時の人
<インタビュー・時の人>Evernote 日本ジェネラル・マネージャー 井上 健
2012/08/30 18:44
週刊BCN 2012年08月27日vol.1445掲載
「記憶を記録する」で会員獲得 法人向けビジネスにも着手
Q. 日本でのビジネスはどのような状況か。A. 「Evernote」の会員数は、世界で3400万~3500万人に達しており、その約10%が日本語サイトを経由する会員だ。2010年3月の日本向けサービス開始からまだ2年半だが、会員数は順調に推移している。
Q. 「Evernote」の強みはどこにあるのか。
A. 他社が提供しているオンラインストレージサービスは、ユーザーの多くがパソコン、スマートフォンやタブレット端末など、スマートデバイスのデータ保存に利用していて、ファイルを蓄積する目的で使われているものが多い。「Evernote」は、オンラインメモツールとして、ユーザーの日常生活のできごとを写真や音声、ウェブページも含めて記録して蓄積する。「記憶を記録する」という点が強みだ。
Q. 「記憶を記録する」メリットは?
A. 「そういえば、あのときは……」などと、思い出すことができる。ユーザーにとっては、年月がたてばたつほど価値が出るデータになることがメリットだ。
Q. 事業の拡大に向けて、どこに力を入れていくのか。
A. 引き続き会員を増やすことに力を入れていく。今の日本の会員は、ITリテラシーの高い人が多い。しかし本来「Evernote」は、誰でも使えることをコンセプトに据えているサービス。もっと多くの人に使ってもらいたいと考えている。そのために積極的に進めているのが、ほかのウェブサービスとの連携で、開発者向けにAPIを公開している。こうした活動で、できるだけ多くの人が「Evernote」に触れる環境を整えていく。
Q. 一般消費者を中心に会員を増やすのか。
A. まだブランドの認知度が足りないので、まずは一般市場での広がりを期待している。また、企業内個人にも使ってもらうために、今年秋をめどに法人向けサービスの提供を予定している。「Evernote」は、オンラインを通じてホワイトボードに社員がアイデアを書き込んでいくような感覚で使える。セキュリティの強化やサポート体制などを整備してサービス開始へと進めていく。また、SIerやディストリビュータとパートナーシップを組むなど販売体制を整えることも模索したい。
Q. 当面の目標は?
A. 会員数を1000万人に伸ばすことだ。具体的な達成時期は定めていないが、2年間で今の会員数になったこと、これから会員数のすそ野を広げる活動に取り組むことを念頭に置いて、できるだけ早い時期に達成したい。1000万人を達成することができれば、有料サービスの充実を図るなど、売り上げを確保するための策を講じることができると確信している。会員数を増やして黒字化を実現する。
銀行に勤務していた頃、研修で米国に留学。NECに出向するかたちで米シリコンバレーで戦略部門の立ち上げに参画し、「シリコンバレーのパワーに圧倒された」という。「自分自身で切り開いていくプロの生き方を目の当たりにした」。サラリーマンの立場で仕事をしていた自分には甘えがあったと思い知らされた。これがターニングポイントになって、ネット・インキュベータのネットエイジに転じた。
その後、複数のベンチャー企業を渡り歩いてEvernoteにたどり着く。今は社員が数人でも、将来の成長を描いて充実した日々を送る。
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