デジタルトレンド“今読み先読み”
<無線LAN>ユーザーのすそ野拡大が好調を支える スマートデバイスの普及が後押し
2012/08/23 16:51
週刊BCN 2012年08月13日vol.1444掲載
さまざまなデバイスをつなぐホームネットワーク
これまでパソコン周辺機器だった無線LAN機器が、ホームネットワークの中核機器として位置づけられるようになっている。実際に家電量販店では、無線LAN機器を中心としたコーナーが、パソコン周辺機器売り場だけでなく、薄型テレビやスマートデバイスの売り場でも展開されている。無線LAN環境にすれば、家の中のどこにいてもインターネットにつなげて、ノートパソコンで動画サイトやネットショッピングなどのウェブサービスを利用したり、モバイル型ゲーム機でネットゲームを楽しんだりできる。また、薄型テレビやレコーダーも相互接続規格「DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)」対応機器や、パソコンの機能とテレビの機能を融合した新しいテレビ「スマートテレビ」ならば録画コンテンツも部屋などの制限がなく楽しめる。さらには、スマートフォンやタブレット端末といったWiーFi機能をもつスマートデバイスのアクセスポイントとして無線LAN環境を構築する例も多い。
LAN内にある機器同士でデータを共有できるというホームネットワークのメリットを生かして、家庭内にある大量のデータの保管を目的に、ネットワーク対応ストレージ機器「NAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)」を設置する家庭もみられるようになってきた。
簡単設定でハードルを下げる公衆無線LANの普及もカギに
ホームネットワークのメリットと合わせて、ユーザーのすそ野を広げているのが、「無線LANは設定が難しい」という懸念を払しょくする動きだ。無線LAN機器の設定は基本的にPCを利用するが、スマートデバイスユーザーのなかにはパソコンをほとんど使わない人もいるし、扱いに不慣れな人もいる。こうした人たちでも、無線LANを簡単に設定できる仕組みが、普及に弾みをつけた。バッファローは、ボタン一つで簡単に無線LANの設定ができる規格「AOSS」を進化させ、スマートデバイスからでも設定できるようにした「AOSS2」を開発。今年6月には「AOSS2」を搭載した無線LAN機器を発売し、スマートデバイスユーザーの需要を喚起している。アイ・オー・データ機器でも、無線LANルータにQRコードを貼付し、スマートデバイスでQRコードを読み取って専用アプリ「QRコネクト」にアクセスすれば設定が完了する仕組みを採り入れた。
これらメーカー側の改善努力もあって、家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で無線LAN機器の販売台数は、2010年7月以降、前年同月を上回って推移。家電量販店では、安定して収益が確保できる商材と位置づけているという。
世の中は確実に無線LAN化に動いている。例えば、通信キャリアは駅やカフェなどで公衆無線LANのアクセスポイントを増やしているし、会社内でも無線LAN環境を整備している企業は多い。これらの場所で、ノートパソコンやモバイル型ゲーム機、スマートデバイスのユーザーが無線LANを体験すれば、自宅にも便利な無線LAN環境を構築したいと考えるだろう。無線LANにつながるデバイスの増加や社会の無線LAN環境の広がりとともに、無線LAN機器はさらに扱いやすくなり、ユーザーのすそ野は拡大傾向をたどっていくはずだ。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
- 1