デジタルトレンド“今読み先読み”
コンパクトデジカメは生き残るか──スマートフォンとの連携に活路
2012/03/08 16:51
週刊BCN 2012年03月05日vol.1422掲載
一巡した需要にスマートフォンが追い打ち
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、この6か月のコンパクトデジカメの販売台数前年同月比をみると、新製品の発売が多い10月以外は前年を下回っている状況だ。年末商戦の12月でさえ91.9%と2ケタ近い減少を記録した。いかに消費者に対して新たな提案ができていないか、あるいはその提案が受け入れられていないかがわかる。コンパクトデジカメは、「需要が一巡した」といわれる商品だ。欲しい人はすでにもっていて、現在の購入者は多くが買い替え需要。家電量販店の関係者によれば、「買うモデルが決まっているお客様が買っていく」という。接客応対なしで売れていくので、売る側にとっては楽な商材だが、裏を返せば接客しても多くは売れない商材でもある。
また、家電量販店のコンパクトデジカメコーナーは、一つの棚に並ぶ商品数が多い。これは各社のラインアップが充実していることの現れでもあるが、来店者には「似たようなモデルばかり……」と受け取られてしまいかねない。家電量販店が口を揃えて言うように、「コンパクトデジカメはコモディティ化した」ということだ。
売れ行き不振の大きな要因は、よくいわれるように、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能が充実したことにあるだろう。とくにスマートフォンについては、カメラとインターネットがつながるという点が大きい。従来型の携帯電話からスマートフォンに買い替える人は、アプリやSNSを活用したいと考えている。撮った写真をその場でTwitterやFacebookで共有するのは、SNSではあたりまえだ。そんな楽しみがスマートフォン一台で完結するなら、デジカメはいらない──これがコンパクトデジカメの販売を減少させている。
撮った写真をSNSで即共有 Wi-Fi機能搭載モデルが登場
では、コンパクトデジカメに未来はないのだろうか。カメラメーカーにとって、コンパクトデジカメは、老若男女、幅広い層のユーザーを囲い込むことができる魅力的な市場だ。各社はその価値を追い求めて、いわば“敵”であるスマートフォンの人気を利用した道を模索し始めた。今年2月9~11日に開催されたカメラと写真映像の展示会「CP+2012」では、コンパクトデジタルカメラの新機能として、Wi-Fi機能をアピールするメーカーが多かった。キヤノンは、2月下旬に発売予定の「IXY 1」「IXY 420F」にWi-Fi機能を搭載。専用アプリ「CameraWindow(for iOS)」をダウンロードしたiPhoneやiPadに、カメラで撮影した画像や動画を送信することができる。ソニーは、「Cyber-shot」シリーズで3月9日発売予定の「DSC-TX300V」にWi-Fi機能を搭載する。専用アプリの「PlayMemories Mobile」をインストールしたスマートフォンやタブレット端末で、カメラ内の静止画を閲覧したりFacebookやTwitterなどにアップしたりできる。
富士フイルムも、2月18日、撮影した画像をスマートフォンや携帯電話に送信して友人とシェアできる「FinePix Z1000EXR」を発売。無線LANを利用した「スマートフォン送信機能」と、赤外線による「高速赤外線通信機能」を備える。スマートフォンの場合は、無料専用アプリ「FUJIFILM Photo Receiver」をインストールすれば、Android搭載スマートフォンやタブレット端末、iPhone、iPadにカメラで撮影した画像を転送することができる。mixiやFacebookなどへの画像アップロードも簡単だ。
各社がスマートフォンと共存する道を選択したのは、「ユーザーはSNSで共有する写真に対して、さらに高画質を求めるようになる」とみているからだ。スマートフォンのカメラ機能は進化しているが、画質を追求していけば、必ず限界がくる。SNSにきれいな写真をアップロードするために、Wi-Fi機能搭載のコンパクトデジカメが必要──こんな構図をつくろうとしている。コンパクトデジカメ本来の機能も高めていくのはもちろんだが、スマートフォンの成長軌道に乗ることで、カメラの買い替えを促すことが最終的な狙いなのだ。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
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