店頭流通
アドビシステムズ プリペイドカード方式での販売の意味 売り手、買い手ともにメリットを享受
2012/08/30 18:45
週刊BCN 2012年08月27日vol.1445掲載
盗難を防ぎ、在庫リスクなしに
アドビシステムズは、アップルの「iTunes Card」に採用されていることで知られるPOSA技術を提供するインコム・ジャパンの協力を受けて、同社のクリエイティブ統合ソフト「Adobe Creative Suite」を購入できるプリペイドカードの販売を開始した。カード化したのは、Creative Cloud商品をクラウド環境で3か月と12か月の期間内で使い放題の「Adobe Creative Cloudメンバーシップ個人版」と、「Adobe Creative Suite6(CS6)」で提供する各製品のサブスクリプション購入時に使用できるものの2種類だ。カードの発売時期(6月下旬)は、米国のベストバイなど、日米同時とした。日本ではヤマダ電機、ビックカメラ、今年5月にビックカメラが買収したコジマ、ヨドバシカメラの4社の全国店舗で販売を開始し、7月に上新電機が加わった。今後、POSA技術をPOSレジのシステムに移植が済み次第、エディオンとPCデポなどにも展開が広がる見通しだ。
インコムが開発したPOSA技術は、POSレジで支払いが完了した時点で対象カードを有効化できる仕組み。そのため、店舗では、盗難や在庫のリスクがなくなるだけでなく、「パッケージ製品よりもコンパクトなので展示スペースを取らず、店舗規模の大小を問わずに柔軟な販売展開が可能になる」(佐野守計・チャネル営業統括本部長)と胸を張る。パッケージ製品に使っていたスペースをPOPの配置用にするなど、場所を有効活用できるだけでなく、中小規模店にも置ける。また、新規顧客の獲得も期待できるという。量販店にとっては、ウェブのダウンロード販売に取られていた売上高をリアル店舗で稼ぐ効果があるわけだ。
家電店以外の小売店へも広がるか
佐野守計 チャネル営業統括本部長 |
顧客は、「アドビ キーカード」を購入して使用する時点の最新バージョンを手にすることができる。顧客、流通業者、メーカーの三者にとってメリットを生む仕組みといえる。佐野本部長は「量販ビジネスを再構築するチャンスだ」として、「アドビ キーカード」の認知度が高まり、消費者の購入スタイルが定着すれば、ドン・キホーテやローソン、ソフトバンクの携帯ショップなど、POSA技術に対応したPOSシステムを導入している販売店に売り込んでいくことも検討しているようだ。
全国の家電量販店とPC販売ショップ、電子商取引サイトの実売データを集計しているBCNランキングによると、ソフトの店舗販売は、2011年の年間販売本数は前年比8.1%減、金額では7.4%も落ち込んでいる。この低落傾向を食い止める有効な策はなかなか見当たらないが、POSA技術を使ったアドビの販売手法は、ソフトの売り上げを伸ばす可能性が期待できる。
IT機器・ソフトを扱う家電量販店以外のスーパー・小売店向けには、一部のソフト会社が小型パッケージで書籍スペースに並べて販売をしているが、量販店のように説明員がいない店舗ではなかなか実績が上がらないようだ。ただ、アドビ商品のように、すでに商品内容を熟知するユーザーが多い場合は、説明員がいなくても売れる可能性が高い。身近な場所で購入できるメリットを追求できれば、「アドビ キーカード」は家電量販店以外の販路にも広がりそうだ。
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