デジタルトレンド“今読み先読み”
タブレット端末 黎明期から普及期に突入 用途の明確化でさらに需要増へ
2012/02/23 16:51
週刊BCN 2012年02月20日vol.1420掲載
新製品ラッシュで販売急増 年末商戦は前年比2倍以上に
タブレット端末の販売台数が大幅に増えている。とくに、昨年の年末商戦で顕著にあらわれた。BCNランキングによれば、10月が前年同月比241%、11月279%、12月204%で推移。今年1月に入ってからも、183%と伸びている。これは昨年秋以降、各社の新製品発売が相次ぎ、家電量販店の店頭でタブレット端末が多く並ぶようになったためだ。昨年の秋を振り返ると、ソニーが「Sony Tablet」として、丸みを帯びた持ちやすいきょう体の「S」シリーズ、折りたためる「P」シリーズというデザインコンセプトの異なる2タイプのモデルを発表。9月17日発売の「S」シリーズのWi-Fiモデルを皮切りに、次々に市場に投入した。
10月には、富士通が新ブランドとして立ち上げた「ARROWS」の第一弾として、次世代通信LTEサービス「Xi(クロッシィ)」に初めて対応した「ARROWS Tab LTE F-01D」を発売。東芝の「REGZA Tablet AT3S0」、サムスン電子の「GALAXY Tab 10.1 LTE」なども発売された。
11月には、レノボ・ジャパンが7インチ画面で手のひらサイズのタブレット端末「IdeaPad Tablet A1」シリーズを発売。当初10月28日の発売予定だったが、受注が見込みを大幅に上回り、増産が必要となったため、11月9日に延期。16GBモデルと2GBモデルを揃え、カラーを16GBモデルでパールホワイト、カーボンブラック、コバルトブルー、ホットピンクの4色、2GBモデルはカーボンブラックを用意して、消費者の選択肢を広げた。16GBモデルで2万7000円前後、2GBモデルで2万円以下という手頃な実勢価格で人気を博し、クリスマスには購入者が殺到して、多くの家電量販店で在庫がなくなったほどだった。
12月に入ってからは、東芝が「REGZA Tablet」の新製品として「AT700」を発売したほか、サムスン電子の「GALAXY Tab 7.0 Plus SC-02D」が登場。今年1月には、ワンセグや指紋センサを備える富士通の「ARROWS Tab Wi-Fi」や、クアッドコアプロセッサ「NVIDIA Tegra 3」を世界で初搭載のASUS製「Eee Pad TF201」シリーズが登場している。
AV機器のコントローラ 屋内利用の促進が浸透のカギ
1月に米ラスベガスで開催されたコンシューマエレクトロニクスの総合展示会「2012 International CES(CES 2012)」では、出展企業がタブレット端末の用途提案として、薄型テレビとの連携強化を訴えていたのが目立った。東芝は、タブレット端末の次世代アプリとして、テレビ放送の番組とビデオ・オンデマンドの番組を統合して横断的に検索できる「メディアガイドApp」と、ケーブルテレビのセットトップ・ボックスやAVアンプ、ブルーレイレコーダーなどを統合管理して操作できる「リモートApp」を発表。この二つのアプリをタブレット端末に搭載し、さまざまなコンテンツを、いつでも、どこでも楽しめる環境をつくろうとしている。サムスン電子も、アプリの追加や動画配信サービスに対応した薄型テレビ「Smart TV」のブランディングの一環として、タブレット端末が薄型テレビに映し出すコンテンツを自由に操作する端末として役割を果たすことをアピールしていた。
タブレット端末といえば、スマートフォンと同様、外出先で利用する端末というイメージがある。しかし「CES 2012」では、各社が薄型テレビをはじめとしたAV機器とつないで、コンテンツを楽しむためのコントローラとして家庭内で使うことを積極的にアピールしていた。
現段階では、選択肢が広がったことと、「スマートフォンより大画面で電子書籍などのアプリが利用しやすい」「Wi-Fiモデルであれば3G契約が不要で月額料金がかからない」など、家電量販店の用途提案が販売を後押ししている。タブレット端末は、モバイル機器として捉えると、今後、スマートフォンとの棲み分けが難しくなるかもしれない。しかし、基本的には家庭内のAV機器と連携する端末で、コンテンツを自由に持ち運べるという利便性を副次的な用途として提案していけば、さらに普及する可能性がある。(佐相彰彦)
- 1