもらえた。
刺さる人には刺さる特色がある
「多くの人の“好き”より、一人の“熱烈な支持”を得ること」は、つまりほかにライバルとなるような類似サービスがない、あるいは少なくとも他社にはない特色が刺さる人には刺さることを意味している。しかも、少人数で世界中にサービスを提供できる形態であることが事業化への確信につながった。
アイデア100個のうちの1個を、1社の顧客から支持を得たストックの仕組みは、そのまま今の主力サービス「Stock」に引き継いだ。直近のユーザー数は10万社を超え、有料ユーザーもここ2年で約3倍に増えた。起業から6年目の2020年には社名をStockに変えた。次は「世界市場に向けて踏み出すタイミングにきている」と夢を膨らませる。
プロフィール
澤村大輔
1986年、東京都生まれ。2009年、早稲田大学法学部卒業。同年、野村総合研究所入社。14年、リンクライブ(現Stock)を起業。18年、情報共有ツール「Stock(ストック)」のサービスを開始。
会社紹介
情報共有ツール「Stock」を開発。書き込んだ情報が埋もれて見つけにくくなるチャットやメール、リアルタイム性に欠けるファイル保存の弱点を補う位置づけでユーザー数を伸ばしている。従業員数約20人。