アクセルを踏みたい
2020年1月に正式版をリリースしたエッジAIプラットフォーム「Actcast」は急拡大の真っ只中だ。今年4月、累計登録台数が1万5000台を突破した。大手小売店の店頭や接客カウンターなどにActcastが入ったカメラやマイクが導入され、1案件あたりの導入台数が急増している。
リテール領域で成果を残した次のターゲットは製造業や公共交通分野だ。「プラットフォームビジネスは規模が大きくなるほど、プラットフォームの価値が高まり、さらに成長できる。今はアクセルを踏みたい」。
データ化が第一歩
自社のビジョンは「ソフトウェア化された世界を創る」。ソフトウェアの特徴は「早く」「大規模に」「変化」できること。ダイナミックに絶え間なく変化し続け、よりよい方向に進む世界。エッジAIによって社会の隅々までデータ化できれば、そんな世界も夢物語ではない。
「実世界のプロセスをソフトウェアに置き換える。その第一歩であるデータ化は、われわれにしかできない。世界をデータ化し、いつどこで何が発生するかを予測できるようにしていく」
ビジョンには、海外勢の後塵を拝する日本のソフトウェアビジネスを変えたいとの願いも込められている。「ソフトウェアの専門家として、なぜ日本でソフトウェアビジネスが大きくならないか、それなりにわかる」。だからチャレンジしたい。
人間は新しい場所へ進む
世界のデータ化を推し進めた先に人間はどうなるか。この問いに「劇的に変わることはないかもしれないが、人間がやるべきことに時間を使えるようになる」と答える。
消える職種もあるだろう。ただ、それも「人類の進歩」だと受け止める。なぜなら、人間が「自分たちの新しい価値を考え、新しい場所へ進んでいける」からだ。
変わり続ける世界に対峙することで、人間もまた、アップデートできる。そう信じている。
プロフィール
中村晃一
1984年生まれ。2015年、東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程を中退し、Ideinを設立。大学では主に高性能計算のための最適化コンパイラ技術を研究。18年には英アームの「ARM Innovator」に日本人として初めて選出される。
会社紹介
エッジAIによる現場データ収集プラットフォーム「Actcast」を展開し、AI/IoTシステムを開発・導入・活用する開発者や事業会社へサービスを提供する。英アームのAI Partnerや米エヌビディアのInception Program Partnerにもなっている。