デジタルトレンド“今読み先読み”

PCビジネスは新たなステージへ 「ウルトラブック」がけん引

2012/04/05 16:51

週刊BCN 2012年04月02日vol.1426掲載

 コモディティ商品になったといわれて久しいパソコン(PC)。そのPCビジネスが新たなステージに入ろうとしている。スマートフォンやタブレット端末に刺激を受けるかたちで、メーカー各社は改めて個人のライフスタイルや使い方に合ったモデルの開発に取り組み始めた。とくに、薄く、軽く、ファッション感覚で持ち歩ける新時代のノートPC「ウルトラブック」は、市場規模再拡大の原動力として期待されている。

店頭販売は前年比増を継続 役割の再認識で活性化

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、今年年初からのPCの週次販売台数をみると、前年を若干下回る週はあるものの、デスクトップPC、ノートPCとも、堅調に販売台数を伸ばしている。これは、上位機種を中心に手頃な価格で購入しやすくなったこと、スマートフォンやタブレット端末のデータバックアップをPCで行うという新しい用途が出てきていることなどが要因だ。ちなみに、昨年の販売台数前年比はデスクトップPCが115.1%、ノートが107.0%だったので、増加傾向は昨年から継続していることになる。


 コモディティ化したPCではあるが、スマートフォンやタブレット端末の登場で息を吹き返したとみることもできるだろう。一般ユーザーは、こうした新ジャンルのモバイル端末とPCを比較し、それぞれの役割を理解したうえで、PCの機能や用途を再認識して買い替えているのだ。

 一方、家電量販店にとってのPCは、粗利率は低いが、これをベースにソフトや周辺機器、光サービスやモバイル高速通信サービスなども提案することができるなど、販売機会が広がる商材。こうした一般ユーザーや家電量販店のPCに対する意識を考えれば、今後もPC市場が拡大していく可能性は十分にあるということになる。

機能を押さえながらデザインにもこだわる

 PC市場の過去を振り返ると、インターネットの普及とともに急拡大した2000年当時の市場規模は1400万台前後。その後、横ばいから縮小傾向が続き、2010年から再び上昇し、2011年は1500万台前後になった。ここ2年は伸びているものの、10年前と比べて市場がそう大きくなったわけではない。総務省の「通信利用動向調査報告書」によれば、2011年のPC普及率は83.4%と、コモディティ化しているのも事実だ。

 市場を再拡大に導く方策は何か。メーカーはその一つとして、PCを道具としてだけでなく、親しみやすいファッションの一部として浸透させるステージに進んだ。その代表が、CPUメーカーのインテルが提唱する薄型・軽量・高性能のノートPC規格「ウルトラブック」だ。

ASUSが発売した「ASUS ZENBOOK UX21E」春限定カラー「さくらピンク」

世界最軽量を実現した東芝の「dynabook R631」

 「ウルトラブック」は、厚さ2cm以下という薄型・軽量ボディで携帯性を高めながら、インテルの超低電圧CPUなどによる高性能を実現したノートPC。ハードのスペックもさることながら、メーカー各社はデザインでも競い合っている。インテルの宗像義恵取締役副社長は「ウルトラブック」を提唱した立場から、「これまでのPCは事務用品というイメージだった。『自分に合うブランド』として、ユーザーがファッション感覚で、デザインにこだわって持つアイテムにしなければならない」と、このデザイン競争にエールを贈る。

ボディにガラス素材を採用した日本HPの「HP ENVY14 SPECTRE」

13型液晶でも11型のボディ デルの「XPS 13」

 商品がコモディティ化すれば、ユーザーはどのメーカーのモデルも同じに見えてしまう。ボディを開ければ並ぶパーツはそう変わらず、機能面を含めてできることもほとんど同じ。「どれを買ってもいっしょ」「今、無理して買わなくてもいい」と思えば、買い替えサイクルは長くなる。この「古くなったら買い替える」という意識を払しょくし、機能は機能でしっかりと押さえながら、デザイン面で独自性を出すことで、ファッション品のように購入意欲を沸き立たせる──。新製品発売のたびにユーザーがワクワクするようになれば、PC市場がさらに拡大する要素の一つになるだろう。「ウルトラブック」は、年末までに各社から75機種が登場する予定だという。(佐相彰彦) 


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
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