時の人
<インタビュー・時の人>dts Japan 代表取締役社長 小玉章文
2012/06/28 18:44
週刊BCN 2012年06月25日vol.1437掲載
「高級志向」と「こだわり」で差異化
薄型テレビなどハードの音質技術を追求
Q. ビジネス領域であるデジタル音声コーデックの国内市場を、どのようにみているか。 A. 米国では、コンテンツの音質向上がポイントになっているが、日本ではコンテンツを受ける側、つまり、AV(音響・映像)機器の音質を向上させることがカギを握る。とくに、地デジ化で普及した薄型テレビの音質がよくないという声を聞く。きょう体を薄くしてスピーカーの数を減らせば、どうしても音に迫力がなくなってしまう。そこで、当社は日本のテレビメーカーとのパートナーシップを深めることに力を注いでいる。また、最近はスマートフォンで音楽を聞く人が多いので、モバイル端末に当社の技術を搭載してもらえるよう、メーカーにアプローチをかけている。
Q. 競合との違いはあるのか。
A. 差異化策として講じていくのは、当社の技術を搭載すると高品位な音になるということだ。競合は大手が多く、誰もがロゴを知っている一方で、当社の認知度は低い。そこで、どの機器にも搭載するのではなく、例えば各ハードメーカーの上位機種に当社の技術を搭載してもらえるよう、環境を整えていく。当社の技術は、競合よりも高音質で価値の高いものだとユーザーに理解してもらうことが重要だ。「高級志向の音質」「こだわりの音質」などをコンセプトに取り組んでいく。
Q. 具体的な取り組みは?
A. 高音質をユーザーに理解してもらうために、昨年、東京・原宿にあるアウディのショールーム「Audi Forum Tokyo」で体感イベントを開催したところ、クルマの購入を検討していた来場者から高い評価をいただいた。「高級車だからこそ、dtsの技術によっていい音を奏でている」ということをアピールできたと思う。引き続き、このような体感イベントを開催しながら、並行してハードメーカーに対して提案を行っていく。
Q. 新技術の投入を予定しているか。
A. まだ詳細を話すことはできないが、音のソースに対してではなく、これまでとは発想を変えたアプローチで高音質を実現する新技術を、今年秋頃には投入する予定だ。現在、社内で調整している段階で、その技術を世に出すときには、今以上に技術力を訴求ポイントに、他社との違いをアピールしていく。
Q. 次のステップとして考えていることは?
A. 今後、音のデジタル化が進むなかで、米国と同様に日本でもコンテンツに音声コーデックを搭載する動きが出てくるだろう。その時には、次のステップとして、コンテンツプロバイダとアライアンスを組んで、誰もが当社の技術で質の高い音を聞くことができる仕組みを提供したい。
大学卒業後、とくに動機もなく宝飾業界の大手企業に入社した。仕事とプライベートを切り分けた生活が続くなかで、学生時代の仲間とヨットレースに出場。一つの目標に打ち込んでいたヨット部の頃の気持ちがよみがえり、「ヨットのように何が起こるかわからないというのが性に合っている」と気づいた。その後、会社を退職して外資系メーカーに入社。日本法人の立ち上げに携わるようになる。 変化の激しい充実した業界で20年以上の歳月が過ぎた。「将来がみえないからこそ、やりがいがある」という。
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