時の人
<インタビュー・時の人>NECパーソナルコンピュータ 代表取締役執行役員社長 高塚 栄
2012/03/15 18:44
週刊BCN 2012年03月12日vol.1423掲載
目の前の現実に疑問を抱くことが「おもしろいパソコン」につながる
Q. 社長に就任して、今、どのような方向に会社を導こうと考えているのか。A. NECのパソコン事業は歴史があり、販売パートナーやお客様からはご信頼いただいている。お客様に安心して、快適・簡単に使っていただけるパソコンの提供という、以前から掲げてきたコンセプトを変えるつもりはない。ただ、「高塚さんが社長になって変わることはあるのか」との声が多くの販売パートナーから上がっており、これには応えたい。われわれはレノボとの合弁で誕生し、業界に大きなインパクトを与えた。これを踏まえて、挑戦的なパソコンを発売していく。これまで、手堅い売れ筋モデルを発売していたが、これは裏を返せば、販売パートナーに新しいことを提案するモデルではなかったということ。これからは、安心・快適・簡単をきっちり守りながら、「おもしろい」と評価されるパソコンを開発していく。
Q. 「おもしろいパソコン」の開発にあたっての課題は?
A. 現在、パソコンやテレビ、そしてスマートフォンやタブレット端末など、さまざまなデバイスがあり、それらのシームレスな連携に注目が集まっている。当社は、パソコンを核にスマートフォンやタブレット端末がつながる世界を描いているが、それはパソコン側からだけで発想していては実現しない。そこで、開発者をはじめとする社員が、スマートフォンやタブレット端末を日常生活で実際に使って、目の前の現実に「疑問」を抱くことから始めた。これが、新しい製品を生むと確信している。
「疑問」をビジネスに落とし込むには、組織と組織の関係を密にして、日頃から考えを共有しておくことが必要だ。そこで、まずは執行役員が活発に意見を出し合う場をつくった。この「執行役員連絡会議」では、資料はA4判で1枚だけ。わからないことはその場で質問する、というルールを設けている。組織の責任を任されるようになると保守的になりがちなので、それを打破するために設置したのだが、予想以上にコミュニケーションが活発になった。今後は、部長レベルや現場レベルで、組織を越えてコミュニケーションを図る環境を整える。
Q. NECとレノボが、合弁会社として設立したメリットは出ているのか。
A. 「ThinkPad」の堅牢性をNECブランドのパソコンに取り入れることや、地デジチューナーの技術をレノボブランドのパソコンに生かすなど、技術的な連携を強化する。設立1年を迎える今夏頃には、現実のものにする。
Q. パソコン市場でトップシェアを維持できるか。
A. トップであり続けることにはこだわっていく。当社のパソコンを選べば、スマートフォンやタブレット端末との連携を含めて、誰でも安心・快適・簡単におもしろい使い方ができる。そのようなイメージを浸透させたい。
NECに入社し、マイクロコンピュータの販売部門に配属された。1979年の「PC-8001」発売からは、必然的にパソコンの販売に従事した。今もパソコン関連事業に携わっており、しかもトップとして手腕を振るう。「30年以上もこんな魅力的なアイテムに関わっていられるのは、本当に幸せだ」と語る。
パソコン部門に配属された時は、「何が何だかわからなかったが、がむしゃらだった」と振り返る。しかし、「パソコンが誕生した時のワクワク感は、今でも忘れられない」という。その後、ワクワク感はむしろ色濃くなっていった。入社時点で、すでにターニング・ポイントが訪れていたのである。
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