地域No.1店舗の売れる秘訣

<地域No.1店舗の売れる秘訣 あの人気店はこうしてつくられた>BUY MORE秋葉原本店 ――ユニットコムグループを集結 パソコン専門店の新しい姿へ

2013/11/21 18:44

週刊BCN 2013年11月18日vol.1506掲載

 東京・秋葉原電気街に、ユニットコムが運営する新ブランドのパソコン専門店がある。BUY MORE秋葉原本店だ。グループのパソコン専門店、パソコン工房やFaith、組み立て用パソコンパーツ専門店のTWOTOPなどが扱っていた商品を集約。加えて、マウスコンピューターが提供するパソコン/液晶ディスプレイ「iiyama」のショールームとしても機能している。ユニットコムグループのノウハウを集結し、パソコン専門店の新しい姿を確立しようとしている。(取材・文/佐相彰彦)


BUY MORE秋葉原本店

ユニットコム 奥井一毅 秋葉原担当SV
【店舗データ】
住所:東京都千代田区外神田3-14-10 秋葉原HFビル1F
オープン:2013年3月1日
目標とする新規客層:パソコン初心者
従業員:約15人

【責任者が語る人気の理由】
 「縮小するパソコンやパーツ市場と、都市再開発によって活性化する秋葉原。このジレンマを解消したのがBUY MOREだ」と、奥井SVは断言する。大阪などで店舗を経験し、バイヤーとして10年以上にわたって秋葉原地区を担当。BUY MORE秋葉原本店のオープンにあたって、1年ほど前にバイヤーと店舗責任者を兼務するかたちで現場に復帰した。長く秋葉原の街を見てきた奥井SVは、ここを「進化してはいるが、昔ながらの風景も残っていて、おもしろ味のある街」と評する。BUY MORE秋葉原本店の売上高については、「TWOTOP秋葉原本店だった頃に比べ、倍以上の計画を立てている」と自信をみせる。

活性化する電気街のなかで お客様の獲得競争が激化

 秋葉原をIT産業の世界的拠点にするという目標を掲げた秋葉原クロスフィールドの竣工、ヨドバシカメラの進出など、2000年代後半の都市再開発によって、多くの人で賑わうようになった東京・秋葉原。街の活性化の成功事例として、全国から注目が集まる街だ。古くからある電気街には、最盛期に比べれば数は減ったものの、多くのパソコン/パーツの専門店が軒を連ね、コミック・アニメなどサブカルチャー関連の商品を扱っている店舗も多く、パソコンやデジタル機器の買い物客、コアなマニアなどが訪れる街として定着している。

 パソコン市場の成熟とともに衰退していた電気街は、街の発展によって復活した。しかし、パソコンの販売で収益を上げるには、依然として市場の環境は厳しい。しかも、全メーカーのほとんどの機種が揃ったヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの存在がある。電気街の店舗でパソコンを購入する客は少なくなっている。パソコンパーツに関しても、価格競争がますます激しくなっている状況だ。

 そこで、パソコン/パーツ専門店は、パソコンの販売は維持しながら、新品・中古品を問わず、スマートフォンやタブレット端末の販売に力を入れる店が目立ってきた。

 パソコン専門店とパーツ専門店の両方を運営するユニットコムは、グループで秋葉原に3店舗を構えていた。しかし、BTOを中心に自社ブランドのパソコンを販売するパソコン工房やFaith、パーツ専門店のTWOTOPなどと扱う商品によって店舗ブランドを分けていることが、とくに都市圏では非効率であると考えていた。そこでBUY MORE秋葉原本店として店舗を統合し、再出発に踏み切った。

BUY MORE秋葉原本店はパーツ専門店が軒を連ねるエリアにある

都市再開発で活性化したJR秋葉原駅周辺は毎日多くの人で賑わう

パーツユーザーを確保しながら新たにパソコン初心者を獲得

 BUY MORE秋葉原本店のオープンは今年3月1日。以前、TWOTOP秋葉原本店があった場所だ。責任者を務めるユニットコムの奥井一毅・秋葉原地区担当SVは、店舗のコンセプトを「グループで扱う商品をすべて販売している統合的なパソコン専門店」と説明する。

 オープン当初は、パーツを中心にBTOパソコンも販売するというビジネスモデルだったが、10月18日、液晶ディスプレイ「iiyama」ブランドのパソコン販売を機に、店内をリニューアル。店内に入ると、向かって右側にパーツ、左側にパソコンを展示したレイアウトに改めた。入り口近くの「iiyama」コーナーは、ガラス張りの外壁にして店内が見えるようにしたほか、白を基調にショールームのように仕上げた。奥井SVによれば、「オープン時は、これまでTWOTOPをご利用いただいていたお客様の確保を重視していた。『iiyama』ブランドでパソコンを本格的に販売するようになり、あまりパソコンに詳しくないお客様でも気軽に来店できる環境づくりに力を注いだ」という。

店内に入ると、向かって右側にパーツ、左側にパソコンを展示したレイアウトに改めた。

 パソコンの販売を担当するスタッフは、全国のパソコン工房から集めた。「地方のパソコン工房は、郊外型店舗として近隣のお客様が来店されるケースが多く、初心者を多く獲得している。このノウハウを電気街でも実現する」という。

パソコンの販売を担当するスタッフは、全国のパソコン工房から集めた。

 パーツに関しては、マザーボードやCPUなど、競合店でも販売している商品の充実に力を入れていることに加え、SAS/SATA RAIDなど、法人向けの商品も販売している。しかも、スタッフの約7割はパーツの販売の担当だ。「電気街で店舗を構える以上、パーツに関しては、深い知識をもつスタッフと豊富な品揃えが必要。競合店に負けない体制が、お客様を増やすポイントになる」(奥井SV)。

競合店でも販売している商品の充実に力を入れていることに加え、SAS/SATA RAIDなど、法人向けの商品も販売している。

 BUY MORE秋葉原本店は、自作パソコンユーザーを満足させる接客で、TWOTOPに来店していたお客様を継続して獲得し、さらに他店では取り扱っていない商品で新たなお客様を獲得している。「iiyama」ブランドを手がけることでパソコン初心者が来店するようになったほか、「最近では、女性やファミリーも来店する」という。

自作パソコンユーザーを満足させる接客で、TWOTOPに来店していたお客様を継続して獲得

 パソコン市場の成熟と自作ユーザーの減少によるパーツの販売減によって、パソコン/パーツ専門店は少なからず厳しい状況にある。そのなかで、ユニットコムグループは新しい店舗形態を模索して、BUY MORE秋葉原本店をかたちにした。今後、秋葉原での成功をほかの地域でも展開していくという。

【人気の理由】
・パソコン初心者とパーツユーザーの両方が来店できる店内レイアウト
・競合店にはないパーツの品揃え
・パソコン/パーツともに知識豊富なスタッフの配置
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